EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「ただいま、美里!」
数十分後、バタバタとドアを開けながら入って来た舞子は、荷物をまとめているあたしと、座ってスマホをいじっている秋成さんを交互に見やり、眉を寄せた。
「……ちょっと、アキ、何してんの」
「いや、舞子の顔見に来たら、先に美里ちゃんがいてさ。引っ越すから荷物取りに来たって」
「は?」
「で、夕飯も作ってくれたから、舞子が帰ってきたら、みんなで一緒に食べようっておれが誘ったんだ」
「……いや、作ったの、美里でしょうが。何で、アンタがデカイ顔で言うのよ。デカイのは、図体だけにしておきなさいよ」
そう言って、舞子は秋成さんを見やる。
「図体デカイのは、おれのせいじゃないし」
「うるさいわね」
こんな会話だが、二人が親密な雰囲気なので、ケンカしているようには思えない。
「でも、まあ、そういう事だから。ご飯食べちゃおうよ」
あたしは、苦笑いしながら舞子に言うと、渋々うなづかれた。
そして、三人で他愛ない話――主に舞子のグチを聞きながら、食事を終えると、あたしは立ち上がる。
「じゃあ、バスの時間もあるし、行くわね」
言いながら、部屋の隅に固めておいた荷造り済みの大きなバッグ三つを、どう抱えようかと試行錯誤する。
「ちょっと、美里、待ちなさいよ。事情を説明しなさい、事情を」
あたしは一瞬固まるが、舞子には逆らえない、と、口を開こうとした瞬間、バッグの中に入れていたスマホが鳴り出した。
「着信じゃないの?」
「……みたい」
寿和だったら、どうしよう。
――もう、番号はブロックしたけれど、自分の電話番号は変えていないのだ。
恐る恐る取り出すと、見覚えのない携帯番号。
「――出ない方が良くない?」
「……でも、寿和だったら、また、ブロックしないとだし……」
あたしは、震える指でスマホの画面をタップして、耳元にあてる。
「――……も、もしもし……」
『――今、どこだ。美里』
その、聞き慣れてしまった低い声に、思わず肩をすくめる。
もう条件反射だ。
「――……ぶ、部長」
『プライベートだ』
「……あ、あさ、ひ、さん……」
あたしが、噛みながらも名前を呼ぶと、部長は少しだけ柔らかい口調で続けた。
『今、マンションに着いたが、お前がいないから、また元カレが何かしたのかと思ったんだが――大丈夫なのか』
「すみません。今、舞子の部屋に荷物を取りに来てました」
『はぁ⁉お前、オレが連れて行くって言っただろうが』
「でも、部長、お忙しいでしょうし」
そう返せば、数秒の沈黙。
そして、更に低い声で、部長は言った。
『――住所、教えろ。迎えに行く』
「……え、あ、あの、大丈夫です。これから帰りますから」
『部長命令だ!』
思わず心の中で、横暴、と、叫んでしまったが、口には出さず、あたしは、渋々うなづく。
――たぶん、心配されているんだろうと思うから。
不機嫌そうな口調で、住所を確認され、あたしは舞子の部屋にもう数十分、お世話になる事にした。
数十分後、バタバタとドアを開けながら入って来た舞子は、荷物をまとめているあたしと、座ってスマホをいじっている秋成さんを交互に見やり、眉を寄せた。
「……ちょっと、アキ、何してんの」
「いや、舞子の顔見に来たら、先に美里ちゃんがいてさ。引っ越すから荷物取りに来たって」
「は?」
「で、夕飯も作ってくれたから、舞子が帰ってきたら、みんなで一緒に食べようっておれが誘ったんだ」
「……いや、作ったの、美里でしょうが。何で、アンタがデカイ顔で言うのよ。デカイのは、図体だけにしておきなさいよ」
そう言って、舞子は秋成さんを見やる。
「図体デカイのは、おれのせいじゃないし」
「うるさいわね」
こんな会話だが、二人が親密な雰囲気なので、ケンカしているようには思えない。
「でも、まあ、そういう事だから。ご飯食べちゃおうよ」
あたしは、苦笑いしながら舞子に言うと、渋々うなづかれた。
そして、三人で他愛ない話――主に舞子のグチを聞きながら、食事を終えると、あたしは立ち上がる。
「じゃあ、バスの時間もあるし、行くわね」
言いながら、部屋の隅に固めておいた荷造り済みの大きなバッグ三つを、どう抱えようかと試行錯誤する。
「ちょっと、美里、待ちなさいよ。事情を説明しなさい、事情を」
あたしは一瞬固まるが、舞子には逆らえない、と、口を開こうとした瞬間、バッグの中に入れていたスマホが鳴り出した。
「着信じゃないの?」
「……みたい」
寿和だったら、どうしよう。
――もう、番号はブロックしたけれど、自分の電話番号は変えていないのだ。
恐る恐る取り出すと、見覚えのない携帯番号。
「――出ない方が良くない?」
「……でも、寿和だったら、また、ブロックしないとだし……」
あたしは、震える指でスマホの画面をタップして、耳元にあてる。
「――……も、もしもし……」
『――今、どこだ。美里』
その、聞き慣れてしまった低い声に、思わず肩をすくめる。
もう条件反射だ。
「――……ぶ、部長」
『プライベートだ』
「……あ、あさ、ひ、さん……」
あたしが、噛みながらも名前を呼ぶと、部長は少しだけ柔らかい口調で続けた。
『今、マンションに着いたが、お前がいないから、また元カレが何かしたのかと思ったんだが――大丈夫なのか』
「すみません。今、舞子の部屋に荷物を取りに来てました」
『はぁ⁉お前、オレが連れて行くって言っただろうが』
「でも、部長、お忙しいでしょうし」
そう返せば、数秒の沈黙。
そして、更に低い声で、部長は言った。
『――住所、教えろ。迎えに行く』
「……え、あ、あの、大丈夫です。これから帰りますから」
『部長命令だ!』
思わず心の中で、横暴、と、叫んでしまったが、口には出さず、あたしは、渋々うなづく。
――たぶん、心配されているんだろうと思うから。
不機嫌そうな口調で、住所を確認され、あたしは舞子の部屋にもう数十分、お世話になる事にした。