EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
その日は、一日、部屋でぼうっとし続けた。
高根さんは、その間、そばで肩を抱いたり、抱き締めたり――温もりを与え続けてくれていた。
それだけで、心の深いところの傷が和らいでいく気がする。
――たとえ、今だけだとしても……それで良かった。
「……美里さん」
「え?」
髪を撫でながら、高根さんはあたしの頬に口づけた。
「――た、高根、さん」
「……すみません。また、涙が流れてます」
「――あ」
気づかないまま、泣いていたらしい。
彼は、その涙を唇で拭い取っていく。
「――……あの……」
「……嫌、ですか?」
一瞬、返事に詰まるが、ゆるゆると首を振る。
あたしは、彼の胸にそっと顔をうずめた。
「……すみません……。……少しだけ……」
すると、彼は、あたしをそっと抱き締める。
「……少しだけなんて、言わないでくださいよ」
苦笑いで見上げれば、同じように笑って返された。
――……そこに、罪悪感が生まれている事には、目を逸らしたまま。
しばらくして、高根さんはあたしを離すと、夕飯の買い物に行くと言って部屋を出て行った。
それを見送ると、あたしは、ソファに沈み込むように座り、ヒザを抱えた。
……ああ、早く、部屋探さなきゃ……。
彼に、これ以上甘えたくない。
――……傷口を癒すための恋愛は――更に傷を増やすだけだと、もう、知っているんだから……。
あたしは、テーブルの上に置いてあったスマホに手を伸ばすと、前から使っていた不動産情報のサイトを巡る。
もし、良い部屋があっても、新井さんには、見つからないようにしないと……。
彼が、朝日さんから連絡をもらっていたら――……。
――”オレが友人として、クギ刺してやるから”
そう言われた事を思い出す。
……でも、新井さんが、どこまで知っているのかはわからないし――相談した時点で、朝日さんに伝わるのは避けられない。
悩みながらも探すが、やはり、これからの時期はいつも以上に難しいようだ。
「――……もう……全然違う所に行こうかな……」
自嘲気味につぶやく。
あたしには――ここに執着する理由なんて無いんだから……もう、どこでも構わないのかもしれない。
――……逆に、誰もあたしの事情を知らないところに行けば――息をひそめて生きなくて済むのかもしれない……。
そう思えば、少しだけ、心は軽くなる。
――何だ。
――……もう、それで良いんじゃない。
辞表を書いて――高根さんにお礼をして……舞子には、後で連絡すれば良い。
とにかく、遠い所に行きたくなった。
高根さんは、その間、そばで肩を抱いたり、抱き締めたり――温もりを与え続けてくれていた。
それだけで、心の深いところの傷が和らいでいく気がする。
――たとえ、今だけだとしても……それで良かった。
「……美里さん」
「え?」
髪を撫でながら、高根さんはあたしの頬に口づけた。
「――た、高根、さん」
「……すみません。また、涙が流れてます」
「――あ」
気づかないまま、泣いていたらしい。
彼は、その涙を唇で拭い取っていく。
「――……あの……」
「……嫌、ですか?」
一瞬、返事に詰まるが、ゆるゆると首を振る。
あたしは、彼の胸にそっと顔をうずめた。
「……すみません……。……少しだけ……」
すると、彼は、あたしをそっと抱き締める。
「……少しだけなんて、言わないでくださいよ」
苦笑いで見上げれば、同じように笑って返された。
――……そこに、罪悪感が生まれている事には、目を逸らしたまま。
しばらくして、高根さんはあたしを離すと、夕飯の買い物に行くと言って部屋を出て行った。
それを見送ると、あたしは、ソファに沈み込むように座り、ヒザを抱えた。
……ああ、早く、部屋探さなきゃ……。
彼に、これ以上甘えたくない。
――……傷口を癒すための恋愛は――更に傷を増やすだけだと、もう、知っているんだから……。
あたしは、テーブルの上に置いてあったスマホに手を伸ばすと、前から使っていた不動産情報のサイトを巡る。
もし、良い部屋があっても、新井さんには、見つからないようにしないと……。
彼が、朝日さんから連絡をもらっていたら――……。
――”オレが友人として、クギ刺してやるから”
そう言われた事を思い出す。
……でも、新井さんが、どこまで知っているのかはわからないし――相談した時点で、朝日さんに伝わるのは避けられない。
悩みながらも探すが、やはり、これからの時期はいつも以上に難しいようだ。
「――……もう……全然違う所に行こうかな……」
自嘲気味につぶやく。
あたしには――ここに執着する理由なんて無いんだから……もう、どこでも構わないのかもしれない。
――……逆に、誰もあたしの事情を知らないところに行けば――息をひそめて生きなくて済むのかもしれない……。
そう思えば、少しだけ、心は軽くなる。
――何だ。
――……もう、それで良いんじゃない。
辞表を書いて――高根さんにお礼をして……舞子には、後で連絡すれば良い。
とにかく、遠い所に行きたくなった。