EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
午後からは、週末が近いからか、ヘルプマークが増えていて、あたしは、できる限り手を貸す。
それで、今日の業務は終了だ。
あたしは、机の上を片付け、みんなの後に続いてロッカールームに向かおうとする。
けれど。
「――白山」
「……何でしょうか……」
部長に呼び止められ、渋々振り返る。
「ちょっと、来てくれ」
手招きされ、あたしは部長のところまで向かった。
もう、ほとんどの人間は部屋を後にしている。
「午前中の申請書だが、見積は取ったのか」
「え、あ、いえ」
「上に上げる前に、大体の金額を知りたい。先方にメールしておいてくれ」
「……承知しました」
あたしは、すぐに自分の席に戻り、パソコンを再び立ち上げメールを開く。
高根さん宛てに見積依頼のメールを送ると、再びシャットダウン。
「先方も終業の時間だと思いますので、明日、確認の電話を入れておきます」
そのまま部長の席を振り返り報告し、今度こそ部屋を後にしようと、席を立つ。
「――白山」
だが、再び呼び止められ、振り返ると、部長は気まずそうに周囲をうかがいながら、こちらに来るように視線向けてきた。
あたしは、眉を寄せる。
これ以上、何があるっていうのよ。
不満を隠そうともせず向かうと、部長が机の上をたたいたので、視線を落とせば、メモ書きがあった。
――帰りに、布団一式買いに行く。
あたしは、眉を寄せて部長を見やり、首を振った。
――だから、あたしが必要なのであって、アンタは関係ない。
だが、部長は、あたしを無視して帰り支度を始める。
部屋を見回せば、係長二人が何かを話し合っているだけ。女性社員は残っていない。
「――それじゃあ、お先に失礼します」
「ああ、ハイ。お疲れ様です」
課長二人の空気は和やかなので、もしかしたら、仕事ではなく、飲みに行く算段でもつけていたのだろうか。
あたしも同じように挨拶し、部屋を後にする。
そして、エレベーターに部長と乗り込み、ドアが閉まった途端、不機嫌そうな声が降ってきた。
「――美里、お前の布団だろうが」
「だから、あたしの使うものなんだから、あたしが買います。部長に買っていただくつもりはありませんので」
「別に構わんが」
「あたしが構います」
お互いに退かないまま、エレベーターが到着する。
「――なら、車出すぞ」
「大丈夫ですので」
あたしは、頭を下げ、ロッカールームに向かった。
部長はロッカーを使っていないので、そこで道は分かれる。
――何はともあれ、これ以上、部長に頼る訳にはいかないんだから。
あたしは、バッグを抱えると、急ぎ足でロッカールームを出た。
キョロキョロと辺りを確認するが、部長の姿は見えなかったので、あきらめたのだろう。
そして、会社を出ると、すぐに最寄り駅へと向かう。
ほんの少しだけ、寿和の気配におびえてしまうが、あれだけ言ったんだし――もう、来ないはず。
それでも、駅の中に入るまでは、完全には気を緩められない。
あたしは、交通系カードをタッチし、中に入ってすぐのホームに立つ。
数分で到着した電車に乗って十五分。
いつもの駅で降り立つと、大きく息を吐いた。
――うん、もう、大丈夫。
そう思った瞬間、肩が叩かれ――あたしは、硬直した。
それで、今日の業務は終了だ。
あたしは、机の上を片付け、みんなの後に続いてロッカールームに向かおうとする。
けれど。
「――白山」
「……何でしょうか……」
部長に呼び止められ、渋々振り返る。
「ちょっと、来てくれ」
手招きされ、あたしは部長のところまで向かった。
もう、ほとんどの人間は部屋を後にしている。
「午前中の申請書だが、見積は取ったのか」
「え、あ、いえ」
「上に上げる前に、大体の金額を知りたい。先方にメールしておいてくれ」
「……承知しました」
あたしは、すぐに自分の席に戻り、パソコンを再び立ち上げメールを開く。
高根さん宛てに見積依頼のメールを送ると、再びシャットダウン。
「先方も終業の時間だと思いますので、明日、確認の電話を入れておきます」
そのまま部長の席を振り返り報告し、今度こそ部屋を後にしようと、席を立つ。
「――白山」
だが、再び呼び止められ、振り返ると、部長は気まずそうに周囲をうかがいながら、こちらに来るように視線向けてきた。
あたしは、眉を寄せる。
これ以上、何があるっていうのよ。
不満を隠そうともせず向かうと、部長が机の上をたたいたので、視線を落とせば、メモ書きがあった。
――帰りに、布団一式買いに行く。
あたしは、眉を寄せて部長を見やり、首を振った。
――だから、あたしが必要なのであって、アンタは関係ない。
だが、部長は、あたしを無視して帰り支度を始める。
部屋を見回せば、係長二人が何かを話し合っているだけ。女性社員は残っていない。
「――それじゃあ、お先に失礼します」
「ああ、ハイ。お疲れ様です」
課長二人の空気は和やかなので、もしかしたら、仕事ではなく、飲みに行く算段でもつけていたのだろうか。
あたしも同じように挨拶し、部屋を後にする。
そして、エレベーターに部長と乗り込み、ドアが閉まった途端、不機嫌そうな声が降ってきた。
「――美里、お前の布団だろうが」
「だから、あたしの使うものなんだから、あたしが買います。部長に買っていただくつもりはありませんので」
「別に構わんが」
「あたしが構います」
お互いに退かないまま、エレベーターが到着する。
「――なら、車出すぞ」
「大丈夫ですので」
あたしは、頭を下げ、ロッカールームに向かった。
部長はロッカーを使っていないので、そこで道は分かれる。
――何はともあれ、これ以上、部長に頼る訳にはいかないんだから。
あたしは、バッグを抱えると、急ぎ足でロッカールームを出た。
キョロキョロと辺りを確認するが、部長の姿は見えなかったので、あきらめたのだろう。
そして、会社を出ると、すぐに最寄り駅へと向かう。
ほんの少しだけ、寿和の気配におびえてしまうが、あれだけ言ったんだし――もう、来ないはず。
それでも、駅の中に入るまでは、完全には気を緩められない。
あたしは、交通系カードをタッチし、中に入ってすぐのホームに立つ。
数分で到着した電車に乗って十五分。
いつもの駅で降り立つと、大きく息を吐いた。
――うん、もう、大丈夫。
そう思った瞬間、肩が叩かれ――あたしは、硬直した。