EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
あたしは、無理矢理手を離すと、一歩、後ずさった。
「美里」
「――わ……訳わかんない!何なの、急にっ……!」
あふれ出す感情に、涙までつられた。
「美里、ごめん」
「……謝らなくていいからっ……説明してよ……っ……!」
だが、朝日さんは、口を閉ざす。
その態度は――あたしのトラウマを刺激した。
――……ああ。
――……また、か。
あたしは、涙を拭う事無く、彼を見上げた。
「――……ねえ……捨てたいなら、ちゃんと言って……?」
もう、理由なんて、後付けで良い。
彼女を選びたいのなら――そうすればいい。
朝日さんは、真っ青な顔を上げると、ゆるゆると首を振る。
「バ、バカ言うな。……誰が……」
「でも、そういう事でしょ。……あたしは、もう、いらない」
「美里!」
「――あの女と、結婚するんでしょ……?」
その瞬間、彼は息をのむ。
青い顔は、もう、白くなりかけていた。
「な、にを……」
「――……マンションの前にいたの。……聞いたんだから。……責任取って、結婚するんだって……」
正直、自分で自分に引導を渡すような真似をしたくはなかった。
でも、きっと――朝日さんからは言わないだろう。
「……アイツは……元、部下だ」
「そんなの、もう、広まってます」
小坂主任が言うくらいだ。もう、あっという間に、話題の的なのに。
けれど、朝日さんは、それ以上口を開こうとしない。
そのまま、気が遠くなるような時間が過ぎた。
実質、数分だろうと思うけれど――あたし達にはそう感じるくらい。
彼は、重い口をようやく開いた。
「美里、誤解するな。――……今の状況は、お前が危険なんだ」
真剣な表情の朝日さんは、あたしを見て、それだけ言うと、再び視線を逸らす。
そして、苦しそうに続けた。
「……水沢の矛先が、お前に向かう前に――…ひとまず、姿を隠さないと――」
あたしは、彼を見上げる。
「……でも……」
あの女は――朝日さんと結婚するって言い切った。
――……だったら、あたしが邪魔ってコトで……。
――だから、あたしを遠ざけたいんでしょう……?
「お前に何かあったら――オレが耐えられない」
でも――今のあたしには、それが、真実かどうかなんて、わからない。
「美里、わかってくれ」
「わかるわけ……ないじゃない」
「美里?」
思わず出た言葉は――止まらない。
「だって、急に現れて……あたしが邪魔だって言って、朝日さんと結婚するってっ……」
「だから、水沢がそう言ってるだけで、オレは同意していない!」
両肩を強い力で掴まれる。
けれど、あたしはかぶりを振った。
「そんなの、ホントかなんて、わかんない!――だって、朝日さん、何も言ってくれないじゃない!……そんなの、どうやったら信じられるっていうのよ!」
――信用してますから。
そう言ったのは、あたしなのに――朝日さんの頑なな態度が、それを揺るがす。
すべてを話せなくても――それでも……直接聞きたかったのに。
「――美里」
見上げれば、傷ついたような表情の彼に、あたしは唇を噛む。
――何で、そんなカオするのよ。
――……あたしが傷つけたとでも言いたいの?
「……わかった」
「え」
「――……話す、から……」
朝日さんは、視線を落とすと、ポツリポツリと話し出した。
「美里」
「――わ……訳わかんない!何なの、急にっ……!」
あふれ出す感情に、涙までつられた。
「美里、ごめん」
「……謝らなくていいからっ……説明してよ……っ……!」
だが、朝日さんは、口を閉ざす。
その態度は――あたしのトラウマを刺激した。
――……ああ。
――……また、か。
あたしは、涙を拭う事無く、彼を見上げた。
「――……ねえ……捨てたいなら、ちゃんと言って……?」
もう、理由なんて、後付けで良い。
彼女を選びたいのなら――そうすればいい。
朝日さんは、真っ青な顔を上げると、ゆるゆると首を振る。
「バ、バカ言うな。……誰が……」
「でも、そういう事でしょ。……あたしは、もう、いらない」
「美里!」
「――あの女と、結婚するんでしょ……?」
その瞬間、彼は息をのむ。
青い顔は、もう、白くなりかけていた。
「な、にを……」
「――……マンションの前にいたの。……聞いたんだから。……責任取って、結婚するんだって……」
正直、自分で自分に引導を渡すような真似をしたくはなかった。
でも、きっと――朝日さんからは言わないだろう。
「……アイツは……元、部下だ」
「そんなの、もう、広まってます」
小坂主任が言うくらいだ。もう、あっという間に、話題の的なのに。
けれど、朝日さんは、それ以上口を開こうとしない。
そのまま、気が遠くなるような時間が過ぎた。
実質、数分だろうと思うけれど――あたし達にはそう感じるくらい。
彼は、重い口をようやく開いた。
「美里、誤解するな。――……今の状況は、お前が危険なんだ」
真剣な表情の朝日さんは、あたしを見て、それだけ言うと、再び視線を逸らす。
そして、苦しそうに続けた。
「……水沢の矛先が、お前に向かう前に――…ひとまず、姿を隠さないと――」
あたしは、彼を見上げる。
「……でも……」
あの女は――朝日さんと結婚するって言い切った。
――……だったら、あたしが邪魔ってコトで……。
――だから、あたしを遠ざけたいんでしょう……?
「お前に何かあったら――オレが耐えられない」
でも――今のあたしには、それが、真実かどうかなんて、わからない。
「美里、わかってくれ」
「わかるわけ……ないじゃない」
「美里?」
思わず出た言葉は――止まらない。
「だって、急に現れて……あたしが邪魔だって言って、朝日さんと結婚するってっ……」
「だから、水沢がそう言ってるだけで、オレは同意していない!」
両肩を強い力で掴まれる。
けれど、あたしはかぶりを振った。
「そんなの、ホントかなんて、わかんない!――だって、朝日さん、何も言ってくれないじゃない!……そんなの、どうやったら信じられるっていうのよ!」
――信用してますから。
そう言ったのは、あたしなのに――朝日さんの頑なな態度が、それを揺るがす。
すべてを話せなくても――それでも……直接聞きたかったのに。
「――美里」
見上げれば、傷ついたような表情の彼に、あたしは唇を噛む。
――何で、そんなカオするのよ。
――……あたしが傷つけたとでも言いたいの?
「……わかった」
「え」
「――……話す、から……」
朝日さんは、視線を落とすと、ポツリポツリと話し出した。