EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「――で、また、合コンに行くと言うんだな」

「……合コンじゃなくて、飲み会。……高根さんも来るから、都合良いかと思ったの」

 帰ってから、あたしが、朝日さんに飲み会参加の件を伝えると、彼は、一瞬で表情を変えた。
 ふてくされながら、あたしをヒザの上に乗せてリビングのソファに座る彼は、また、首元に吸い付いてくる。
「あ、バカ!痕つけないの!」
「……美里が悪い」
 ボソリと言う彼は、そのまま、あたしの肩に顎を乗せて、のぞき込んできた。
「――それ、オレも行ったらダメか?」
「ダッ……ダメでしょ!そもそも、向こうがプライベートで持ち掛けてきたって話なんだから」
「……じゃあ、迎えに行く」
「……朝日さん」
 拗ねながら言う彼に、一瞬、ほだされそうになったが、あたしは、首を振った。
「だから、まだ、付き合ってるって、公にしてないでしょ」
「ちょうど良いから、言えばいいだろ」
「……もう……拗ねないの」
 あたしは、彼を見やると、なだめるように軽くキスをする。
 すると、すぐに回された腕の力が強められ、そのまま深く口づけられた。
「――……拗ねたくもなる。……お前、気に入られてるんだから、気をつけろよ」
「また、そんなコト言う」
 苦笑いで返すと、あたしは体勢を変え、彼と向き合う。

「――あたしが好きなのは、朝日さんだけなのに」

「……わかってる」

 ふてくされた彼は、あたしを抱え上げ立ち上がった。
「きゃ……!」
「――けどな、向こうが大人しくしているとは限らないだろ」
「もう!」
 あたしがにらむと、朝日さんは、眉を下げた。
「そう怒るな」
「だって」

「……オレだって――お前が離れていかないか、心配なんだから」

「え」

 朝日さんは、そう言って寝室に向かう。
「――この前、舞子くんに怒られたしな」
「そ、それは……」
 舞子は、今までを知っているから、心配してくれただけ。
 そう続けようとしたけれど、ベッドにそっと横にされ、口を閉じた。
 見上げると、朝日さんは、すかさずキスをしてくる。

「でもな、やっぱり、離したくないんだよ」

「――朝日さん」

「こんな重い男だったとは、自分でも驚きだ」

 困ったように笑う彼に、あたしは手を伸ばす。

「――……うれしい」

 お互い抱き締め合うと、そのまま肌を重ねる。
 それだけで、自分が必要とされていると思えて、あたしは満たされた。

 ――ただ、ひとつだけ――……胸の奥に不安の種はあったけれど。
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