EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「申し訳ございません!彼女は、僕が遅刻させてしまったんです‼」
「――どういう事でしょうか」
あたしが、遅刻して始末書を提出するという事を聞いて、その彼――高根さんは、真っ青な顔で部長に突撃して行った。
部長は、ポーカーフェイスで、話を聞く姿勢に入る。
そこで、高根さんは、今朝の経緯を詳しく説明してくれた。
「ですから、彼女に非は、まったくありませんので」
「――わかりました。ご説明、ありがとうございます」
部長は立ち上がり、軽く頭を下げた。
高根さんは恐縮しながらも、あたしを見やり、ニコリと笑う。
やっぱり、幼い印象はぬぐえない。
「で、では、企画の打ち合わせがあるので――失礼します」
そう言って、高根さんは部長に頭を下げると、あたしのところにやって来た。
「あなたが、白山さんだったんですね」
「――驚きました。すごい、偶然ですね」
お互い、苦笑いしながら、総務部を出る。
同じ階の奥に、二つ小さな会議室があり、業者との打ち合わせに利用されるのだ。
あたしは、手前の部屋の鍵を開けると、高根さんを中に入れた。
「先に座っていてください。今、お茶を――」
「あ、いえ、大丈夫です」
「じゃあ、コーヒーにしましょうか?」
クスリと笑いながら、高根さんに尋ねる。
すると、真っ赤になってうつむいた彼は、ハイ、と、消え入るような声で答えた。
――ああ、ちょっと意地悪だった?
何か取っ掛かりを作りたかっただけなのに、逆に委縮させてしまったようだ。
待合室で言っていた、大口、とは、ウチの事だったのだ。
つまり、気合いが入っていたのは――あたしとの打ち合わせという事。
それだけで、何だか、こちらも気合いを入れたくなる。
あたしとの仕事に、それだけの熱量を持ってくれるのは、素直にうれしいと思えた。
ソファに座った高根さんを見やり、あたしは一旦総務部に戻る。
そして、お茶コーナーと呼ばれる、飲み物を用意する場所に行き、二人分のコーヒーを、コーヒーメーカーで入れながら、書類の準備をする。
「白山」
すると、部長に声をかけられ、あたしは顔を上げた。
書類をクリアケースに入れ、席に向かう。
「何でしょうか」
「――終了予定時間は」
「……一応、一時間ほどをみていますが」
「……そうか」
何か言いたげにしていたが、部長はそのままパソコンに視線を戻した。
あたしは、頭を下げると、クリアケースを脇に抱え、出来上がった二人分のコーヒーを持って部屋を出る。
そして、小会議室のドアを開けて、緊張のせいか、少し硬くなっている高根さんの前にコーヒーカップを置いた。
「――お待たせしました。どうぞ、楽になさってください」
「あ、ありがとうございます。……いただきます」
高根さんは、カップを持つと、口をつける前に顔を近づける。
どうやら、香りを確認しているようだ。
彼は、少しだけ息を吹きかけて一口飲むと、感心したように言った。
「……すごい。インスタントじゃないんですね」
「え、わかりますか」
「ハイ。僕、コーヒー割と好きで、自分でも淹れてるんで」
「そうでしたか。――総務部では、コーヒーメーカーを使っているので」
すると、彼は、驚いたように言った。
「やっぱり、大きいトコは違うんですねぇ。……ウチなんて、小さなベンチャーだから、経費削減って、お茶とか全部自前なんですよ」
そう言って笑う。
あたしも、苦笑いで返すと、書類をケースから取り出した。
「――どういう事でしょうか」
あたしが、遅刻して始末書を提出するという事を聞いて、その彼――高根さんは、真っ青な顔で部長に突撃して行った。
部長は、ポーカーフェイスで、話を聞く姿勢に入る。
そこで、高根さんは、今朝の経緯を詳しく説明してくれた。
「ですから、彼女に非は、まったくありませんので」
「――わかりました。ご説明、ありがとうございます」
部長は立ち上がり、軽く頭を下げた。
高根さんは恐縮しながらも、あたしを見やり、ニコリと笑う。
やっぱり、幼い印象はぬぐえない。
「で、では、企画の打ち合わせがあるので――失礼します」
そう言って、高根さんは部長に頭を下げると、あたしのところにやって来た。
「あなたが、白山さんだったんですね」
「――驚きました。すごい、偶然ですね」
お互い、苦笑いしながら、総務部を出る。
同じ階の奥に、二つ小さな会議室があり、業者との打ち合わせに利用されるのだ。
あたしは、手前の部屋の鍵を開けると、高根さんを中に入れた。
「先に座っていてください。今、お茶を――」
「あ、いえ、大丈夫です」
「じゃあ、コーヒーにしましょうか?」
クスリと笑いながら、高根さんに尋ねる。
すると、真っ赤になってうつむいた彼は、ハイ、と、消え入るような声で答えた。
――ああ、ちょっと意地悪だった?
何か取っ掛かりを作りたかっただけなのに、逆に委縮させてしまったようだ。
待合室で言っていた、大口、とは、ウチの事だったのだ。
つまり、気合いが入っていたのは――あたしとの打ち合わせという事。
それだけで、何だか、こちらも気合いを入れたくなる。
あたしとの仕事に、それだけの熱量を持ってくれるのは、素直にうれしいと思えた。
ソファに座った高根さんを見やり、あたしは一旦総務部に戻る。
そして、お茶コーナーと呼ばれる、飲み物を用意する場所に行き、二人分のコーヒーを、コーヒーメーカーで入れながら、書類の準備をする。
「白山」
すると、部長に声をかけられ、あたしは顔を上げた。
書類をクリアケースに入れ、席に向かう。
「何でしょうか」
「――終了予定時間は」
「……一応、一時間ほどをみていますが」
「……そうか」
何か言いたげにしていたが、部長はそのままパソコンに視線を戻した。
あたしは、頭を下げると、クリアケースを脇に抱え、出来上がった二人分のコーヒーを持って部屋を出る。
そして、小会議室のドアを開けて、緊張のせいか、少し硬くなっている高根さんの前にコーヒーカップを置いた。
「――お待たせしました。どうぞ、楽になさってください」
「あ、ありがとうございます。……いただきます」
高根さんは、カップを持つと、口をつける前に顔を近づける。
どうやら、香りを確認しているようだ。
彼は、少しだけ息を吹きかけて一口飲むと、感心したように言った。
「……すごい。インスタントじゃないんですね」
「え、わかりますか」
「ハイ。僕、コーヒー割と好きで、自分でも淹れてるんで」
「そうでしたか。――総務部では、コーヒーメーカーを使っているので」
すると、彼は、驚いたように言った。
「やっぱり、大きいトコは違うんですねぇ。……ウチなんて、小さなベンチャーだから、経費削減って、お茶とか全部自前なんですよ」
そう言って笑う。
あたしも、苦笑いで返すと、書類をケースから取り出した。