EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「……ごめんなさい」
ようやく目が覚め、我に返った充くんを、あたしは、食卓につきながら、ジロリと見やった。
「……さすがに、甘えすぎ。記憶はあるのよね?」
「……うん。……反省してる」
「自分で、身体は求めないって言ったクセに」
「……返す言葉もありません」
神妙になって頭を下げる彼に、思わず苦笑いだ。
――ああ、もう……憎めない男だなぁ……。
「……もう、いいわよ。早く食べちゃおう」
「うん。……でもさ、もし、みぃちゃんが僕を好きになってくれたら――状況は違うからね」
「……充くん」
戸惑いを隠せないあたしに、彼は笑う。
「だから、今みたいに怒ってくれた方が、僕も助かる」
「……うん」
彼の酒グセが悪いのはわかった。
今度から、注意しなきゃ。
――”今度”があるかは、わからないけれど。
「――まあ、今日は、お仕事お疲れ様ってコトで、特別に許すから。……次は無いからね」
「ハァイ」
少々適当に返事をしつつ、充くんは、ご飯を盛って向かい側に座る。
キッチンテーブルなど置いて無いので、ソファで食べているのだ。
「あ、そうだ。お土産、後で食べようね。コーヒー淹れるから」
「うん」
そんな会話が続くのが、うれしくなる。
――……たとえ、作られた”幸せな家族”だとしても――……。
充くんとの緩い時間を過ごし、あたしは、翌日からまた仕事だ。
代休という彼を眠ったままにして、一人、駅へと向かう。
すると、ホームに向かう途中で、足が止まった。
――……あれは――……。
コンコースに、見覚えのある、スレンダーな女性。
――確か――水沢、さん。
彼女は、誰かを探しているようで、あたしは、見つからないように息をひそめてホームに向かおうとした。
けれど――次には、目が合ってしまった。
――……どう、しよう。
戸惑っている間に、彼女はあたしの元にやって来る。
「ああ、やっと見つかった」
「え」
「――確認したかったのよ。アンタ、課長と別れたのよね?この前、別の男といたでしょう」
違和感のあるイントネーションでそう言われ、あたしは視線を逸らす。
「……そ、それが……何か」
「良かったわ。これで、やっと、ちゃんと話ができる」
「……え」
何の――そう思ったのが顔に出てしまったのか、彼女は、あたしをジロリと見やる。
「アンタがいるから、結婚できない、の一点張りよ。さっさとあきらめれば良いのに」
その言葉に胸は震える。
けれど、彼女は見下すようにあたしに言った。
「まあ、この傷見せたら、黙っちゃったけどね。知ってるんでしょ」
「――……っ……」
彼女は、ココ、と、胸の真ん中を指さす。
――……胸の傷を見せた……?寝たってコト……?
あたしは、思わず視線を逸らしたが、彼女は口元を上げた。
「別に寝た訳じゃないわよ。……それは、これからのお楽しみだし」
この前とは、まるで違う態度に、違和感を持つ。
「でも、良かった。ようやく結婚できるわ。――まったく、あきらめの悪い男なんだから」
まるで、片思いが実ったような雰囲気。
違和感が消えてくれず、あたしは、思い切って彼女に尋ねた。
「……あの……ぜ、全部……部長のせいだって言ってましたよね……?憎くて……恨んでて、結婚しろって詰め寄っていたんですよね……?」
「当然でしょ。あたしの人生、台無しにしたんだから、それくらいしてもらわなきゃ割に合わないわよ」
彼女の、言葉とは裏腹な機嫌の良さに、あたしはそれ以上聞けずにいた。
けれど、その答えは――意外なところから、もたらされた。
ようやく目が覚め、我に返った充くんを、あたしは、食卓につきながら、ジロリと見やった。
「……さすがに、甘えすぎ。記憶はあるのよね?」
「……うん。……反省してる」
「自分で、身体は求めないって言ったクセに」
「……返す言葉もありません」
神妙になって頭を下げる彼に、思わず苦笑いだ。
――ああ、もう……憎めない男だなぁ……。
「……もう、いいわよ。早く食べちゃおう」
「うん。……でもさ、もし、みぃちゃんが僕を好きになってくれたら――状況は違うからね」
「……充くん」
戸惑いを隠せないあたしに、彼は笑う。
「だから、今みたいに怒ってくれた方が、僕も助かる」
「……うん」
彼の酒グセが悪いのはわかった。
今度から、注意しなきゃ。
――”今度”があるかは、わからないけれど。
「――まあ、今日は、お仕事お疲れ様ってコトで、特別に許すから。……次は無いからね」
「ハァイ」
少々適当に返事をしつつ、充くんは、ご飯を盛って向かい側に座る。
キッチンテーブルなど置いて無いので、ソファで食べているのだ。
「あ、そうだ。お土産、後で食べようね。コーヒー淹れるから」
「うん」
そんな会話が続くのが、うれしくなる。
――……たとえ、作られた”幸せな家族”だとしても――……。
充くんとの緩い時間を過ごし、あたしは、翌日からまた仕事だ。
代休という彼を眠ったままにして、一人、駅へと向かう。
すると、ホームに向かう途中で、足が止まった。
――……あれは――……。
コンコースに、見覚えのある、スレンダーな女性。
――確か――水沢、さん。
彼女は、誰かを探しているようで、あたしは、見つからないように息をひそめてホームに向かおうとした。
けれど――次には、目が合ってしまった。
――……どう、しよう。
戸惑っている間に、彼女はあたしの元にやって来る。
「ああ、やっと見つかった」
「え」
「――確認したかったのよ。アンタ、課長と別れたのよね?この前、別の男といたでしょう」
違和感のあるイントネーションでそう言われ、あたしは視線を逸らす。
「……そ、それが……何か」
「良かったわ。これで、やっと、ちゃんと話ができる」
「……え」
何の――そう思ったのが顔に出てしまったのか、彼女は、あたしをジロリと見やる。
「アンタがいるから、結婚できない、の一点張りよ。さっさとあきらめれば良いのに」
その言葉に胸は震える。
けれど、彼女は見下すようにあたしに言った。
「まあ、この傷見せたら、黙っちゃったけどね。知ってるんでしょ」
「――……っ……」
彼女は、ココ、と、胸の真ん中を指さす。
――……胸の傷を見せた……?寝たってコト……?
あたしは、思わず視線を逸らしたが、彼女は口元を上げた。
「別に寝た訳じゃないわよ。……それは、これからのお楽しみだし」
この前とは、まるで違う態度に、違和感を持つ。
「でも、良かった。ようやく結婚できるわ。――まったく、あきらめの悪い男なんだから」
まるで、片思いが実ったような雰囲気。
違和感が消えてくれず、あたしは、思い切って彼女に尋ねた。
「……あの……ぜ、全部……部長のせいだって言ってましたよね……?憎くて……恨んでて、結婚しろって詰め寄っていたんですよね……?」
「当然でしょ。あたしの人生、台無しにしたんだから、それくらいしてもらわなきゃ割に合わないわよ」
彼女の、言葉とは裏腹な機嫌の良さに、あたしはそれ以上聞けずにいた。
けれど、その答えは――意外なところから、もたらされた。