EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
fight.31
その後、あの男は懲戒処分となり、広報部から工場勤務に異動辞令が下ったが、それを不服に思ったらしく、自己都合で退職となった。
広報部には悪いけれど――あれが放置されているのは、やっぱり問題だろう。
代休のために、あたしは、水曜日までに報告書とホームページの記事を終わらせ、ヘルプマークの人に声をかけて手伝いをした。
朝日さんは、その間も忙しくしていて、家に帰るまで言葉を交わす機会も少なくなった。
けれど、それは、会社での事。
「美里、一本飲んでいいか?」
夕飯を並べていると、朝日さんが、冷蔵庫から五百ミリの缶ビールを取り出して、あたしに見せた。
「……良いけど……主食じゃないからね」
「わかってる」
彼が言いながら、プルタブを開けると、プシュ、と、気持ちの良い音が聞こえる。
あたしが視線を向けると、テーブルにグラスが置かれた。
「え?」
「――少しだけ、どうだ?」
「……え、でも」
「お疲れ様ってコトで」
あたしは、問答無用で注がれたグラスを見つめ、苦笑いで朝日さんを見上げた。
「……もったいないから、いただきます」
「……嫌だったか?」
「そういう訳じゃないんだけど……最近、飲み会連続だったから……」
「少しくらい良いだろう」
「まあ、このくらいなら」
あたしはグラスを持つと、同じようにした朝日さんがグラスを合わせた。
二人で笑い合い、口にする。
苦手な訳じゃないけれど、飲む機会も少ないアルコールは、すぐに疲れた身体に染みてくれた。
「そう言えば、お前、アルコール耐性は?」
飲んでから聞くな。
そう突っ込みたくなったが、あたしは首を振る。
「そこまで弱くないわよ。……元カレに振られたら、舞子の部屋でヤケ酒してたから」
「――そうか」
「ビールと焼酎と……ハイボールくらい?」
「何だ、結構強いんじゃないか」
あっさりと言われ、あたしは、頬を膨らませる。
「弱い女じゃなくて、すみませんー」
「いや、上等だろ」
そう言って、朝日さんは、もう一本出した。
「あ、コラ」
「半分ずつだから、ちょうど一本だ」
「屁理屈言わないでよ」
クスクスと笑い、あたし達は、もう一度乾杯する。
そして、ゆっくりと飲みながら、夕飯も終えた。
片付けは朝日さんがしてくれるというので、素直に甘える事にする。
――ああ、何だか、ふわふわしてきた……。
クーラーが効いているとはいえ、真夏の暑さに、結局、ビールはそれぞれもう一本ずつ追加されてしまった。
完全に酔っている訳ではないが、平衡感覚はあやしい。
あたしは、着ていたカットソーに汗が染みるのに気づき、立ち上がった。
「美里?」
「――今のうちにお風呂、入る」
「あ、バカ。アルコール回るぞ。シャワーにしておけ」
「わかってますー」
あたしは、そう返すと、着替えを取りに、ふらふらと寝室に向かう。
けれど、どうにも眠くなって、ベッドに倒れ込んだ。
その感触に、完全に睡魔に襲われる。
――ああ、どうしよう。
眠気に負けてしまいそうだけど、起きていたい。
でも、結局、少しの間、意識を飛ばし、寝室から出て来ないあたしを不審に思った朝日さんが部屋からやって来るまで、ベッドで眠ってしまっていた。
「おい、美里」
「……ん……」
「シャワー、いいのか?」
「……行く……」
そうは答えても、身体は動いてくれない。
すると、朝日さんは、あたしを、ヒョイ、と、抱え上げた。
「……朝日さん?」
彼の名を呼びながら、あたしが、首に腕を回すと、苦りながら返された。
「……この酔っ払い。……連れて行くからな」
「ん」
見上げる彼に触れたくて――自分からキスをすると、すぐに深く返された。
「――おい、煽ってるのか」
「だって、触りたいんだもん」
あたしがそう言うと、朝日さんは、眉を寄せた。
「……そうか。……覚悟は良いんだな?」
そう、低い声で返され、一瞬で正気に戻る。
彼を見上げれば、その目は――完全に欲を写し出していて。
「あ、朝日さん?」
「心配するな。――ちゃんと、ご期待に添えてやる」
「い、いえっ!大丈夫です!」
思わず敬語に戻ってしまう。
けれど――もう、撤回はできなさそう。
