EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
それから、再び診察やら、検査やらが続き、個室に移ったのは二日後だった。
その間も、朝日さんは面会時間いっぱいに居続けてくれた。
笑えるくらいに、彼は献身的で……仕事も、病室を移ってからは、ベッドの隣で持って来たものを始めたくらいだ。
「美里、コンビニ行って来るが……何かいるか?」
一区切りついたのか、朝日さんは立ち上がると、あたしに尋ねた。
どうやら、お昼を買いに行くらしい。
ベッドに横になったまま、首を振って返す。
状況は落ち着いたとはいえ、まだ、機械に繋がれているし、動く事もできなかった。
彼は、そっと、あたしの頭を撫でると、軽く頬にキスをする。
「何かあったら、すぐに言うんだぞ」
そう言って、ナースコールのボタンを、あたしの手に握らせた。
それに目だけでうなづくと、少しだけ悲しそうに微笑む。
「――じゃあ、行って来るから」
名残惜しそうに言い、病室から出て行く。
――ほんの少しだけ、それをさみしく思いながら見つめていると、
「何てコトしてくれたのよ、アンタ‼‼」
彼が部屋のドアを開けた瞬間、甲高い声が響き渡り、あたしは、驚いて、そちらに視線を向ける。
ドアの向こう側から現れたのは――
「……ま……ぃ……」
舞子だった。
「――……済まない……舞子くん」
「舞子、やめるんだ。黒川さんだって、被害者だろ」
「うるさい、アキ!全部、原因はコイツじゃない!」
怒りに任せて叫ぶと、舞子は朝日さんの服を掴んだ。
「何が、美里を守る、よ!アンタが現われなきゃ……美里は、こんな目に遭わなくて済んだのに!」
「舞子!」
秋成さんが、必死に止めるのも聞かず、舞子は朝日さんに詰め寄っていく。
「どうしてくれんのよ!助かったから良かったってモンじゃないのよ⁉」
「舞子、とにかく落ち着け。ホラ、手離して」
そう言って、秋成さんに手を引きはがされた舞子に、朝日さんは、深々と頭を下げた。
「――……本当に……申し訳無い……」
だが、舞子は、秋成さんの手を振りほどくと、再び、朝日さんの胸を力任せに叩き続けた。
「……アタシの親友よっ……!アタシの……っ……大事な……!」
言いながらも、舞子の声は震えている。
「……ま……いこ……」
あたしは、彼女を止めたくて、どうにか声を絞り出した。
瞬間、胸が引き裂かれるような痛みを感じ、眉を寄せて耐える。
「美里!」
舞子は、我に返ったようにあたしを見ると、ベッドの脇に駆け寄って来る。
「……みさとぉ……」
「……ま……い……こ」
ぐしゃぐしゃになった幼げな顔には、大粒の涙が次々とこぼれ落ちていく。
舞子が、こんな風に泣くなんて――初めて見た。
「――……し……んぱ……い……させて、ご、め……」
「しゃべんないの!」
「だ……って……」
本気で心配して、泣いてくれる親友がいる。
あたしは、胸が詰まった。
「……アンタまで……泣かないでよ……」
頬を流れた涙に気がついた舞子は、そっと、その指で拭う。
「……あの人から連絡が来た時、目の前真っ暗になったわよ。……ホント……アンタは、自分をもっと、大事にしなさい」
「……ん……」
「――アンタは……絶対に、いらないコなんかじゃないからね……」
「……うん……」
舞子は、そう言って、自分の頬を流れたままの涙を、ゴシゴシと手で拭った。
「――舞子、もう行こう。美里ちゃんに、無理させるな」
「……わかった……」
なだめるように、秋成さんにそう言われ、舞子は渋々うなづく。
「――美里ちゃん。……言いたい事は、まあ、いろいろあるけどさ……ひとまず、治す事だけ考えて。――お説教は、それからだよ」
