EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
そのまま、二人で、部長のマンションに向かう。
だが、さっきの今で、関係性が一変したという訳でもなく。
あたしは、部長の後ろをバッグを抱えながら、おずおずと、無言のままついて行った。
そして、先日、圧倒された建物の前に到着すると、あたしは自然と顔を上げた。
てっぺんがどこにあるのかも見えないような、高層のマンション。
「何やっている、さっさと来い」
「あ、ハ、ハイ」
正門前で足を止めたあたしを振り返り、部長が眉を寄せて言った。
「一応、ロビーの脇に警備員が常駐している部屋があるが、基本は無人だ。何かあったら、管理会社にメールで伝えるようになっている」
「……ハ、ハア……」
「あと、一応、顔認証になっているから、後で白山の分も登録してもらわないとだからな」
「…………」
もう、言葉を出す気力も無い。
自分とは、まったく縁の無いような話に、目を白黒してしまう。
入り口のドアを通ると、ロビーがあり、片隅にはソファ一式が置かれ、自動販売機も二台あった。
その反対側には、警備員室、と、書かれたプレートがあり、部長はそこに向かって行った。
たぶん、あたしの分の手続きでもあるんだろう。
あたしは、更に、ロビーを見回す。
上質な空間に、自分だけが浮いたような感覚。
――……本当に、ここに住んで良いの……?
場違いな空気に、怯んでしまう。
「白山、行くぞ」
「あ、ハ、ハイ」
不意に声をかけられ、肩を上げた。
部長は、気にも留めずに、スタスタとエレベーターのボタンを押す。
すぐに到着し、二人だけで乗り込むと、妙な緊張感。
真っ直ぐ前を見ている部長を見上げ、あたしは、視線を落とした。
――お試し、とはいえ、この人と恋人なんだ。
そう思うと、気後れしてしまう。
さっそく、自分の選択を後悔しそうになったが、その前にエレベーターが到着した。
「着いたぞ」
あたしは、その声に顔を上げる。
階数表示は、最上階――二十五階だった。
――高層マンション、最上階って……⁉
家賃を考え、クラクラしそうになる。
「ここには、オレしか住んでいないから、気を遣わなくても大丈夫だ」
「――え」
前を歩く部長の言葉に、あたしは、固まった。
「最上階までの三階分は、一世帯のみだ。他も多くても三世帯。広さは十分だから、物が多くても大丈夫だからな」
「え、いえ、あの……」
そんな部屋を、月五万でシェアって……正気か、アンタ。
部長は、何事もないようなそぶりで、あたしを振り返る。
「一応、水回りと、家具家電は共用で平気か?」
「あ、そ、それは……まあ……」
平気じゃなかったら、買い揃えるとか言わないでよね⁉
うなづくあたしを見やると、部長は廊下を進んで真ん中ほどにあったドアを、カードキーで開ける。
一瞬の電子音。それからすぐに、カチャリ、と、開錠の音が、静かすぎるこの場に、妙に大きく響き渡った。
「時間も時間だし、サッと説明しておく」
まるで、仕事の説明をするかのような口ぶりで、部長はあたしを部屋に入れると、すぐさま中を案内し始めた。
だが、さっきの今で、関係性が一変したという訳でもなく。
あたしは、部長の後ろをバッグを抱えながら、おずおずと、無言のままついて行った。
そして、先日、圧倒された建物の前に到着すると、あたしは自然と顔を上げた。
てっぺんがどこにあるのかも見えないような、高層のマンション。
「何やっている、さっさと来い」
「あ、ハ、ハイ」
正門前で足を止めたあたしを振り返り、部長が眉を寄せて言った。
「一応、ロビーの脇に警備員が常駐している部屋があるが、基本は無人だ。何かあったら、管理会社にメールで伝えるようになっている」
「……ハ、ハア……」
「あと、一応、顔認証になっているから、後で白山の分も登録してもらわないとだからな」
「…………」
もう、言葉を出す気力も無い。
自分とは、まったく縁の無いような話に、目を白黒してしまう。
入り口のドアを通ると、ロビーがあり、片隅にはソファ一式が置かれ、自動販売機も二台あった。
その反対側には、警備員室、と、書かれたプレートがあり、部長はそこに向かって行った。
たぶん、あたしの分の手続きでもあるんだろう。
あたしは、更に、ロビーを見回す。
上質な空間に、自分だけが浮いたような感覚。
――……本当に、ここに住んで良いの……?
場違いな空気に、怯んでしまう。
「白山、行くぞ」
「あ、ハ、ハイ」
不意に声をかけられ、肩を上げた。
部長は、気にも留めずに、スタスタとエレベーターのボタンを押す。
すぐに到着し、二人だけで乗り込むと、妙な緊張感。
真っ直ぐ前を見ている部長を見上げ、あたしは、視線を落とした。
――お試し、とはいえ、この人と恋人なんだ。
そう思うと、気後れしてしまう。
さっそく、自分の選択を後悔しそうになったが、その前にエレベーターが到着した。
「着いたぞ」
あたしは、その声に顔を上げる。
階数表示は、最上階――二十五階だった。
――高層マンション、最上階って……⁉
家賃を考え、クラクラしそうになる。
「ここには、オレしか住んでいないから、気を遣わなくても大丈夫だ」
「――え」
前を歩く部長の言葉に、あたしは、固まった。
「最上階までの三階分は、一世帯のみだ。他も多くても三世帯。広さは十分だから、物が多くても大丈夫だからな」
「え、いえ、あの……」
そんな部屋を、月五万でシェアって……正気か、アンタ。
部長は、何事もないようなそぶりで、あたしを振り返る。
「一応、水回りと、家具家電は共用で平気か?」
「あ、そ、それは……まあ……」
平気じゃなかったら、買い揃えるとか言わないでよね⁉
うなづくあたしを見やると、部長は廊下を進んで真ん中ほどにあったドアを、カードキーで開ける。
一瞬の電子音。それからすぐに、カチャリ、と、開錠の音が、静かすぎるこの場に、妙に大きく響き渡った。
「時間も時間だし、サッと説明しておく」
まるで、仕事の説明をするかのような口ぶりで、部長はあたしを部屋に入れると、すぐさま中を案内し始めた。