EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
新井不動産を二人で後にすると、そのまま、マンションに帰る事にした。
少し前を歩く部長を見上げ、あたしは、早くも後悔しそうになった。
駅方面へ向かう途中、すれ違う女性、ほぼほぼ、部長をチラ見していくのだ。
そして、次には、あたしの方を見て、ちょっとだけ眉を寄せて過ぎ去って行く。
――それくらい、隣にいるのが、不自然なんだろう。
「――白山?」
「え?」
すると、部長があたしをのぞき込んできたので、思わず後ずさる。
「……何やってんだ、お前は」
「――……身の程をわきまえているだけです」
その返しに、キョトンとし、部長は前を向いた。
「……何で、そう、自分を卑下する?」
「――え」
不意打ちの質問に、あたしは言葉に詰まった。
「……別に……」
かろうじて、それだけ返すと、うつむく。
――卑下とかじゃない。
ちゃんと、現実を見ているだけ。
徐々に、駅前の商業施設や、ビルの明かり、飲み屋街のざわめきに囲まれるが、あたしは、顔を上げられない。
――……これから、どうすれば良いんだろう。
部長とルームシェアとか言っても、いつまでもいられる訳じゃあない。
早目に出て行けるように、部屋を探さないといけない。
「おい、白山」
「え?」
そんな事を考えていると、部長があたしを振り返り言った。
「着替えとか、荷物、どこかに預けてるのか?友達の部屋に置きっぱなしか?」
「え、あ」
そう言えば――目ぼしいものは持って来たけど、服とかは、まだ、舞子の部屋だ。
でも、この時間で取りに行く訳にも――。
すると、部長は、あっさりと提案した。
「――友達の部屋なら、車出すぞ」
「え」
あたしは、目を丸くする。
その反応が気に入らなかったのか、部長は眉を寄せた。
「免許くらいある」
「い、いや、そうじゃなくて……車、あるんですか」
「こっちに引っ越した時、買った」
ちょっと、コンビニで買い物してきた、なんて聞こえるような言い方に、あたしは固まる。
「別に、中古車だぞ。そんなに使わないだろうが――こっちは、無いと困るからな」
その言葉に、思わずうなづいてしまう。
この辺は、電車がたくさん通っているし、バスも頻繁にある。
けれど、ちょっと離れると、車でしか動けない場所が多々あるのだ。
部長の地元がこちらというのは、どうやら本当のようだ。
「じゃあ、一旦、マンションに行って待ってろ。鍵持ってくる」
「――いえ、そこまでお世話になるつもりはありません。自分で何とかします」
「あのな、そこは甘えておけ」
その言葉に、あたしは固まる。
「――白山?」
あたしを見やる部長の顔が見られない。
――……そんな事、初めて言われた……。
いつだって、甘えさせる方で。
あたしは――……。
「――……バカ、何、泣いてんだ」
「……だって……」
こぼれてきた涙は、どうしてか、止まらない。
部長は、困ったように、そんなあたしを歩道の端に連れて行くと、ちょっとためらいがちに、抱き寄せて頭を撫でたのだった。
少し前を歩く部長を見上げ、あたしは、早くも後悔しそうになった。
駅方面へ向かう途中、すれ違う女性、ほぼほぼ、部長をチラ見していくのだ。
そして、次には、あたしの方を見て、ちょっとだけ眉を寄せて過ぎ去って行く。
――それくらい、隣にいるのが、不自然なんだろう。
「――白山?」
「え?」
すると、部長があたしをのぞき込んできたので、思わず後ずさる。
「……何やってんだ、お前は」
「――……身の程をわきまえているだけです」
その返しに、キョトンとし、部長は前を向いた。
「……何で、そう、自分を卑下する?」
「――え」
不意打ちの質問に、あたしは言葉に詰まった。
「……別に……」
かろうじて、それだけ返すと、うつむく。
――卑下とかじゃない。
ちゃんと、現実を見ているだけ。
徐々に、駅前の商業施設や、ビルの明かり、飲み屋街のざわめきに囲まれるが、あたしは、顔を上げられない。
――……これから、どうすれば良いんだろう。
部長とルームシェアとか言っても、いつまでもいられる訳じゃあない。
早目に出て行けるように、部屋を探さないといけない。
「おい、白山」
「え?」
そんな事を考えていると、部長があたしを振り返り言った。
「着替えとか、荷物、どこかに預けてるのか?友達の部屋に置きっぱなしか?」
「え、あ」
そう言えば――目ぼしいものは持って来たけど、服とかは、まだ、舞子の部屋だ。
でも、この時間で取りに行く訳にも――。
すると、部長は、あっさりと提案した。
「――友達の部屋なら、車出すぞ」
「え」
あたしは、目を丸くする。
その反応が気に入らなかったのか、部長は眉を寄せた。
「免許くらいある」
「い、いや、そうじゃなくて……車、あるんですか」
「こっちに引っ越した時、買った」
ちょっと、コンビニで買い物してきた、なんて聞こえるような言い方に、あたしは固まる。
「別に、中古車だぞ。そんなに使わないだろうが――こっちは、無いと困るからな」
その言葉に、思わずうなづいてしまう。
この辺は、電車がたくさん通っているし、バスも頻繁にある。
けれど、ちょっと離れると、車でしか動けない場所が多々あるのだ。
部長の地元がこちらというのは、どうやら本当のようだ。
「じゃあ、一旦、マンションに行って待ってろ。鍵持ってくる」
「――いえ、そこまでお世話になるつもりはありません。自分で何とかします」
「あのな、そこは甘えておけ」
その言葉に、あたしは固まる。
「――白山?」
あたしを見やる部長の顔が見られない。
――……そんな事、初めて言われた……。
いつだって、甘えさせる方で。
あたしは――……。
「――……バカ、何、泣いてんだ」
「……だって……」
こぼれてきた涙は、どうしてか、止まらない。
部長は、困ったように、そんなあたしを歩道の端に連れて行くと、ちょっとためらいがちに、抱き寄せて頭を撫でたのだった。