EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「あら、白山さん、ありがと!」
「――いえ」
断り切れないのなら、いっそ、焼く係になってしまえ。
そう思い、席にいる全員分の面倒をみてしまった。
すると、不意に隣に気配を感じて見上げると、先ほどバツが悪そうにしていた男性のうちの一人が立っていた。
「あ、あの、何かいりますか?」
「いや、白山さん、気が回るね」
「……いえ」
思わず視線が下がるが、彼はまったく気にしていないようだ。
「様になってるっていうか。ああ、慣れてるのかな?」
「……いえ、初めてですが」
「じゃあ、普段から良く料理するんだ?」
「……自炊はしております」
その返事に気を良くしたのか、彼は上機嫌で続けた。
「ホント!良いね、そういう家庭的な女性、オレ、タイプなんだよね」
――コイツ、酒でも入ってる?
あたしが、眉を寄せかけると、すぐに肩に手が置かれる。
その瞬間、ザワリと、身体中が嫌悪に包まれた。
顔を近づけてくる彼は、あたしに耳打ちする。
「――どうかな、今日、終わったらデートしない?」
「……は?」
「あ、あのっ……白山さん!こっち、手伝ってもらっても良いでしょうかっ……⁉」
思わず突き飛ばしそうになった瞬間、高根さんから声をかけられ、あたしは、さりげなく彼の手を肩から外した。
「申し訳ありません、呼ばれておりますので」
頭を下げ、足早に高根さんの元に向かう。
「――高根さん、何をお手伝いすれば……」
すると、彼は気まずそうに微笑んだ。
「……いえ、方便です。……その……何か、からまれていらっしゃったようだったので」
「――え」
もしかして……。
「……助けて、くれたんですか……?」
あたしの言葉に、高根さんは、恐縮したようにうなづいた。
その事実に少しだけ感動しているあたしは――朝日さんの視線に、気づく事は無かった。
どうにか、目立ったトラブルも無く、第一陣は終了。
続いて、夕方からの第二陣も、少々の酒は入ったが、泥酔者もおらず、みんな笑顔で終了する事ができた。
あたしは、全員を見送ると、帰り支度をしていたライフプレジャー社のみなさんに頭を下げた。
「お疲れ様でした。――本当に、ありがとうございました。大成功だと思います」
「いえいえ、明日もありますし。油断禁物ですよ」
吉浦さんがそう言って笑う。
社員のみなさんも、疲れてはいるが、満足そうにしていた。
それだけでも、やった甲斐があると思った。
「まあ、これで、鈴原冷食さんとのお付き合いが長くなってくれれば、言う事無しですけど」
「――おそらく、大丈夫だと思います。報告書には、ちゃんと事実を載せますので」
あたしがそう答えると、吉浦さんは、表情を引き締める。
「――よろしくお願いします」
「承りました」
お互いに、少しだけ緊張の中、頭を下げる。
これは、仲間内のレジャーではなく、会社と会社の付き合いだ。
それは間違えないようにしなければ。
「それでは、今日はこれで失礼いたします」
「あ、ま、待ってください」
あたしが、頭を下げ、駅に向かおうとすると、高根さんに引き留められた。
「車もあるので、送りますよ」
「――ありがとうございます。でも、まだ、そこまで遅くも無いですし……」
まだ、九時にもなっていない。
電車だって、ちゃんとある。
あたしは、そう彼に告げると、駅の改札を通った。
――ごめんなさい。
――……もし、あたしを気に入っていて、そういう事を言うのなら……受け入れる事はできないんです。
……あたしには……裏切りたくない人が、いるんです……。
「――いえ」
断り切れないのなら、いっそ、焼く係になってしまえ。
そう思い、席にいる全員分の面倒をみてしまった。
すると、不意に隣に気配を感じて見上げると、先ほどバツが悪そうにしていた男性のうちの一人が立っていた。
「あ、あの、何かいりますか?」
「いや、白山さん、気が回るね」
「……いえ」
思わず視線が下がるが、彼はまったく気にしていないようだ。
「様になってるっていうか。ああ、慣れてるのかな?」
「……いえ、初めてですが」
「じゃあ、普段から良く料理するんだ?」
「……自炊はしております」
その返事に気を良くしたのか、彼は上機嫌で続けた。
「ホント!良いね、そういう家庭的な女性、オレ、タイプなんだよね」
――コイツ、酒でも入ってる?
あたしが、眉を寄せかけると、すぐに肩に手が置かれる。
その瞬間、ザワリと、身体中が嫌悪に包まれた。
顔を近づけてくる彼は、あたしに耳打ちする。
「――どうかな、今日、終わったらデートしない?」
「……は?」
「あ、あのっ……白山さん!こっち、手伝ってもらっても良いでしょうかっ……⁉」
思わず突き飛ばしそうになった瞬間、高根さんから声をかけられ、あたしは、さりげなく彼の手を肩から外した。
「申し訳ありません、呼ばれておりますので」
頭を下げ、足早に高根さんの元に向かう。
「――高根さん、何をお手伝いすれば……」
すると、彼は気まずそうに微笑んだ。
「……いえ、方便です。……その……何か、からまれていらっしゃったようだったので」
「――え」
もしかして……。
「……助けて、くれたんですか……?」
あたしの言葉に、高根さんは、恐縮したようにうなづいた。
その事実に少しだけ感動しているあたしは――朝日さんの視線に、気づく事は無かった。
どうにか、目立ったトラブルも無く、第一陣は終了。
続いて、夕方からの第二陣も、少々の酒は入ったが、泥酔者もおらず、みんな笑顔で終了する事ができた。
あたしは、全員を見送ると、帰り支度をしていたライフプレジャー社のみなさんに頭を下げた。
「お疲れ様でした。――本当に、ありがとうございました。大成功だと思います」
「いえいえ、明日もありますし。油断禁物ですよ」
吉浦さんがそう言って笑う。
社員のみなさんも、疲れてはいるが、満足そうにしていた。
それだけでも、やった甲斐があると思った。
「まあ、これで、鈴原冷食さんとのお付き合いが長くなってくれれば、言う事無しですけど」
「――おそらく、大丈夫だと思います。報告書には、ちゃんと事実を載せますので」
あたしがそう答えると、吉浦さんは、表情を引き締める。
「――よろしくお願いします」
「承りました」
お互いに、少しだけ緊張の中、頭を下げる。
これは、仲間内のレジャーではなく、会社と会社の付き合いだ。
それは間違えないようにしなければ。
「それでは、今日はこれで失礼いたします」
「あ、ま、待ってください」
あたしが、頭を下げ、駅に向かおうとすると、高根さんに引き留められた。
「車もあるので、送りますよ」
「――ありがとうございます。でも、まだ、そこまで遅くも無いですし……」
まだ、九時にもなっていない。
電車だって、ちゃんとある。
あたしは、そう彼に告げると、駅の改札を通った。
――ごめんなさい。
――……もし、あたしを気に入っていて、そういう事を言うのなら……受け入れる事はできないんです。
……あたしには……裏切りたくない人が、いるんです……。