EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
 翌朝、ボウっとしながら目を開けると、珍しく、眠っている朝日さんが視界に入った。
 チラリと時計を見やれば、まだ、五時。
 昨夜、アルコールのせいなのか、いつも以上に激しく抱かれ、あたしは、腰をさすった。
 ……うん、やっぱり、手加減してもらわなきゃだわ。
 あたしは、寝息を立てている朝日さんを見やった。
 そして、軽く口づける。
 すると、すぐに頭を押さえられて深く返され、あたしは、目を丸くした。
「……お、おはよ……朝日さん……」
「随分と刺激的な起こし方だな。足らなかったか?」
「……とんでもない」
 けれど、彼はあたしの肌をまさぐっていき、すぐにキスを落とし始めた。
「ね、ちょっ……朝日さんは、今日も仕事でしょ!」
「……少しだけ」
「あ、バカッ!」
 首筋に痛みを感じ、あたしは彼をにらむ。
「――ヤダ、もう!」
「今日は、ウチで大人しくしておけってコトだ」
 朝日さんは、指でキスマークを、つう、っと撫でて、そう言った。

「――やぁんっ……!」

 けれど、あたしの声に再び興奮してしまい――朝の一発目から、彼が満足するまで付き合わされてしまった。


「じゃあ、行って来る」
「……いってらっしゃい」
 ムスリとしてベッドから顔を出すあたしを、朝日さんは、苦笑いで受け流す。
「冷蔵庫に朝昼入れてあるから、温めて食べろよ」
「……ありがと……」
「帰ったら、もっと甘えさせてやるから」
 何だか、言い方がいやらしい。
 けれど、あたしは頬を膨らませて、うなづいた。
 そのまま、ゆるゆると時間は過ぎ、ようやく起き上がれたのは十時半頃。
 外からは、かすかに車のエンジン音がいくつも重なって聞こえてくるが、この高さでは、とても遠くに感じた。
 ――何だか、世界から切り離されたみたい……。
 あたしは、寝室の掃き出し窓から、サンルームに出る。
 直接こちらの窓を開けるのは危険なので、開かないが、日差しはまぶしいくらいに入ってきていた。
 朝日さんと暮らす日々は、とても穏やかで――安らげて……。

 ――あたしが望んでいたのは……きっと、こんな日々なんだろう。

 寝室に戻り、ベッド側の小窓を開けると、ふわりと風を感じた。

 ――こんな風な休みは、今まで無かったな……。

 舞子のように、サービス業ではないので、平日に休むなんて無いも同然だったし、あっても、誰かのために何かし続けていたようなものだった。

 ほんの少し残ったアルコールは、愛された感触とともに身体にダルさを残していたが、それは、心地良いもので。

 あたしは、再びベッドに横になり、左手を真上にかざす。
 先日のプラチナのリングの感触を思い出し、ほんの少しだけ、ため息をつく。

 ――結婚は、したいと思う。

 ……でも――……。

 胸の奥に無理矢理押し込めた現実が、それを足止めしてしまうんだ。


 ――……両親が死んだ本当の理由を知ったのは、引き取られてすぐ。

 ……寝付けずに、キッチンに水を飲みに行こうと向かった時だった。
< 148 / 195 >

この作品をシェア

pagetop