EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「美里、ホラ、水」
「……飲ませて。……もう、力入んない……」
困ったように笑いながらも、朝日さんはうなづくと、布団から顔を出したあたしに、キスをする。
「口移しでか?」
「――……あたしのベッド、通販で買おうかな……」
本気で考えてしまうあたしに、彼は慌てた。
「……い、いや、悪い。……お、起きられるか?」
言葉に詰まりながらも、彼はあたしの身体を、ゆっくりと起こす。
「……ホント、調子に乗りすぎだからね」
「わかった。ちゃんと、お前に合わせるから」
そう言うと、朝日さんは、持っていたペットボトルの水を、あたしの口につけ、そろそろと傾けた。
喉を通る水分が、身体中を巡る。
あたしは、ようやく一息つくが、ベッドに逆戻りした。
「美里、昼メシ食べられそうか?」
「……うん」
お腹は空いている。
でも、身体中ダルくて、下半身は違和感だらけで。
――……ホントに、絶倫、ってヤツなんだわ。
あれだけしても、平然と動ける彼を、あたしは、恨みがましく見やった。
「……どうかしたのか?」
あたしの視線に気づいた彼は、恐る恐る尋ねる。
その表情は、怒られるのを覚悟しているようで、思わず吹き出した。
「美里?」
「……ううん。……可愛いな、って」
「……また、そういう事を……」
ボヤきながらも、朝日さんは、ベッドのそばにヒザをつき、あたしの髪を撫でた。
「……オレが全部やるから、お前は寝てろ。……最近、ずっと無理させていたしな。……寝不足だろう」
「でも」
「言っただろ。今日は甘やかすって」
「……じ、じゃあ……ちょっとだけ、寝ても良い?」
「ああ」
正直、連戦につぐ連戦で、体力は尽きかけているし、睡眠不足でもあるのだ。
彼がうなづいて部屋を出るのを見送ると、あたしは、すぐに眠りに落ちた。
『みぃちゃん、今日から、おばちゃんとおじちゃんと一緒に暮らすんだよ』
おぼろげな叔母夫婦を恐る恐る見上げ、あたしは――子供の頃のあたしはうなづく。
小学校の低学年。記憶もあいまいな頃、両親は事故死した。
事情なんて、わからない。
ただ、その日から、あたしは、みんなの機嫌をうかがいながら生きていたのだけは覚えている。
悪いコになったら、捨てられる。
必要無いって思われたら、捨てられる。
それだけを、呪文のように繰り返す。
そして――それは、今も、現在進行形で、あたしを作り上げているのだ。
「美里」
頬を撫でる感触が気持ち良くて、あたしは、目を閉じたまま、その手にすり寄る。
まるで、猫になったよう。
でも、その手は優しくあたしを撫でる。
「――大丈夫か?」
その言葉に、うっすらと目を開ければ、端正な顔が心配そうにあたしを見つめている。
「……朝日、さん……」
反応があったのを確かめると、部屋を出て行こうとしたので、思わずその服の裾を引いた。
朝日さんは、戸惑いながら振り返る。
「美里?」
「……やだ……」
こぼれてくる言葉は、もう、無意識だとわかる。
頭と口がつながっていない。
「――え?」
「――……もう……捨てられるのは……嫌……」
それは――本心。
そして、それは、子供の頃からずっと抱えていた気持ち。
――捨てられたくない。
すると、あたしを横にしたまま、彼は包み込むように抱き締めた。
「――バカ言うな。……誰が捨てるか」
「ちゃんと、良いコにしてるから――言うコト聞くから……」
「……美里?」
ああ、夢と現実がごちゃ混ぜだ。
目の前にいるのは、両親なのか、叔母夫婦なのか、元カレ達なのか――朝日さんなのか。
――こぼれてくる涙は、一体、いつ流したものなのか。
「……いらないなんて、言わないで……」
意識はそのまま混濁していく。