あたしは、無理矢理明るく茶化すように言う彼に、口元を上げて返した。
その間も、朝日さんは面会時間いっぱいに居続けてくれた。
笑えるくらいに、彼は献身的で……仕事も、病室を移ってからは、ベッドの隣で持って来たものを始めたくらいだ。
「美里、コンビニ行って来るが……何かいるか?」
一区切りついたのか、朝日さんは立ち上がると、あたしに尋ねた。
どうやら、お昼を買いに行くらしい。
ベッドに横になったまま、首を振って返す。
状況は落ち着いたとはいえ、まだ、機械に繋がれているし、動く事もできなかった。
彼は、そっと、あたしの頭を撫でると、軽く頬にキスをする。
「何かあったら、すぐに言うんだぞ」
そう言って、ナースコールのボタンを、あたしの手に握らせた。
それに目だけでうなづくと、少しだけ悲しそうに微笑む。
「――じゃあ、行って来るから」
名残惜しそうに言い、病室から出て行く。
――ほんの少しだけ、それをさみしく思いながら見つめていると、
「何てコトしてくれたのよ、アンタ‼‼」
彼が部屋のドアを開けた瞬間、甲高い声が響き渡り、あたしは、驚いて、そちらに視線を向ける。
ドアの向こう側から現れたのは――
「……ま……ぃ……」
舞子だった。
「――……済まない……舞子くん」
「舞子、やめるんだ。黒川さんだって、被害者だろ」
「うるさい、アキ!全部、原因はコイツじゃない!」
怒りに任せて叫ぶと、舞子は朝日さんの服を掴んだ。
「何が、美里を守る、よ!アンタが現われなきゃ……美里は、こんな目に遭わなくて済んだのに!」
「舞子!」
秋成さんが、必死に止めるのも聞かず、舞子は朝日さんに詰め寄っていく。
「どうしてくれんのよ!助かったから良かったってモンじゃないのよ⁉」
「舞子、とにかく落ち着け。ホラ、手離して」
そう言って、秋成さんに手を引きはがされた舞子に、朝日さんは、深々と頭を下げた。
「――……本当に……申し訳無い……」
だが、舞子は、秋成さんの手を振りほどくと、再び、朝日さんの胸を力任せに叩き続けた。
「……アタシの親友よっ……!アタシの……っ……大事な……!」
言いながらも、舞子の声は震えている。
「……ま……いこ……」
あたしは、彼女を止めたくて、どうにか声を絞り出した。
瞬間、胸が引き裂かれるような痛みを感じ、眉を寄せて耐える。
「美里!」
舞子は、我に返ったようにあたしを見ると、ベッドの脇に駆け寄って来る。
「……みさとぉ……」
「……ま……い……こ」
ぐしゃぐしゃになった幼げな顔には、大粒の涙が次々とこぼれ落ちていく。
舞子が、こんな風に泣くなんて――初めて見た。
「――……し……んぱ……い……させて、ご、め……」
「しゃべんないの!」
「だ……って……」
本気で心配して、泣いてくれる親友がいる。
あたしは、胸が詰まった。
「……アンタまで……泣かないでよ……」
頬を流れた涙に気がついた舞子は、そっと、その指で拭う。
「……あの人から連絡が来た時、目の前真っ暗になったわよ。……ホント……アンタは、自分をもっと、大事にしなさい」
「……ん……」
「――アンタは……絶対に、いらないコなんかじゃないからね……」
「……うん……」
舞子は、そう言って、自分の頬を流れたままの涙を、ゴシゴシと手で拭った。
「――舞子、もう行こう。美里ちゃんに、無理させるな」
「……わかった……」
なだめるように、秋成さんにそう言われ、舞子は渋々うなづく。
「――美里ちゃん。……言いたい事は、まあ、いろいろあるけどさ……ひとまず、治す事だけ考えて。――お説教は、それからだよ」
あたしは、無理矢理明るく茶化すように言う彼に、口元を上げて返した。