EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
ひとまず、昨日の今日で冷静に別れ話ができるとも思えないので、今月分の家賃はあきらめて払う事にする。
「でもさ、早いトコ、向こうに出て行ってもらわないと。アンタも、あの部屋に住み続けるつもりは無いんでしょ」
「……うん。……でも……納得しないと思う……」
二人で住むために借りた部屋は、家賃十二万。
手取りが平均的な会社員のあたしには、少しキツかったが、駅や繁華街が近い方が良いと言ったアイツに勧められるまま、契約してしまった。
「そこは、無理矢理でも追い出しなさいよ。……ホント、ダメ男に引っかかるっていうか――アンタが、ダメ男製造機よねぇ……」
「舞子、言い方!」
「反論する気?」
「……それは……」
できません、と、あたしは頭を下げる。
過去の遍歴を思い出し、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべてしまった。
一人目、就職してすぐに、数合わせで行った合コンで出会った男と気が合って付き合った。
初カレで浮かれていたあたしは、何でも許したし、何でもしてあげたけれど、だんだんデートする事も無くなり、ただ、彼の身の回りの世話をしているだけになっていった。
そして、短期間に何度も二股をかけられ――最後には、母親みたいだと言われ、振られたのだ。
二人目、振られて二か月ほどで、街でナンパされた。
失恋のショックとさみしさに負け、付き合ったはいいが――デートの行き先は、いつも競馬や競輪場、パチンコ屋だった。
初めてのデートの時に、趣味でできる範囲で楽しんでいるだけだから、あたしにも知ってもらいたい、と、一緒に連れて行かれた。
あたしも、最初は、違う世界を見て新鮮に思えて、話を合わせていたが――だんだん、ギャンブルに費やすためにお金を貸せと言われるようになり、でも、必ず返すと言われ、ズルズルと二年。
それとなく、やめるように言ってみても、耳も貸してくれない。
それでも放っておけなくて、部屋の掃除や洗濯――身の回りの世話をしながら、彼が正気になるのを信じて待っていたけれど、結局変わることはなく。
むしろ増長するばかりで、最後には、辛うじて食いつないでいたバイトすら辞めてしまった。
そして、どんどん、お金を渡すように言われて、いい加減別れようと話を向ければ、逆ギレされて。
怒鳴られるように言われたのは――”母親と同じ”。
逃げるように彼の元から去って、スマホの番号もアドレスもすべて変えたりと、いろいろあったが、ようやく解放された。
三人目もナンパ。今までよりもマシかと思いきゃ――今度は、女関係が壊滅的に緩かった。
あたしがいるところでも、他の女に声をかけたり、夜通し遊び倒したり。
けれど、それなりに大事にされていたと思えたのは――部屋の合い鍵を渡されていたから。
浮気相手と会っているだろう時にも、彼の部屋で、できる限りの事をして待っていた。
――それが、いけなかったんだろうか。
”お前、母親みたいなんだよね”。
浮気相手と寝ている最中に鉢合わせたあたしに、あっさりと言い放ち、追い出されたのだ。
そして、今度こそ、と、思ったマッチングアプリで出会った彼は――最初は誠実だったのだ。
――いや、本当に。
でも、会社でのパワハラがひどくて、憔悴している彼を見ていられなくなって――つい、辞めて、あたしと一緒に住めば、なんて言ってしまったのだ。
いずれ、結婚するつもりだったから、それでも良いと思っていたのに――……。
――結局、あたしは、女扱いすらされていなかった――。
「ハイハイ、もう、吐き出せ、吐き出せ」
頬に触れる舞子の手に、自分が泣いているのに気がついた。
「……好きだったのにー……」
舞子相手なら、何の気兼ねも無い。
あたしは、渡されたタオルに顔をうずめて、声を殺して泣き出した。
「何で……あたし、いつも、こんななんだろ……」
「……まあねぇ……アンタは、尽くしすぎなのよ。相手の男が、好き勝手やっても許されるって勘違いするくらいにさ」
「だって……好きだから、何でもしてあげたいし……とやかく言って、捨てられるのも嫌なんだもの」
「だからって、限度があるでしょ。大体にして、衣食住、全部面倒みてたら、そりゃあオカンと言われても仕方ないわ」