お風呂に入れられて、タオル一枚巻き付けたまま寝室に行くと、身体の隅から隅まで、余す事なく可愛がられたのだった。
広報部には悪いけれど――あれが放置されているのは、やっぱり問題だろう。
代休のために、あたしは、水曜日までに報告書とホームページの記事を終わらせ、ヘルプマークの人に声をかけて手伝いをした。
朝日さんは、その間も忙しくしていて、家に帰るまで言葉を交わす機会も少なくなった。
けれど、それは、会社での事。
「美里、一本飲んでいいか?」
夕飯を並べていると、朝日さんが、冷蔵庫から五百ミリの缶ビールを取り出して、あたしに見せた。
「……良いけど……主食じゃないからね」
「わかってる」
彼が言いながら、プルタブを開けると、プシュ、と、気持ちの良い音が聞こえる。
あたしが視線を向けると、テーブルにグラスが置かれた。
「え?」
「――少しだけ、どうだ?」
「……え、でも」
「お疲れ様ってコトで」
あたしは、問答無用で注がれたグラスを見つめ、苦笑いで朝日さんを見上げた。
「……もったいないから、いただきます」
「……嫌だったか?」
「そういう訳じゃないんだけど……最近、飲み会連続だったから……」
「少しくらい良いだろう」
「まあ、このくらいなら」
あたしはグラスを持つと、同じようにした朝日さんがグラスを合わせた。
二人で笑い合い、口にする。
苦手な訳じゃないけれど、飲む機会も少ないアルコールは、すぐに疲れた身体に染みてくれた。
「そう言えば、お前、アルコール耐性は?」
飲んでから聞くな。
そう突っ込みたくなったが、あたしは首を振る。
「そこまで弱くないわよ。……元カレに振られたら、舞子の部屋でヤケ酒してたから」
「――そうか」
「ビールと焼酎と……ハイボールくらい?」
「何だ、結構強いんじゃないか」
あっさりと言われ、あたしは、頬を膨らませる。
「弱い女じゃなくて、すみませんー」
「いや、上等だろ」
そう言って、朝日さんは、もう一本出した。
「あ、コラ」
「半分ずつだから、ちょうど一本だ」
「屁理屈言わないでよ」
クスクスと笑い、あたし達は、もう一度乾杯する。
そして、ゆっくりと飲みながら、夕飯も終えた。
片付けは朝日さんがしてくれるというので、素直に甘える事にする。
――ああ、何だか、ふわふわしてきた……。
クーラーが効いているとはいえ、真夏の暑さに、結局、ビールはそれぞれもう一本ずつ追加されてしまった。
完全に酔っている訳ではないが、平衡感覚はあやしい。
あたしは、着ていたカットソーに汗が染みるのに気づき、立ち上がった。
「美里?」
「――今のうちにお風呂、入る」
「あ、バカ。アルコール回るぞ。シャワーにしておけ」
「わかってますー」
あたしは、そう返すと、着替えを取りに、ふらふらと寝室に向かう。
けれど、どうにも眠くなって、ベッドに倒れ込んだ。
その感触に、完全に睡魔に襲われる。
――ああ、どうしよう。
眠気に負けてしまいそうだけど、起きていたい。
でも、結局、少しの間、意識を飛ばし、寝室から出て来ないあたしを不審に思った朝日さんが部屋からやって来るまで、ベッドで眠ってしまっていた。
「おい、美里」
「……ん……」
「シャワー、いいのか?」
「……行く……」
そうは答えても、身体は動いてくれない。
すると、朝日さんは、あたしを、ヒョイ、と、抱え上げた。
「……朝日さん?」
彼の名を呼びながら、あたしが、首に腕を回すと、苦りながら返された。
「……この酔っ払い。……連れて行くからな」
「ん」
見上げる彼に触れたくて――自分からキスをすると、すぐに深く返された。
「――おい、煽ってるのか」
「だって、触りたいんだもん」
あたしがそう言うと、朝日さんは、眉を寄せた。
「……そうか。……覚悟は良いんだな?」
そう、低い声で返され、一瞬で正気に戻る。
彼を見上げれば、その目は――完全に欲を写し出していて。
「あ、朝日さん?」
「心配するな。――ちゃんと、ご期待に添えてやる」
「い、いえっ!大丈夫です!」
思わず敬語に戻ってしまう。
けれど――もう、撤回はできなさそう。
お風呂に入れられて、タオル一枚巻き付けたまま寝室に行くと、身体の隅から隅まで、余す事なく可愛がられたのだった。