EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
その、思わぬ反応に、あたしもつられて固まってしまう。
「――え」
「――……うるさいっ……!」
真っ赤な顔で返されるけれど――それは、まるで、肯定しているみたいで――。
「別に、そういう訳じゃあない」
けれど、部長はふてくされたように否定をする。
「……顔真っ赤なのに」
「だから違う」
「……説得力、ありませんけど」
「違うと言ってるっ……!」
何だか、お互い意地になってきた気がするけれど、今は絶対に、あたしに分がある。
「――じゃあ、ヤキモチだって認めたら、名前で呼んであげますよ?」
そう思い、あたしは、ニヤリと笑って提案する。
何だか主導権を握ったようで、気分が良いわ。
そんな風に機嫌を良くするあたしを、部長は更に真っ赤になって、眉を寄せたまま引き寄せた。
「あんまり、調子に乗るなよ――美里」
「え」
言葉の意味を考える前に、唇に柔らかい感触。
視界に入るのは――目を伏せ、あたしに口づける部長の顔。
「――……っ……‼⁉」
ようやく、自分がキスをされたのだとわかり、思わず身をよじるが、びくともしない。
――……うそ、何、コレ。
浮かれた頭は一気にパニックだ。
酸素が脳に回ってこない。
クラクラする。
分厚い舌に、呼吸まで絡め取られていく。
かろうじて部長のスーツを握り締めようとすると、その手は大きく骨ばった手に包まれた。
「――はぁ……っ……」
ようやく解放され、ぼやけた視界に入った部長は、少しだけ拗ねたように――でも、機嫌は良さそうに耳元で囁いた。
「――で、誰が、何だって?」
「――……あっ……ん……!」
けれど、言葉が全部届く前に、快感が全身を駆け巡る。
思わず出てしまった声に、慌てて口をふさいだ。
恐る恐る見上げると、部長はニヤリと口元を上げ、お返しのように言う。
「――お前、オレの声に弱いよな」
「バッ……!!!!」
バカ言わないで‼
そう続けたかったけれど、部長はさっさとあたしを置き去りにして、部屋の鍵を開けて中に入った。
あたしも、どうにか呼吸を整えて後に続く。
暗い部屋が入口のスイッチで一気に明るくなり、あたしは思わず目を細めるが、部長は振り返る事なく言った。
「――……ひとまず、荷物はお前の部屋に置いておく。あと、ベッドの希望があれば、ネットで頼んでおくが」
「いえ!大丈夫です‼」
条件反射のように首を振る。
今までの切羽詰まった暮らしのせいで、何かを買う、という行為に、恐怖さえ覚えてしまうのだ。
「……そこは遠慮するところじゃないだろ。週末にでも、どこかへ出て、買っておこうか」
「大丈夫ですってば!……別に、床でもソファでも平気なんで」
「……おい、コラ」
「え?」
部長は、つかつかとあたしの前まで来ると、両手で頬を包み、そのまま持ち上げた。
「――お前な、少しは、頼るという事を覚えろ」
「でも、本当に大丈夫で……」
無意識に視線が下がる。
けれど、部長は、そうはさせまいと、更にあたしの頬を上げた。
「少なくとも、お前に頼られて、オレは悪い気はしない」
「え」
「――恋人、だろうが」
「――……え、ええ、まあ……」
お試し、という言葉はつくけれどね。
そんな思いがよぎっていくが、部長はお構いなしだ。
「――……あと、一つ、言っておくが……オレは、どうでもいい女に、恋人関係の提案などしない」
「……へ?」
キョトンと返すあたしに、部長は苦笑いだ。
「――……意地っ張りな女は、嫌いじゃないって事だ」
「――……へ??」
それだけ言うと、部長はあたしの部屋にバッグを置くと、そのまま自分の部屋に入って行った。
……どういう……コト……??
あたしの頭の許容量を超えた数々に、しばらく、硬直するしかなかった。
「――え」
「――……うるさいっ……!」
真っ赤な顔で返されるけれど――それは、まるで、肯定しているみたいで――。
「別に、そういう訳じゃあない」
けれど、部長はふてくされたように否定をする。
「……顔真っ赤なのに」
「だから違う」
「……説得力、ありませんけど」
「違うと言ってるっ……!」
何だか、お互い意地になってきた気がするけれど、今は絶対に、あたしに分がある。
「――じゃあ、ヤキモチだって認めたら、名前で呼んであげますよ?」
そう思い、あたしは、ニヤリと笑って提案する。
何だか主導権を握ったようで、気分が良いわ。
そんな風に機嫌を良くするあたしを、部長は更に真っ赤になって、眉を寄せたまま引き寄せた。
「あんまり、調子に乗るなよ――美里」
「え」
言葉の意味を考える前に、唇に柔らかい感触。
視界に入るのは――目を伏せ、あたしに口づける部長の顔。
「――……っ……‼⁉」
ようやく、自分がキスをされたのだとわかり、思わず身をよじるが、びくともしない。
――……うそ、何、コレ。
浮かれた頭は一気にパニックだ。
酸素が脳に回ってこない。
クラクラする。
分厚い舌に、呼吸まで絡め取られていく。
かろうじて部長のスーツを握り締めようとすると、その手は大きく骨ばった手に包まれた。
「――はぁ……っ……」
ようやく解放され、ぼやけた視界に入った部長は、少しだけ拗ねたように――でも、機嫌は良さそうに耳元で囁いた。
「――で、誰が、何だって?」
「――……あっ……ん……!」
けれど、言葉が全部届く前に、快感が全身を駆け巡る。
思わず出てしまった声に、慌てて口をふさいだ。
恐る恐る見上げると、部長はニヤリと口元を上げ、お返しのように言う。
「――お前、オレの声に弱いよな」
「バッ……!!!!」
バカ言わないで‼
そう続けたかったけれど、部長はさっさとあたしを置き去りにして、部屋の鍵を開けて中に入った。
あたしも、どうにか呼吸を整えて後に続く。
暗い部屋が入口のスイッチで一気に明るくなり、あたしは思わず目を細めるが、部長は振り返る事なく言った。
「――……ひとまず、荷物はお前の部屋に置いておく。あと、ベッドの希望があれば、ネットで頼んでおくが」
「いえ!大丈夫です‼」
条件反射のように首を振る。
今までの切羽詰まった暮らしのせいで、何かを買う、という行為に、恐怖さえ覚えてしまうのだ。
「……そこは遠慮するところじゃないだろ。週末にでも、どこかへ出て、買っておこうか」
「大丈夫ですってば!……別に、床でもソファでも平気なんで」
「……おい、コラ」
「え?」
部長は、つかつかとあたしの前まで来ると、両手で頬を包み、そのまま持ち上げた。
「――お前な、少しは、頼るという事を覚えろ」
「でも、本当に大丈夫で……」
無意識に視線が下がる。
けれど、部長は、そうはさせまいと、更にあたしの頬を上げた。
「少なくとも、お前に頼られて、オレは悪い気はしない」
「え」
「――恋人、だろうが」
「――……え、ええ、まあ……」
お試し、という言葉はつくけれどね。
そんな思いがよぎっていくが、部長はお構いなしだ。
「――……あと、一つ、言っておくが……オレは、どうでもいい女に、恋人関係の提案などしない」
「……へ?」
キョトンと返すあたしに、部長は苦笑いだ。
「――……意地っ張りな女は、嫌いじゃないって事だ」
「――……へ??」
それだけ言うと、部長はあたしの部屋にバッグを置くと、そのまま自分の部屋に入って行った。
……どういう……コト……??
あたしの頭の許容量を超えた数々に、しばらく、硬直するしかなかった。