EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「――では、ひとまず、夏のバーベキュー大会をお任せいただけるという事でよろしいでしょうか」
仕事の話になれば、高根さんは、最初のイメージとはかけ離れた、やり手の印象だった。
とにかく、詳しく、こちらが尋ねたかった事を先回りして説明してくれる。
少し、新規の取引先という事で、構えていたのだけれど、拍子抜けするほどにできた人だった。
彼が言うには、費用面、場所、日程調整や予約関連、必要商材の調達まで任せて良いらしい。
あたし達は、ただ、場所に行って、バーベキューを楽しんで帰るだけで良いようだ。
「ウチは、一つの企画にかけるパワーが違うんで。全員で協力して全力で楽しんでもらう。これがウチの会社の理念ですから」
にこやかに高根さんは、そう言った。
きっと、自分の仕事を誇りに思っているのだろう。
――あたしは――そんな風に思えない。
……生きていくため。
それだけのための、仕事。
固まっているあたしに気づいた高根さんは、少しだけ眉を下げて微笑む。
「すみません、語っちゃいましたね。気にしないでください」
「あ、いえ、そんな」
高根さんは、慌てるあたしにかまわず、続けた。
「あと、先日送った優待関係の資料で、気になる箇所があれば」
「あ、ハイ」
あたしは、うなづいて返す。
自分の手元にある資料のふせんの箇所を開き、彼に尋ねた。
「――温泉施設やレジャー施設なんですが、優待券をこちらで預かるような形になりますか」
「ああ、それもあるんですが、今はQRコードでも大丈夫なところも多いので」
「やっぱり、みんな、そうなりますよね」
「ええ、時代ですから」
彼の話に、どんどん引き込まれる。
元々、人当たりの良い印象だったが、話し方が上手なんだろう。
打ち合わせが終わる頃には、かなり打ち解ける事ができていた。
会議室を出ると、高根さんはあたしに頭を下げた。
「本日はありがとうございました。他の企画も、前向きにご検討頂ければと思います」
「こちらこそ、ご足労いただきまして、ありがとうございました」
あたしも、同じように頭を下げる。
そして、顔を上げると、朝のような幼い笑顔を返してくれた。
「いえ、仕事ですし。――それより、今日は本当にすみませんでした」
一瞬、何の事かとキョトンとする。
だが、すぐにコーヒーの事だと思い出し、首を振った。
「気にしないでください。――ちょっと、気になってしまったんで。……お節介かとも思ったんですが、シミ、残ったら大変なんで」
「いえ、でも、すごいんですね。あんな風にできるなんて、知らなかったです」
あたしは、苦笑いで首を振った。
「――やり方さえ知っていれば、誰でもできます」
「とんでもない!それを、すぐにできるのが、すごいんですよ」
「――……え」
「普段から、されてるからなんでしょうね。当然のように言われますけど、僕は初めて聞いた事ばかりだったし――感動しました」
あたしは、思わずうつむいてしまう。
耳まで熱を持っている自覚がある。
――こんな風に褒められるのは、初めてだ。
「では、また、ご連絡しますね」
「え、あ、ハイ。よろしくお願いします」
再び、お互いに頭を下げ、高根さんは部屋を後にした。
仕事の話になれば、高根さんは、最初のイメージとはかけ離れた、やり手の印象だった。
とにかく、詳しく、こちらが尋ねたかった事を先回りして説明してくれる。
少し、新規の取引先という事で、構えていたのだけれど、拍子抜けするほどにできた人だった。
彼が言うには、費用面、場所、日程調整や予約関連、必要商材の調達まで任せて良いらしい。
あたし達は、ただ、場所に行って、バーベキューを楽しんで帰るだけで良いようだ。
「ウチは、一つの企画にかけるパワーが違うんで。全員で協力して全力で楽しんでもらう。これがウチの会社の理念ですから」
にこやかに高根さんは、そう言った。
きっと、自分の仕事を誇りに思っているのだろう。
――あたしは――そんな風に思えない。
……生きていくため。
それだけのための、仕事。
固まっているあたしに気づいた高根さんは、少しだけ眉を下げて微笑む。
「すみません、語っちゃいましたね。気にしないでください」
「あ、いえ、そんな」
高根さんは、慌てるあたしにかまわず、続けた。
「あと、先日送った優待関係の資料で、気になる箇所があれば」
「あ、ハイ」
あたしは、うなづいて返す。
自分の手元にある資料のふせんの箇所を開き、彼に尋ねた。
「――温泉施設やレジャー施設なんですが、優待券をこちらで預かるような形になりますか」
「ああ、それもあるんですが、今はQRコードでも大丈夫なところも多いので」
「やっぱり、みんな、そうなりますよね」
「ええ、時代ですから」
彼の話に、どんどん引き込まれる。
元々、人当たりの良い印象だったが、話し方が上手なんだろう。
打ち合わせが終わる頃には、かなり打ち解ける事ができていた。
会議室を出ると、高根さんはあたしに頭を下げた。
「本日はありがとうございました。他の企画も、前向きにご検討頂ければと思います」
「こちらこそ、ご足労いただきまして、ありがとうございました」
あたしも、同じように頭を下げる。
そして、顔を上げると、朝のような幼い笑顔を返してくれた。
「いえ、仕事ですし。――それより、今日は本当にすみませんでした」
一瞬、何の事かとキョトンとする。
だが、すぐにコーヒーの事だと思い出し、首を振った。
「気にしないでください。――ちょっと、気になってしまったんで。……お節介かとも思ったんですが、シミ、残ったら大変なんで」
「いえ、でも、すごいんですね。あんな風にできるなんて、知らなかったです」
あたしは、苦笑いで首を振った。
「――やり方さえ知っていれば、誰でもできます」
「とんでもない!それを、すぐにできるのが、すごいんですよ」
「――……え」
「普段から、されてるからなんでしょうね。当然のように言われますけど、僕は初めて聞いた事ばかりだったし――感動しました」
あたしは、思わずうつむいてしまう。
耳まで熱を持っている自覚がある。
――こんな風に褒められるのは、初めてだ。
「では、また、ご連絡しますね」
「え、あ、ハイ。よろしくお願いします」
再び、お互いに頭を下げ、高根さんは部屋を後にした。