EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「水沢は――大阪の時の部下で……元カレからストーカー被害に遭っていたんだ」
「え」
あたしは、その言葉に思わず固まった。
――それは、この前の寿和のような……。
「大学時代からの付き合いだったそうだ。だが……別れを告げた途端、嫌がらせや付きまといが続いて……アイツは、数か月ほど、それを誰にも言えずに苦しんだそうだ」
朝日さんは、ふう、と、緊張を吐き出す。
「――オレは、それを、水沢本人から相談されたが――当人同士の問題だと、切って捨てたんだ」
「……え」
「その二日後だ。――アイツは、会社からの帰り、その元カレに刃物で襲われ――胸を刺された」
あたしは、息をのみ、硬直した。
――……もしかして、それが……。
朝日さんは、チラリとあたしを見やると、うなづいた。
「……ああ。……一命は取りとめたが……傷は残るだろうと……。オレが事情を知って、入院先に謝罪に行った時に、言われたんだ」
――アンタのせいだ!
――アンタが、ちゃんと話を聞いてくれたら、あたしはこんな傷を作らないで済んだのに!
――責任とって結婚してよ!あたしは、一生、この傷と付き合っていかなきゃいけないんだから、ずっと面倒みなさいよ!
そう、彼女の言葉を告げた朝日さんは、口を閉じる。
あたしは、そのまま、彼の言葉を待った。
「……だが、それだけはできないと、何度も言った。……向こうにいた時から――……」
そして、あたしを見やる。
「こっちには――……逃げる意味も込めて、帰って来たんだ。……さすがに、追ってこないだろうと。……お前に会ったのは、巽にすべて事情を話して、部屋を紹介してもらった直後だった」
あたしは、新井さんが、よく話して、と言ったのを思い出す。
あの時は――まだ、こんな事になるなんて、知らなかった。
――……この人を、好きになるだなんて。
「だが……あの元カレが会社に来た時、驚くと同時に怖くなった。……まさか、お前も同じ事になっているなんて、思わなかった――」
「――……っ……」
――あたしも、同じ。
――……彼女と――……同じ……?
脳内には――アラームが鳴り響く。
ちょっと待ってよ。
それじゃあ、あたしは――……あの女の代わり?
「……だから――……今度こそ、間違えたくないと思ったんだよ」
それを聞いた瞬間、目の前が真っ赤になる。
そして、身体は、無意識のうちに彼の元に向かい、その頬を叩いた。
「美里」
「あたしはっ……!アンタの贖罪の道具じゃないっ……‼」
その言葉を投げつけると、あたしは、部屋に駆け込んで、スーツケースを取り出した。
そして、持参していたすべてを詰め込むと、いつものバッグを肩にかける。
「美里っ……待ってくれ……!オレは、本当にお前の事……」
「聞きたくない!」
あたしは、そのまま玄関で靴を履き振り返る。
手を伸ばそうとしてくる朝日さんを視線で留めると、口元を無理矢理上げた。
「――さようなら。……また、会社で。……今まで、大変、お世話になりました」
「――……み……」
そして、深々と頭を下げると、そのままスーツケースを引いて部屋を出た。
エレベーターが到着すると、一人、乗り込む。
その間、部屋のドアが開く事はなく――朝日さんが追ってくる事もなかった。
その事実が、涙腺を刺激する。
唇を噛んで耐えるけれど、流れてくる涙は止められなくて。
――あたしの、五人目の男は――
過去に縛られたままの――……一番、情けない男だった。
「え」
あたしは、その言葉に思わず固まった。
――それは、この前の寿和のような……。
「大学時代からの付き合いだったそうだ。だが……別れを告げた途端、嫌がらせや付きまといが続いて……アイツは、数か月ほど、それを誰にも言えずに苦しんだそうだ」
朝日さんは、ふう、と、緊張を吐き出す。
「――オレは、それを、水沢本人から相談されたが――当人同士の問題だと、切って捨てたんだ」
「……え」
「その二日後だ。――アイツは、会社からの帰り、その元カレに刃物で襲われ――胸を刺された」
あたしは、息をのみ、硬直した。
――……もしかして、それが……。
朝日さんは、チラリとあたしを見やると、うなづいた。
「……ああ。……一命は取りとめたが……傷は残るだろうと……。オレが事情を知って、入院先に謝罪に行った時に、言われたんだ」
――アンタのせいだ!
――アンタが、ちゃんと話を聞いてくれたら、あたしはこんな傷を作らないで済んだのに!
――責任とって結婚してよ!あたしは、一生、この傷と付き合っていかなきゃいけないんだから、ずっと面倒みなさいよ!
そう、彼女の言葉を告げた朝日さんは、口を閉じる。
あたしは、そのまま、彼の言葉を待った。
「……だが、それだけはできないと、何度も言った。……向こうにいた時から――……」
そして、あたしを見やる。
「こっちには――……逃げる意味も込めて、帰って来たんだ。……さすがに、追ってこないだろうと。……お前に会ったのは、巽にすべて事情を話して、部屋を紹介してもらった直後だった」
あたしは、新井さんが、よく話して、と言ったのを思い出す。
あの時は――まだ、こんな事になるなんて、知らなかった。
――……この人を、好きになるだなんて。
「だが……あの元カレが会社に来た時、驚くと同時に怖くなった。……まさか、お前も同じ事になっているなんて、思わなかった――」
「――……っ……」
――あたしも、同じ。
――……彼女と――……同じ……?
脳内には――アラームが鳴り響く。
ちょっと待ってよ。
それじゃあ、あたしは――……あの女の代わり?
「……だから――……今度こそ、間違えたくないと思ったんだよ」
それを聞いた瞬間、目の前が真っ赤になる。
そして、身体は、無意識のうちに彼の元に向かい、その頬を叩いた。
「美里」
「あたしはっ……!アンタの贖罪の道具じゃないっ……‼」
その言葉を投げつけると、あたしは、部屋に駆け込んで、スーツケースを取り出した。
そして、持参していたすべてを詰め込むと、いつものバッグを肩にかける。
「美里っ……待ってくれ……!オレは、本当にお前の事……」
「聞きたくない!」
あたしは、そのまま玄関で靴を履き振り返る。
手を伸ばそうとしてくる朝日さんを視線で留めると、口元を無理矢理上げた。
「――さようなら。……また、会社で。……今まで、大変、お世話になりました」
「――……み……」
そして、深々と頭を下げると、そのままスーツケースを引いて部屋を出た。
エレベーターが到着すると、一人、乗り込む。
その間、部屋のドアが開く事はなく――朝日さんが追ってくる事もなかった。
その事実が、涙腺を刺激する。
唇を噛んで耐えるけれど、流れてくる涙は止められなくて。
――あたしの、五人目の男は――
過去に縛られたままの――……一番、情けない男だった。