EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
いよいよ、バーベキュー大会を週末に迎え、あたしは、毎日高根さんと詳しい打ち合わせに取り掛かった。
「――じゃあ、予定通り、第一陣の出発は会社前に十時集合で、向こうに着くのは十時半過ぎになります」
会議室で、タイムスケジュールのデータを見ながら、高根さんは、出したコーヒーに手をつける事なく話を進める。
最終的に、百二十五人という大人数の申し込みがあったバーベキュー大会は、二日間、午前午後という割り振りで行う事となった。
「それから、僕達の方で準備をしている間、皆さんには、いろいろなレジャーを楽しんでいただきます。あと、少し、白山さんにお手伝いしていただきたいんですが……」
「えっと……何をすれば……」
「ウチの人間が、準備してますので、現地でサポートという形をお願いします。……割を食わせてしまって申し訳無いんですが……」
あたしは、眉を下げながら言う高根さんに、首を振る。
「いえ、こちらの方が無理を言ったんですから、構いません。何でもおっしゃってください」
「あ、ありがとうございます」
言い切るあたしを見て、彼は、安心したように笑った。
それは、やっぱり、幼げな印象で。
――だからこそ、仕事の話の時のギャップに驚いてしまうんだ。
それから一時間ほど、最終確認を終えると、高根さんを正面玄関まで見送る。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
お互いに頭を下げると、彼は、一瞬、何か言いたげにしたが、すぐに踵を返した。
あたしは、それに疑問を持つ事もなく、総務部へ戻る。
そして、席でパソコンと書類と交互に視線を向けていた朝日さんに、声をかけた。
「――部長、高根さん、お帰りになりました」
「了解。どうだ、段取りは」
「ほぼ、お任せで大丈夫と」
「ほぼ?」
「少々、こちらで手伝いがいるようです」
「――了解。人数が必要か」
「いえ、あたしだけで大丈夫です」
その答えが不満だったのか、彼は、ジロリ、と、あたしを見上げた。
「――また、お前は」
「高根さんからの要望です。――それに、あくまで、こちらはサービスを受ける側ですので、必要最低限が良いと思うのですが」
すると、朝日さんは、眉を寄せたまま、うなづいた。
「――まあ、現場で何が起きるかはわからないからな。手に負えないなら、すぐに助けを呼べ」
「承知しました」
あたしは、そう言って頭を下げた。
「あ、あの、白山先輩」
席に戻ると、そわそわしながら、曽根さんが声をかけてきた。
「どうかしましたか」
「あ、いえ。……あたしも、バーベキュー大会参加なんで……」
「え」
「何か、お手伝いあったら、呼んでくださいね」
あたしは、笑顔で言う彼女を、目を丸くして見た。
「あ、余計なお世話でしたか」
「……いえ。ありがとうございます。何かあったら、お願いします」
その返事に満足したのか、彼女は満面の笑顔でうなづいてくれた。
そんな風に言われたのは初めてで――あたしは、ほんの少し、うれしさを感じた。
「――じゃあ、予定通り、第一陣の出発は会社前に十時集合で、向こうに着くのは十時半過ぎになります」
会議室で、タイムスケジュールのデータを見ながら、高根さんは、出したコーヒーに手をつける事なく話を進める。
最終的に、百二十五人という大人数の申し込みがあったバーベキュー大会は、二日間、午前午後という割り振りで行う事となった。
「それから、僕達の方で準備をしている間、皆さんには、いろいろなレジャーを楽しんでいただきます。あと、少し、白山さんにお手伝いしていただきたいんですが……」
「えっと……何をすれば……」
「ウチの人間が、準備してますので、現地でサポートという形をお願いします。……割を食わせてしまって申し訳無いんですが……」
あたしは、眉を下げながら言う高根さんに、首を振る。
「いえ、こちらの方が無理を言ったんですから、構いません。何でもおっしゃってください」
「あ、ありがとうございます」
言い切るあたしを見て、彼は、安心したように笑った。
それは、やっぱり、幼げな印象で。
――だからこそ、仕事の話の時のギャップに驚いてしまうんだ。
それから一時間ほど、最終確認を終えると、高根さんを正面玄関まで見送る。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
お互いに頭を下げると、彼は、一瞬、何か言いたげにしたが、すぐに踵を返した。
あたしは、それに疑問を持つ事もなく、総務部へ戻る。
そして、席でパソコンと書類と交互に視線を向けていた朝日さんに、声をかけた。
「――部長、高根さん、お帰りになりました」
「了解。どうだ、段取りは」
「ほぼ、お任せで大丈夫と」
「ほぼ?」
「少々、こちらで手伝いがいるようです」
「――了解。人数が必要か」
「いえ、あたしだけで大丈夫です」
その答えが不満だったのか、彼は、ジロリ、と、あたしを見上げた。
「――また、お前は」
「高根さんからの要望です。――それに、あくまで、こちらはサービスを受ける側ですので、必要最低限が良いと思うのですが」
すると、朝日さんは、眉を寄せたまま、うなづいた。
「――まあ、現場で何が起きるかはわからないからな。手に負えないなら、すぐに助けを呼べ」
「承知しました」
あたしは、そう言って頭を下げた。
「あ、あの、白山先輩」
席に戻ると、そわそわしながら、曽根さんが声をかけてきた。
「どうかしましたか」
「あ、いえ。……あたしも、バーベキュー大会参加なんで……」
「え」
「何か、お手伝いあったら、呼んでくださいね」
あたしは、笑顔で言う彼女を、目を丸くして見た。
「あ、余計なお世話でしたか」
「……いえ。ありがとうございます。何かあったら、お願いします」
その返事に満足したのか、彼女は満面の笑顔でうなづいてくれた。
そんな風に言われたのは初めてで――あたしは、ほんの少し、うれしさを感じた。