EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
翌日、バーベキュー大会の報告書を作成している途中、朝日さんに呼ばれてたので、そちらに向かう。
「――途中で悪いんだが、全社員閲覧用に、ホームページにも写真付きで報告上げてくれと要請された。広報が、今日しか空いてないらしいから、すぐに詳細聞きに向かってくれ」
「承知しました」
あたしは、言われたとおり、上の階――四階の奥に向かう。
途中、すれ違う人達から、昨日は楽しかった、と、声をかけられ、戸惑いながらも頭を下げた。
――こんな風に声をかけられるなんて、今まで無かった。
それは、やっぱり――高根さん達の仕事のおかげで。
心底、彼等の仕事の姿勢を尊敬した。
シンプルなドアにかかった広報の文字を見つめ、あたしは少し緊張気味にノックする。
中から、雑に、入って、入って、と返され、そおっと顔をのぞかせた。
「ああ、白山さん?総務部長から連絡来てるから、そっちで聞いて!」
広報部長は、他の部長より少し若く、たぶん朝日さんと似たか寄ったかだろう。
あたしは、頭を下げると、彼が指さした方に向かった。
「あの……ホームページの件で……」
座っている男性に声をかけると、彼は顔を上げ、目を丸くした。
「あれ、白山さん⁉何だ、バーベキュー大会の件?」
それは――土曜日の方で、あたしに絡んできた――あの彼、だった。
「そうそう、そこに写真入れて――」
彼のパソコンを借り、バーベキュー大会の写真をレイアウトする。
だが、いちいち距離が近い気がして、あたしは、さりげなく身体を離すが、追いかけるように彼は近づいてきた。
――……わざと?
思わず眉を寄せそうになるが、一応は同じ会社の人間。
事を荒立てたくは無い。
それに、気のせいと言われたら、それまでだし。
「――白山さん、聞いてる?」
「あ、ハ、ハイ」
後ろから抱き込むようにして、彼はマウスを持つ手を握ってくる。
「あ、あの」
「ホラ、ココをクリックすると――」
「え、あ」
あくまで仕事の指導と逃れられるような姑息な手に、あたしは口をつぐむ。
「ね、簡単でしょ。次のヤツは、自分でできる?」
「あ、えっと……」
あたしはうなづくと、かろうじて取っていたメモと記憶をたどり、写真をレイアウトする。
「うーん、コレは、こっちの方が見やすいかな」
言いながら彼は、あたしの手を握ったまま、マウスを動かす。
「あ、あの、手……」
「え、ああ、ゴメンゴメン」
わざとらしく、今気がついたような言われ方をされ、あたしは眉を寄せた。
「――ありがとうございました。後は、自分の方で、できると思いますので」
「でも、広報通さないと、アップできないでしょ?」
あたしは、言葉に詰まり、視線を落とす。
確かに、滅多な事が上がらないよう、検閲も込みで、広報のパソコンを通してしか、ホームページに記事は載せられない。
「――ね、今日、飲みに行かない?」
すると、口を閉じたあたしの耳元で、そう、彼は囁いた。
あたしは、嫌悪感に満ちた身体を縮こませ、首を振る。
――一体、何なのよ、コイツは!
「おい、いい加減、離れてもらえないか」
不意に聞こえた、聞き慣れた低い声に、あたしは顔を上げる。
「ぶ、部長……」
――何で……。
呆然としているあたしを見やると、朝日さんは眉を寄せた。
「もう、午前は終了する。総務は、時間通りが通常なんでな」
彼は、少々強がって返す。
「――へえ、良いご身分で。こっちは、残業まみれだってのに」
「それは、各部署の事情だろう。白山、戻るぞ」
「じゃあ、昼からも来てくださいよ。まだ、全部説明してないんでね」
「――……了解した」
不満を隠さず、朝日さんはうなづく。
そして、あたしを広報部から連れ出してくれた。
「――途中で悪いんだが、全社員閲覧用に、ホームページにも写真付きで報告上げてくれと要請された。広報が、今日しか空いてないらしいから、すぐに詳細聞きに向かってくれ」
「承知しました」
あたしは、言われたとおり、上の階――四階の奥に向かう。
途中、すれ違う人達から、昨日は楽しかった、と、声をかけられ、戸惑いながらも頭を下げた。
――こんな風に声をかけられるなんて、今まで無かった。
それは、やっぱり――高根さん達の仕事のおかげで。
心底、彼等の仕事の姿勢を尊敬した。
シンプルなドアにかかった広報の文字を見つめ、あたしは少し緊張気味にノックする。
中から、雑に、入って、入って、と返され、そおっと顔をのぞかせた。
「ああ、白山さん?総務部長から連絡来てるから、そっちで聞いて!」
広報部長は、他の部長より少し若く、たぶん朝日さんと似たか寄ったかだろう。
あたしは、頭を下げると、彼が指さした方に向かった。
「あの……ホームページの件で……」
座っている男性に声をかけると、彼は顔を上げ、目を丸くした。
「あれ、白山さん⁉何だ、バーベキュー大会の件?」
それは――土曜日の方で、あたしに絡んできた――あの彼、だった。
「そうそう、そこに写真入れて――」
彼のパソコンを借り、バーベキュー大会の写真をレイアウトする。
だが、いちいち距離が近い気がして、あたしは、さりげなく身体を離すが、追いかけるように彼は近づいてきた。
――……わざと?
思わず眉を寄せそうになるが、一応は同じ会社の人間。
事を荒立てたくは無い。
それに、気のせいと言われたら、それまでだし。
「――白山さん、聞いてる?」
「あ、ハ、ハイ」
後ろから抱き込むようにして、彼はマウスを持つ手を握ってくる。
「あ、あの」
「ホラ、ココをクリックすると――」
「え、あ」
あくまで仕事の指導と逃れられるような姑息な手に、あたしは口をつぐむ。
「ね、簡単でしょ。次のヤツは、自分でできる?」
「あ、えっと……」
あたしはうなづくと、かろうじて取っていたメモと記憶をたどり、写真をレイアウトする。
「うーん、コレは、こっちの方が見やすいかな」
言いながら彼は、あたしの手を握ったまま、マウスを動かす。
「あ、あの、手……」
「え、ああ、ゴメンゴメン」
わざとらしく、今気がついたような言われ方をされ、あたしは眉を寄せた。
「――ありがとうございました。後は、自分の方で、できると思いますので」
「でも、広報通さないと、アップできないでしょ?」
あたしは、言葉に詰まり、視線を落とす。
確かに、滅多な事が上がらないよう、検閲も込みで、広報のパソコンを通してしか、ホームページに記事は載せられない。
「――ね、今日、飲みに行かない?」
すると、口を閉じたあたしの耳元で、そう、彼は囁いた。
あたしは、嫌悪感に満ちた身体を縮こませ、首を振る。
――一体、何なのよ、コイツは!
「おい、いい加減、離れてもらえないか」
不意に聞こえた、聞き慣れた低い声に、あたしは顔を上げる。
「ぶ、部長……」
――何で……。
呆然としているあたしを見やると、朝日さんは眉を寄せた。
「もう、午前は終了する。総務は、時間通りが通常なんでな」
彼は、少々強がって返す。
「――へえ、良いご身分で。こっちは、残業まみれだってのに」
「それは、各部署の事情だろう。白山、戻るぞ」
「じゃあ、昼からも来てくださいよ。まだ、全部説明してないんでね」
「――……了解した」
不満を隠さず、朝日さんはうなづく。
そして、あたしを広報部から連れ出してくれた。