EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
翌日、充くんは仕事で県外へ向かうとの事で、玄関先で一泊用の荷物を抱え、忘れ物が無いかチェックしていた。
「スマホはちゃんとある?」
「……大丈夫だってば」
少々ムッとしながらも、うなづく彼に、あたしは微笑む。
「――じゃあ、いってきます」
「うん。……いってらっしゃい」
「何かあったら、すぐに連絡。……すぐには駆け付けられないけど、こっちに残っている会社の人間に頼む事はできるからさ」
あたしは、心配そうに言う彼にうなづく。
「……ありがと。気をつけてね」
「うん」
そう言うと、充くんはあたしを抱き寄せ、軽くキスをする。
「……もう……新婚ごっこはダメだってば」
「だって――何か、触れ合ってないと、落ち着かなくてさ」
「……帰ったら、ちゃんと甘えさせてあげるから……ね?」
すると、彼は、真っ赤になり、恨みがましくあたしを見た。
「……みぃちゃん……生殺しは止めて。……契約違反になっちゃうでしょ」
あたしは、少しだけバツが悪くなり、取り繕うように笑う。
彼も、同じように笑うと、玄関を出て行った。
一人になり、急に静かになった部屋を見回し、あたしはうつむいた。
――……こんな事、いつまでも続けられる訳無いのに。
お互いに傷をなめ合うような生活に、溺れ始めている気がする。
――……育った環境は違っても、持ち続けた感情は、とても良く似ているんだ。
あたしは、現実逃避したくなる思考を止めようと、軽く首を振る。
「……早く……次、探さなきゃ……」
その前に、どこに行くか決めないと――……。
寒いのは平気だから、北の方でも良いかな。
でも、仕事が無いのも困るし。
首都圏は、他人との距離がありそうだから、かえって楽なのかも。
そんな事をつらつらと考えながら、掃除や洗濯を終え、昼前には、ソファでスマホとにらみ合う。
――……もう、ここから離れる事を、ためらう理由は無かった。
けれど、結局、週末丸々使っても、どこへ行くかなんて決まらなくて。
「ただいま、みぃちゃん。ハイ、おみやげ」
「おかえりなさい。ありがと」
日曜の夕方に帰って来た充くんを、少しだけ作った笑顔で迎えると、すぐに抱き着かれた。
「ちょ……っ……こら、充くんってば」
「あー……疲れが取れるー」
そう言いながら、あたしの首元に顔をうずめると、きつく吸い付いた。
「きゃっ……⁉」
「――あ、ごめんね。……ちょっと、疲れが溜まっちゃって」
「……は?」
あたしが眉を寄せると、彼は、耳元で脳内に響くように囁く。
「みぃちゃん、癒して?」
「……っ……⁉」
硬直している間に、スルスルと服の中に手が入っていく。
「え、あっ……?み、充、く……」
身をよじるが、彼は離してくれない。
だが、その彼の身体からは――強いアルコールの香りがしていて。
「よ、酔っぱらってるでしょ!」
「あ、バレた」
アハハ、と、陽気に笑う彼を、あたしは、力任せに引きはがした。
「契約違反!」
「ごめんってば。……ちょっと、帰りの新幹線で、お客さんに飲まされちゃってさ」
「……そこまで強くなかったよね?」
「そこそこだよ。……まあ、帰りは、半分宴会みたいになってたから」
言いながら、充くんは、その場で服を脱ぎ出す。
「あ、コラ、ちゃんと向こう行って……」
「みぃちゃん、お願い?」
「もうっ!」
手渡された上着は、アルコールの臭いが染みついている。
仕方ないので、消臭スプレーを吹きかけ、ハンガーにかけた。
すると、あっという間に、ソファで眠ってしまった彼を、あきれ半分で見下ろした。
……確かに、甘えさせるって言ったけどさ……。
一瞬だけ、元カレ達がよぎり、あたしは、首を振って記憶から逃げた。
「スマホはちゃんとある?」
「……大丈夫だってば」
少々ムッとしながらも、うなづく彼に、あたしは微笑む。
「――じゃあ、いってきます」
「うん。……いってらっしゃい」
「何かあったら、すぐに連絡。……すぐには駆け付けられないけど、こっちに残っている会社の人間に頼む事はできるからさ」
あたしは、心配そうに言う彼にうなづく。
「……ありがと。気をつけてね」
「うん」
そう言うと、充くんはあたしを抱き寄せ、軽くキスをする。
「……もう……新婚ごっこはダメだってば」
「だって――何か、触れ合ってないと、落ち着かなくてさ」
「……帰ったら、ちゃんと甘えさせてあげるから……ね?」
すると、彼は、真っ赤になり、恨みがましくあたしを見た。
「……みぃちゃん……生殺しは止めて。……契約違反になっちゃうでしょ」
あたしは、少しだけバツが悪くなり、取り繕うように笑う。
彼も、同じように笑うと、玄関を出て行った。
一人になり、急に静かになった部屋を見回し、あたしはうつむいた。
――……こんな事、いつまでも続けられる訳無いのに。
お互いに傷をなめ合うような生活に、溺れ始めている気がする。
――……育った環境は違っても、持ち続けた感情は、とても良く似ているんだ。
あたしは、現実逃避したくなる思考を止めようと、軽く首を振る。
「……早く……次、探さなきゃ……」
その前に、どこに行くか決めないと――……。
寒いのは平気だから、北の方でも良いかな。
でも、仕事が無いのも困るし。
首都圏は、他人との距離がありそうだから、かえって楽なのかも。
そんな事をつらつらと考えながら、掃除や洗濯を終え、昼前には、ソファでスマホとにらみ合う。
――……もう、ここから離れる事を、ためらう理由は無かった。
けれど、結局、週末丸々使っても、どこへ行くかなんて決まらなくて。
「ただいま、みぃちゃん。ハイ、おみやげ」
「おかえりなさい。ありがと」
日曜の夕方に帰って来た充くんを、少しだけ作った笑顔で迎えると、すぐに抱き着かれた。
「ちょ……っ……こら、充くんってば」
「あー……疲れが取れるー」
そう言いながら、あたしの首元に顔をうずめると、きつく吸い付いた。
「きゃっ……⁉」
「――あ、ごめんね。……ちょっと、疲れが溜まっちゃって」
「……は?」
あたしが眉を寄せると、彼は、耳元で脳内に響くように囁く。
「みぃちゃん、癒して?」
「……っ……⁉」
硬直している間に、スルスルと服の中に手が入っていく。
「え、あっ……?み、充、く……」
身をよじるが、彼は離してくれない。
だが、その彼の身体からは――強いアルコールの香りがしていて。
「よ、酔っぱらってるでしょ!」
「あ、バレた」
アハハ、と、陽気に笑う彼を、あたしは、力任せに引きはがした。
「契約違反!」
「ごめんってば。……ちょっと、帰りの新幹線で、お客さんに飲まされちゃってさ」
「……そこまで強くなかったよね?」
「そこそこだよ。……まあ、帰りは、半分宴会みたいになってたから」
言いながら、充くんは、その場で服を脱ぎ出す。
「あ、コラ、ちゃんと向こう行って……」
「みぃちゃん、お願い?」
「もうっ!」
手渡された上着は、アルコールの臭いが染みついている。
仕方ないので、消臭スプレーを吹きかけ、ハンガーにかけた。
すると、あっという間に、ソファで眠ってしまった彼を、あきれ半分で見下ろした。
……確かに、甘えさせるって言ったけどさ……。
一瞬だけ、元カレ達がよぎり、あたしは、首を振って記憶から逃げた。