EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
fight.1
ぼんやりと眠りから浮上すると、頭には鈍い痛み。
二日酔いの頭を抱えながら、あたしは、ゆっくりと起き上がる。
「あ、起きた?美里」
「……おはよー、舞子……」
結局、あの後、橋を渡った先のファミレスで、ドリンクバーだけで時間をつぶし、親友の元へ転がり込んだのだった。
ぼうっとしながら、床に敷かれた客用布団から起き上がると、既に朝食は作られていた。
そして、あたしを無視して、既に半分を胃の中に収めている彼女は、中学時代からの唯一の友達だ。
あたしは、勝手知ったる、と、ばかりに洗面台で身支度を整える。
節約がてら伸ばし続けている髪を、サッと後ろで結わえて顔を洗うと、安い化粧水をたたいて終了。
その後、食事を終えて、おっさんのようにコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる舞子の目の前に座った。
ローテーブルの上には、簡単に手作りサンドイッチとコーヒーがスタンバイされている。
「ありがと、いただきます」
「ん」
簡単にうなづく舞子は、コーヒーを置いて、新聞を食い入るように読む。
二十代女性にしては珍しく、新聞を毎日取っているのは、昔からの習性らしい。
舞子の実家では、家族全員、新聞を隅から隅まで読むのが通常のようだった。
あたしは、ハムサンドを口に入れながら、テレビをつける。
日曜日の朝なので、大した番組も無く、かろうじてあった情報番組をBGM代わりに流して、三つのサンドイッチを平らげた。
夕べ、やけ酒した缶ビールとハイボールのアルコールは、少し残っているが、そこまで影響があるほどでもない。
「――で、今度はどうしたのよ」
朝ごはんを終え、お礼代わりに洗い物を済ませたあたしを、新聞を畳みながら舞子が見上げて尋ねた。
「……ま、また……振られた……」
バツが悪くなり、あたしは、正座をすると、そのままうつむいてしまう。
すると、舞子は大きくため息をついた。
見た目も身長も小学生で通用する舞子は、その実、かなりの毒舌と正論を標準装備している。
いつものように説教が始まると思い、あたしは身を縮めた。
「アンタには、学習機能ってモンは、ついてないの?」
「で、でも……今度こそって……。……同棲もしてたし……」
正直、お互いアラサーの付き合いで、結婚も考えていると思っていた。
少なくとも、あたしは。
――けれど、彼は違ったらしい。
付き合って二か月目で仕事を辞めたが、一年半ほどはハローワーク通い。
さすがに、日雇いの仕事で収入はあったが、それも、たかが知れていて。
ほとんど、あたしが養っているようなものだった。
けれど、徐々に、どこに行っているのかも、わからなくなってきて――最後にはコレだ。
『お前といると、楽なんだよな』
それは、口説き文句でも、誠実な言葉でもなく――ただの、ヒモってコトだと気がついたのは、夕べ振られた後だ。
付き合っている時は、きっと、特別な事なんだと思っていたけれど――……。
そんなあたしを見やり、舞子はため息交じりに言った。
「……最初に話聞いた時から、怪しいと思ってたんだけどねぇ……。まあ、アンタ、恋愛始めると、いつも盲目になるから、見守るだけにしてたけど」
「……だって……」
「でも、も、だっても、いらんわ」
「……う・」
あきれたようにあたしを見上げると、舞子は苦笑いで返す。
「――まあ、切れて良かったんじゃないの。このままだと、美里、完全に寄生されただろうし」
あたしは、その言葉に、今更な事に気がついた。
「――美里?」
「……アパートの部屋の名義……あたしだ」
「……は?」
言いながら青くなる。
飛び出したは良いが、部屋の解約などしている訳もなく。
そして、賃貸契約の名義は――あたしの名前なのだ。
別れると言っても、現状、話し合って決めたものでもない。
――たぶん、アイツは首を縦には振らないだろう。