あたしは、言葉に詰まって黙り込む。
――涙は止まる事なく、流れ続けた。
「でもさ、早いトコ、向こうに出て行ってもらわないと。アンタも、あの部屋に住み続けるつもりは無いんでしょ」
「……うん。……でも……納得しないと思う……」
二人で住むために借りた部屋は、家賃十二万。
手取りが平均的な会社員のあたしには、少しキツかったが、駅や繁華街が近い方が良いと言ったアイツに勧められるまま、契約してしまった。
「そこは、無理矢理でも追い出しなさいよ。……ホント、ダメ男に引っかかるっていうか――アンタが、ダメ男製造機よねぇ……」
「舞子、言い方!」
「反論する気?」
「……それは……」
できません、と、あたしは頭を下げる。
過去の遍歴を思い出し、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべてしまった。
一人目、就職してすぐに、数合わせで行った合コンで出会った男と気が合って付き合った。
初カレで浮かれていたあたしは、何でも許したし、何でもしてあげたけれど、だんだんデートする事も無くなり、ただ、彼の身の回りの世話をしているだけになっていった。
そして、短期間に何度も二股をかけられ――最後には、母親みたいだと言われ、振られたのだ。
二人目、振られて二か月ほどで、街でナンパされた。
失恋のショックとさみしさに負け、付き合ったはいいが――デートの行き先は、いつも競馬や競輪場、パチンコ屋だった。
初めてのデートの時に、趣味でできる範囲で楽しんでいるだけだから、あたしにも知ってもらいたい、と、一緒に連れて行かれた。
あたしも、最初は、違う世界を見て新鮮に思えて、話を合わせていたが――だんだん、ギャンブルに費やすためにお金を貸せと言われるようになり、でも、必ず返すと言われ、ズルズルと二年。
それとなく、やめるように言ってみても、耳も貸してくれない。
それでも放っておけなくて、部屋の掃除や洗濯――身の回りの世話をしながら、彼が正気になるのを信じて待っていたけれど、結局変わることはなく。
むしろ増長するばかりで、最後には、辛うじて食いつないでいたバイトすら辞めてしまった。
そして、どんどん、お金を渡すように言われて、いい加減別れようと話を向ければ、逆ギレされて。
怒鳴られるように言われたのは――”母親と同じ”。
逃げるように彼の元から去って、スマホの番号もアドレスもすべて変えたりと、いろいろあったが、ようやく解放された。
三人目もナンパ。今までよりもマシかと思いきゃ――今度は、女関係が壊滅的に緩かった。
あたしがいるところでも、他の女に声をかけたり、夜通し遊び倒したり。
けれど、それなりに大事にされていたと思えたのは――部屋の合い鍵を渡されていたから。
浮気相手と会っているだろう時にも、彼の部屋で、できる限りの事をして待っていた。
――それが、いけなかったんだろうか。
”お前、母親みたいなんだよね”。
浮気相手と寝ている最中に鉢合わせたあたしに、あっさりと言い放ち、追い出されたのだ。
そして、今度こそ、と、思ったマッチングアプリで出会った彼は――最初は誠実だったのだ。
――いや、本当に。
でも、会社でのパワハラがひどくて、憔悴している彼を見ていられなくなって――つい、辞めて、あたしと一緒に住めば、なんて言ってしまったのだ。
いずれ、結婚するつもりだったから、それでも良いと思っていたのに――……。
――結局、あたしは、女扱いすらされていなかった――。
「ハイハイ、もう、吐き出せ、吐き出せ」
頬に触れる舞子の手に、自分が泣いているのに気がついた。
「……好きだったのにー……」
舞子相手なら、何の気兼ねも無い。
あたしは、渡されたタオルに顔をうずめて、声を殺して泣き出した。
「何で……あたし、いつも、こんななんだろ……」
「……まあねぇ……アンタは、尽くしすぎなのよ。相手の男が、好き勝手やっても許されるって勘違いするくらいにさ」
「だって……好きだから、何でもしてあげたいし……とやかく言って、捨てられるのも嫌なんだもの」
「だからって、限度があるでしょ。大体にして、衣食住、全部面倒みてたら、そりゃあオカンと言われても仕方ないわ」
あたしは、言葉に詰まって黙り込む。
――涙は止まる事なく、流れ続けた。