そして、次に目が覚めた時――朝日さんは、心配そうに、あたしをベッドのそばで見つめていた。
「……飲ませて。……もう、力入んない……」
困ったように笑いながらも、朝日さんはうなづくと、布団から顔を出したあたしに、キスをする。
「口移しでか?」
「――……あたしのベッド、通販で買おうかな……」
本気で考えてしまうあたしに、彼は慌てた。
「……い、いや、悪い。……お、起きられるか?」
言葉に詰まりながらも、彼はあたしの身体を、ゆっくりと起こす。
「……ホント、調子に乗りすぎだからね」
「わかった。ちゃんと、お前に合わせるから」
そう言うと、朝日さんは、持っていたペットボトルの水を、あたしの口につけ、そろそろと傾けた。
喉を通る水分が、身体中を巡る。
あたしは、ようやく一息つくが、ベッドに逆戻りした。
「美里、昼メシ食べられそうか?」
「……うん」
お腹は空いている。
でも、身体中ダルくて、下半身は違和感だらけで。
――……ホントに、絶倫、ってヤツなんだわ。
あれだけしても、平然と動ける彼を、あたしは、恨みがましく見やった。
「……どうかしたのか?」
あたしの視線に気づいた彼は、恐る恐る尋ねる。
その表情は、怒られるのを覚悟しているようで、思わず吹き出した。
「美里?」
「……ううん。……可愛いな、って」
「……また、そういう事を……」
ボヤきながらも、朝日さんは、ベッドのそばにヒザをつき、あたしの髪を撫でた。
「……オレが全部やるから、お前は寝てろ。……最近、ずっと無理させていたしな。……寝不足だろう」
「でも」
「言っただろ。今日は甘やかすって」
「……じ、じゃあ……ちょっとだけ、寝ても良い?」
「ああ」
正直、連戦につぐ連戦で、体力は尽きかけているし、睡眠不足でもあるのだ。
彼がうなづいて部屋を出るのを見送ると、あたしは、すぐに眠りに落ちた。
『みぃちゃん、今日から、おばちゃんとおじちゃんと一緒に暮らすんだよ』
おぼろげな叔母夫婦を恐る恐る見上げ、あたしは――子供の頃のあたしはうなづく。
小学校の低学年。記憶もあいまいな頃、両親は事故死した。
事情なんて、わからない。
ただ、その日から、あたしは、みんなの機嫌をうかがいながら生きていたのだけは覚えている。
悪いコになったら、捨てられる。
必要無いって思われたら、捨てられる。
それだけを、呪文のように繰り返す。
そして――それは、今も、現在進行形で、あたしを作り上げているのだ。
「美里」
頬を撫でる感触が気持ち良くて、あたしは、目を閉じたまま、その手にすり寄る。
まるで、猫になったよう。
でも、その手は優しくあたしを撫でる。
「――大丈夫か?」
その言葉に、うっすらと目を開ければ、端正な顔が心配そうにあたしを見つめている。
「……朝日、さん……」
反応があったのを確かめると、部屋を出て行こうとしたので、思わずその服の裾を引いた。
朝日さんは、戸惑いながら振り返る。
「美里?」
「……やだ……」
こぼれてくる言葉は、もう、無意識だとわかる。
頭と口がつながっていない。
「――え?」
「――……もう……捨てられるのは……嫌……」
それは――本心。
そして、それは、子供の頃からずっと抱えていた気持ち。
――捨てられたくない。
すると、あたしを横にしたまま、彼は包み込むように抱き締めた。
「――バカ言うな。……誰が捨てるか」
「ちゃんと、良いコにしてるから――言うコト聞くから……」
「……美里?」
ああ、夢と現実がごちゃ混ぜだ。
目の前にいるのは、両親なのか、叔母夫婦なのか、元カレ達なのか――朝日さんなのか。
――こぼれてくる涙は、一体、いつ流したものなのか。
「……いらないなんて、言わないで……」
意識はそのまま混濁していく。
そして、次に目が覚めた時――朝日さんは、心配そうに、あたしをベッドのそばで見つめていた。