EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
fight.4
マンションまで、無言で手を引かれたまま歩く。
周囲の視線が痛すぎて、あたしは、できる限りうつむいてついて行った。
――こんなトコ、会社の人間に見られたら、どうすんの。
無意識に浮かんできたボヤキに、思わずゾッとした。
明らかに、就任時から注目されているのが丸わかりなのに――あたしの立場を考えなさいよ!
すると、不意に部長が振り返り、あたしは、ギクリと身体を縮こませる。
――あたし、口に出してないわよね⁈
口に手を当てながら、チラリと部長を見上げる。
部長は、一瞬、眉を寄せ、すぐに息を吐くと、足を進めながら言った。
「――巽が、書類を持ってくるそうだ。それまで、ロビーで待っていろ」
「……だからっ……」
何で、アンタが勝手に決めんのよ。
その上からな口調に眉を寄せるが、問題はそこじゃない。
言い返そうとしたが、先手を取られる。
「ネカフェに泊まるのも、限度があるだろう。おかしな輩に目をつけられたら、どうする気だ」
「別に――会社には迷惑かけません」
「その自信はどこから来る」
あたしは、その言葉に、自嘲気味に笑った。
「……白山?」
うつむきながら、視線を逸らすと、吐き捨てるように言う。
「――今まで付き合った男たちは、大体、部長の言う”おかしな輩”だったから」
「――……は?」
「そういう訳で――慣れてますから。――さようなら。また、会社で」
あたしは、言うが遅い、隙を見せた部長の手を振り払うと、バッグを奪い取る。
「――……っ……白山!!」
そして、来た道をダッシュで戻ると、ちょうどバスが到着する。
ルートを見上げれば、国道経由になっていたので、思わず飛び乗った。
乗客の視線を受けながら、あたしは、身体を縮こませて前の席に座り、そして、チラリと窓の外を見やると血相を変えた部長が視界に入る。
その瞬間、罪悪感が浮かんでしまったが、もう、良いのだ。
――これで、評価を下げられようが、かまわない。
いくら部長でも、個人的な恨みで辞めさせるコトはできないだろうし、あたしは、意地でも辞めないつもりだから。
そして、次の候補に考えていた国道沿いのネカフェで一室を借り、土日はそこで、ひたすら部屋を探しまくっていたのだった。
そして、月曜日。
ネカフェを出て、国道沿いを走るバスに乗る。
ひとまず、部長が言うような”おかしな輩”とやらはいなかったし、女性客だって、まあまあいた。
――見た目よりも、古臭い考え方なのかしら。
そんな事を思いながら、会社前でバスを降りる。
いつものようにロッカールームに荷物を置き、お昼と貴重品をを入れた、移動用バッグだけ持って三階へと向かった。
「おはようございます」
ざわつく中、軽く挨拶をしながら、席に着く。
「おはよう、白山さん」
すると、二課の課長――和田原課長が後ろから声をかけてきた。
”人の良さそうな背の低いオジサン”は、あたしを見下ろす。
だが、部長と違って、威圧感など微塵も感じさせない。
その手には、先週突貫工事で作った改善書がある。
あたしは、イスごと振り返った。
「――何でしょうか」
「いや、この改善書なんだけどさ、部長から差し戻されてね」
「え」
あたしは、思わず課長の後ろに視線を向けた。
そこには、黒川部長が既に書類を片手にパソコンとにらみ合っている。
「――どこを直せば」
「……えっとね、悪いんだけど……完全にやり直しなんだって」
「――え」
その言葉に、思わず部長をにらみつけそうになった。
――マズい。今は会社。
深呼吸し、課長の手から改善書を受け取る。
「まあ、詳しいコトは、部長に確認してくれないかな。又聞きだと白山さんも混乱するだろうし」
言い方は優しいが、要は、説明が面倒なので直接聞けというコトか。
あたしは、チラリと視線を課長に移してから、うなづいた。
「承知しました。――確認してきます」
そう言うと、すぐに立ち上がり、部長のデスクに向かった。
周囲の視線が痛すぎて、あたしは、できる限りうつむいてついて行った。
――こんなトコ、会社の人間に見られたら、どうすんの。
無意識に浮かんできたボヤキに、思わずゾッとした。
明らかに、就任時から注目されているのが丸わかりなのに――あたしの立場を考えなさいよ!
