EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「大体、お前がどんなにママが大好きでも、オレの愛の方が、はるかに深い。間に入れると思うなよ」
「お……っも!(こわ)っ!ママ、ヤバイよ、このオッサン!」
「おい!」
「今からでも遅くない!考え直そう!ママくらいキレイなら、子連れでも、もっとマトモな相手は、いくらでもいるから!」
「不吉な事を言うな!」
 終わらない言い合いに、あたしは一人、あきれながらクスクスと笑う。

 ――こんな風に言い合える家族ができるなんて……なんて、幸せなんだろうね。

「もう!とにかく、来週は、あたしが優先!あと、イチャイチャは、子供がいないトコでしてよね!」
 まほろは、まだ何か言いたげな朝日さんに、言い捨てるとドアをバタンと閉める。
 けれど、またすぐに開けて、

「あたし、ぜーったい、パパみたいなダメ男(・・・)とは結婚しないから!」

 そう言い捨てると、再び、バタン、と、ドアを閉めた。
 ポカンとそれを見つめ――あたしは、抱き着いたままの朝日さんを見上げる。
 そこには、ふてくされた――昔と変わらない、でも、少しだけ精悍になった端正な顔。
 あたしは、思わず吹き出してしまう。

「……美里、お前な」

「だって」

 言いながら二人でベッドに戻ると、彼を胸に抱き寄せる。
「――どんなにダメ男でも、あたしが良いなら、良いんじゃないの?」
「……ダメ男前提というのが、腑に落ちん」
「機嫌直さないと、このまま寝るわよ」
「……それは困る」
 ふてくされながらも、キスをしてくる彼に、あたしは笑って言った。

「――……あたしも、愛してるわよ、朝日さん?」

「……っ……!」

 滅多に言わない言葉に、彼は一瞬固まる。
 そして、再び深く口づけ、ほんの少しだけ離すと、口元を上げた。

「――オレの方が、愛してる」

「また、何を張り合ってんのよ」

 あきれて返すと、お互いに笑い合う。
 ――今日は、できるだけ、大人しくね。
 そんな風に言えば、朝日さんは、無理だ、と、開き直る。
 二人じゃれ合うように抱き合い――明日、バレてたら、子供たちに、どうごまかそう。
 そんな事を考えながら、幸せにひたる。


 ――愛しい人達に囲まれた、ささやかな生活。

 ――そんな日々が……もう、あたしには、ある。
 




 ――EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー


 ――――END
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