あたしの言いたい事を理解した舞子は、思い切り眉をしかめ、大きく息を吐いたのだった。
二日酔いの頭を抱えながら、あたしは、ゆっくりと起き上がる。
「あ、起きた?美里」
「……おはよー、舞子……」
結局、あの後、橋を渡った先のファミレスで、ドリンクバーだけで時間をつぶし、親友の元へ転がり込んだのだった。
ぼうっとしながら、床に敷かれた客用布団から起き上がると、既に朝食は作られていた。
そして、あたしを無視して、既に半分を胃の中に収めている彼女は、中学時代からの唯一の友達だ。
あたしは、勝手知ったる、と、ばかりに洗面台で身支度を整える。
節約がてら伸ばし続けている髪を、サッと後ろで結わえて顔を洗うと、安い化粧水をたたいて終了。
その後、食事を終えて、おっさんのようにコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる舞子の目の前に座った。
ローテーブルの上には、簡単に手作りサンドイッチとコーヒーがスタンバイされている。
「ありがと、いただきます」
「ん」
簡単にうなづく舞子は、コーヒーを置いて、新聞を食い入るように読む。
二十代女性にしては珍しく、新聞を毎日取っているのは、昔からの習性らしい。
舞子の実家では、家族全員、新聞を隅から隅まで読むのが通常のようだった。
あたしは、ハムサンドを口に入れながら、テレビをつける。
日曜日の朝なので、大した番組も無く、かろうじてあった情報番組をBGM代わりに流して、三つのサンドイッチを平らげた。
夕べ、やけ酒した缶ビールとハイボールのアルコールは、少し残っているが、そこまで影響があるほどでもない。
「――で、今度はどうしたのよ」
朝ごはんを終え、お礼代わりに洗い物を済ませたあたしを、新聞を畳みながら舞子が見上げて尋ねた。
「……ま、また……振られた……」
バツが悪くなり、あたしは、正座をすると、そのままうつむいてしまう。
すると、舞子は大きくため息をついた。
見た目も身長も小学生で通用する舞子は、その実、かなりの毒舌と正論を標準装備している。
いつものように説教が始まると思い、あたしは身を縮めた。
「アンタには、学習機能ってモンは、ついてないの?」
「で、でも……今度こそって……。……同棲もしてたし……」
正直、お互いアラサーの付き合いで、結婚も考えていると思っていた。
少なくとも、あたしは。
――けれど、彼は違ったらしい。
付き合って二か月目で仕事を辞めたが、一年半ほどはハローワーク通い。
さすがに、日雇いの仕事で収入はあったが、それも、たかが知れていて。
ほとんど、あたしが養っているようなものだった。
けれど、徐々に、どこに行っているのかも、わからなくなってきて――最後にはコレだ。
『お前といると、楽なんだよな』
それは、口説き文句でも、誠実な言葉でもなく――ただの、ヒモってコトだと気がついたのは、夕べ振られた後だ。
付き合っている時は、きっと、特別な事なんだと思っていたけれど――……。
そんなあたしを見やり、舞子はため息交じりに言った。
「……最初に話聞いた時から、怪しいと思ってたんだけどねぇ……。まあ、アンタ、恋愛始めると、いつも盲目になるから、見守るだけにしてたけど」
「……だって……」
「でも、も、だっても、いらんわ」
「……う・」
あきれたようにあたしを見上げると、舞子は苦笑いで返す。
「――まあ、切れて良かったんじゃないの。このままだと、美里、完全に寄生されただろうし」
あたしは、その言葉に、今更な事に気がついた。
「――美里?」
「……アパートの部屋の名義……あたしだ」
「……は?」
言いながら青くなる。
飛び出したは良いが、部屋の解約などしている訳もなく。
そして、賃貸契約の名義は――あたしの名前なのだ。
別れると言っても、現状、話し合って決めたものでもない。
――たぶん、アイツは首を縦には振らないだろう。
あたしの言いたい事を理解した舞子は、思い切り眉をしかめ、大きく息を吐いたのだった。