EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
 お昼のベルが鳴るのに気がつき部屋を見回すと、相変わらず、行動が早い人達ばかりで閑散としていた。
 あたしは、そのまま自分の席で、お弁当を取り出す。

「美里」

 思わず、持っていた箸を取り落としそうになり、あたしは、慌てて両手でキャッチ。
 そして、そばに来た原因を振り返ると、にらみ上げた。
「……会社です、部長(・・)
「……昼休みだ」
「何度言わせるんですか。まだ、公表しないんでしょう」
 婚約発表は、折を見て。
 少なくとも、バーベキュー大会が終わるまでは、余計な気を回したくない。
 そう、約束したのに。
 すると、朝日さんは、苦笑いして視線を後ろのテーブルに向ける。
「一緒に食べないか」
「……それは、まあ……大丈夫」
 あたしはうなづくと、席を移動して、お弁当を置いた。
 朝日さんも、同じように向かい合う。
 そして、二人で箸をつけ始めてすぐ、彼は言った。
「……今日、合コンだろ」
「……だから、合コンじゃなくて、飲み会」
「同じようなモンだ」
 拗ねたように視線を逸らすと、朝日さんは続ける。
「……本当に、迎えに行かなくても良いのか?」
「……大丈夫。そんなに飲まないし。それに、あたし、仕事のつもりだから」
 高根さんに、年間企画に選んだヤツの詳しい事や、疑問点を聞きたいのだ。
 もう、来週から取り掛からないとなので、早目が良いけど、彼も忙しい。
 ――なので、申し訳無いけれど、飲み会の場ではあるが、こっそり利用させてもらおう。
 そう、朝日さんにも言ったはずなのに。
「――それは、わかっているが……。……まあ、終わったら連絡入れろよ。心配だから」
「……うん」
 ふてくされながらも、そんな風に言ってくれる。
 あたしは、うれしさを隠しきれず、思わず口元を上げた。


 それから、終業後、あたしは、小坂主任達、いつもの派手なメンバーに引きずられるように、前回と同じ居酒屋に連れて行かれた。
 いらっしゃいませ、と、元気な声に迎えられ、一瞬怯む。
 けれど、すぐに案内され、前回と同じ掘りごたつの席を見やれば、既に男性陣はそろっていた。
「お疲れ様ですー!お待たせしましたぁ!」
 小坂主任の張り切った声が響き渡り、あたしは眉を寄せるのを必死で耐えた。
「お疲れ様です。来てくれてありがとうね」
「いいえぇ!」
 ウキウキしながら、主任は、声をかけた男性の隣に座る。
 見覚えがあると思ったら――確か、ライフプレジャー社に行った時に迎えてくれた社長だ。
「あ、白山さん、この前はありがとうございました。ホラ、充!」
 彼はそうあたしに声をかけると、テーブルの端を見やる。
 つられて視線を向けると、高根さんが、気まずそうにあたしに頭を下げた。
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