すると、不意に部長が振り返り、あたしは、ギクリと身体を縮こませる。
――あたし、口に出してないわよね⁈
口に手を当てながら、チラリと部長を見上げる。
部長は、一瞬、眉を寄せ、すぐに息を吐くと、足を進めながら言った。
「――巽が、書類を持ってくるそうだ。それまで、ロビーで待っていろ」
「……だからっ……」
何で、アンタが勝手に決めんのよ。
その上からな口調に眉を寄せるが、問題はそこじゃない。
言い返そうとしたが、先手を取られる。
「ネカフェに泊まるのも、限度があるだろう。おかしな輩に目をつけられたら、どうする気だ」
「別に――会社には迷惑かけません」
「その自信はどこから来る」
あたしは、その言葉に、自嘲気味に笑った。
「……白山?」
うつむきながら、視線を逸らすと、吐き捨てるように言う。
「――今まで付き合った男たちは、大体、部長の言う”おかしな輩”だったから」
「――……は?」
「そういう訳で――慣れてますから。――さようなら。また、会社で」
あたしは、言うが遅い、隙を見せた部長の手を振り払うと、バッグを奪い取る。
「――……っ……白山!!」
そして、来た道をダッシュで戻ると、ちょうどバスが到着する。
ルートを見上げれば、国道経由になっていたので、思わず飛び乗った。
乗客の視線を受けながら、あたしは、身体を縮こませて前の席に座り、そして、チラリと窓の外を見やると血相を変えた部長が視界に入る。
その瞬間、罪悪感が浮かんでしまったが、もう、良いのだ。
――これで、評価を下げられようが、かまわない。
いくら部長でも、個人的な恨みで辞めさせるコトはできないだろうし、あたしは、意地でも辞めないつもりだから。
そして、次の候補に考えていた国道沿いのネカフェで一室を借り、土日はそこで、ひたすら部屋を探しまくっていたのだった。
そして、月曜日。
ネカフェを出て、国道沿いを走るバスに乗る。
ひとまず、部長が言うような”おかしな輩”とやらはいなかったし、女性客だって、まあまあいた。
――見た目よりも、古臭い考え方なのかしら。
そんな事を思いながら、会社前でバスを降りる。
いつものようにロッカールームに荷物を置き、お昼と貴重品をを入れた、移動用バッグだけ持って三階へと向かった。
「おはようございます」
ざわつく中、軽く挨拶をしながら、席に着く。
「おはよう、白山さん」
すると、二課の課長――和田原課長が後ろから声をかけてきた。
”人の良さそうな背の低いオジサン”は、あたしを見下ろす。
だが、部長と違って、威圧感など微塵も感じさせない。
その手には、先週突貫工事で作った改善書がある。
あたしは、イスごと振り返った。
「――何でしょうか」
「いや、この改善書なんだけどさ、部長から差し戻されてね」
「え」
あたしは、思わず課長の後ろに視線を向けた。
そこには、黒川部長が既に書類を片手にパソコンとにらみ合っている。
「――どこを直せば」
「……えっとね、悪いんだけど……完全にやり直しなんだって」
「――え」
その言葉に、思わず部長をにらみつけそうになった。
――マズい。今は会社。
深呼吸し、課長の手から改善書を受け取る。
「まあ、詳しいコトは、部長に確認してくれないかな。又聞きだと白山さんも混乱するだろうし」
言い方は優しいが、要は、説明が面倒なので直接聞けというコトか。
あたしは、チラリと視線を課長に移してから、うなづいた。
「承知しました。――確認してきます」
そう言うと、すぐに立ち上がり、部長のデスクに向かった。