EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
憤る舞子をどうにかなだめて、あたしは、高根さんの部屋の鍵を開けた。
「あ、お帰りなさい」
「た、ただいま……帰りました……」
思わず仕事中のような言い方に、高根さんはニコリと笑う。
その幼い表情に、落ち着きを取り戻す。
「ただいま、で、良いでしょう?」
「ハ、ハイ……」
「さっそくですが、夕飯、どうします?僕、一日ウチにいて、どこも出てないんで、食べに行こうかと思ったんですが」
「え、朝昼は……」
ギョッとするあたしに、彼は笑う。
「ああ、昨日買っておいた弁当とか。――まあ、休みの日は大体こんな風で」
「か、身体壊しますよ!やっぱり、あたしが作……」
あたしは、そう言いかけ、ようやく自炊の為のものが無い事に気がついた。
「――あ、すみません。……あたし、鍋とかフライパンとか、買ってこないと……」
そう告げて、踵を返す。
今なら、まだ、スーパーとかは間に合うはず。
すると、高根さんは思い出したように言った。
「ああ、それなら、シンク下にあります」
「え?」
――自炊しないんじゃ……。
「いえ、僕はしないんですけど、望さん、結構、キャンプメニュー開発も兼ねて、ココで料理するんで」
「――えっと……社長さん?」
「ええ。社員が集まると、よく、作って感想聞いたりするんですよ」
「……すごいんですね」
そこまでの熱量があってこそ、社長が務まるんだろう。
あたしが感心していると、高根さんも、少しだけ誇らしげに続けた。
「ええ。大学の時から、そんな感じで。――尊敬してます」
「――そういう関係って素敵ですね」
「え」
思わず言った言葉は、本心だ。
あたしには、そんな熱を持つ事はできないだろう。
高根さんは、照れたらしく、つらつらと場を繋ぐように言葉を続ける。
「――あ、すみません。買い物、行かれるんでしたっけ」
「あ、ハイ。すぐに行って来ますね」
「あの、お手伝いは――」
あたしは、苦笑いで首を振る。
「大丈夫ですよ」
そして、そう言って、Uターンしてスーパーに向かった。
「――すごい……!美味しそうですね!いただきます!」
そう言いながらテーブルに並べた夕飯に、さっそく手を付け始める高根さんを、くすぐったい気分で見つめる。
――いつも作っているような物ばかりで、申し訳無いな。
あたしのレパートリーなど、節約メニューばかりなので、あんまり他人には出したくないんだけど。
――……朝日さんは……簡単なヤツ、とか言いながら、結構見栄えの良い料理作ってたな……。
そう思い出すと、視線は無意識に下がっていく。
それに気づいたのか、高根さんは、慌てて言った。
「あ、あの、でも、今日だけですよ⁉本当に、気を遣わないでくださいね!」
「――ハイ。ありがとうございます」
あたしは、顔を上げるとニッコリと笑顔を作る。
そして、それを隠すように自分も手をつけ始めた。
「あ、あの、お盆休みって、いつからですか?」
「え?」
お礼に、とコーヒーを淹れてもらい、あたしが、カップに口をつけると不意に高根さんが尋ねた。
「え、あ、週末から、ですね」
「どこか旅行とかは……」
あたしは、苦笑いで首を振る。
「いえ。……元々、何も予定なんて入れてません」
「そ、そうですか。……僕、会社の企画の下見で、レジャー施設回るんですが……一緒に行きませんか……?」
「え」
目の前の高根さんは、真っ赤になりながら、あたしに言う。
――……えっと、それって……。
「デ、デート、って訳じゃないんですがっ……その、ウチ、女性社員いないんで……女性の視点が欲しいっていうか……」
あたしは、取り繕うように続ける彼を見つめた。
その視線に耐えられなかったのか――彼は、顔を伏せる。
だが、すぐに上げて、あたしを真っ直ぐに見つめた。
「あ、お帰りなさい」
「た、ただいま……帰りました……」
思わず仕事中のような言い方に、高根さんはニコリと笑う。
その幼い表情に、落ち着きを取り戻す。
「ただいま、で、良いでしょう?」
「ハ、ハイ……」
「さっそくですが、夕飯、どうします?僕、一日ウチにいて、どこも出てないんで、食べに行こうかと思ったんですが」
「え、朝昼は……」
ギョッとするあたしに、彼は笑う。
「ああ、昨日買っておいた弁当とか。――まあ、休みの日は大体こんな風で」
「か、身体壊しますよ!やっぱり、あたしが作……」
あたしは、そう言いかけ、ようやく自炊の為のものが無い事に気がついた。
「――あ、すみません。……あたし、鍋とかフライパンとか、買ってこないと……」
そう告げて、踵を返す。
今なら、まだ、スーパーとかは間に合うはず。
すると、高根さんは思い出したように言った。
「ああ、それなら、シンク下にあります」
「え?」
――自炊しないんじゃ……。
「いえ、僕はしないんですけど、望さん、結構、キャンプメニュー開発も兼ねて、ココで料理するんで」
「――えっと……社長さん?」
「ええ。社員が集まると、よく、作って感想聞いたりするんですよ」
「……すごいんですね」
そこまでの熱量があってこそ、社長が務まるんだろう。
あたしが感心していると、高根さんも、少しだけ誇らしげに続けた。
「ええ。大学の時から、そんな感じで。――尊敬してます」
「――そういう関係って素敵ですね」
「え」
思わず言った言葉は、本心だ。
あたしには、そんな熱を持つ事はできないだろう。
高根さんは、照れたらしく、つらつらと場を繋ぐように言葉を続ける。
「――あ、すみません。買い物、行かれるんでしたっけ」
「あ、ハイ。すぐに行って来ますね」
「あの、お手伝いは――」
あたしは、苦笑いで首を振る。
「大丈夫ですよ」
そして、そう言って、Uターンしてスーパーに向かった。
「――すごい……!美味しそうですね!いただきます!」
そう言いながらテーブルに並べた夕飯に、さっそく手を付け始める高根さんを、くすぐったい気分で見つめる。
――いつも作っているような物ばかりで、申し訳無いな。
あたしのレパートリーなど、節約メニューばかりなので、あんまり他人には出したくないんだけど。
――……朝日さんは……簡単なヤツ、とか言いながら、結構見栄えの良い料理作ってたな……。
そう思い出すと、視線は無意識に下がっていく。
それに気づいたのか、高根さんは、慌てて言った。
「あ、あの、でも、今日だけですよ⁉本当に、気を遣わないでくださいね!」
「――ハイ。ありがとうございます」
あたしは、顔を上げるとニッコリと笑顔を作る。
そして、それを隠すように自分も手をつけ始めた。
「あ、あの、お盆休みって、いつからですか?」
「え?」
お礼に、とコーヒーを淹れてもらい、あたしが、カップに口をつけると不意に高根さんが尋ねた。
「え、あ、週末から、ですね」
「どこか旅行とかは……」
あたしは、苦笑いで首を振る。
「いえ。……元々、何も予定なんて入れてません」
「そ、そうですか。……僕、会社の企画の下見で、レジャー施設回るんですが……一緒に行きませんか……?」
「え」
目の前の高根さんは、真っ赤になりながら、あたしに言う。
――……えっと、それって……。
「デ、デート、って訳じゃないんですがっ……その、ウチ、女性社員いないんで……女性の視点が欲しいっていうか……」
あたしは、取り繕うように続ける彼を見つめた。
その視線に耐えられなかったのか――彼は、顔を伏せる。
だが、すぐに上げて、あたしを真っ直ぐに見つめた。