EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
階段を上がりきったところで、後ろから、グイ、と、力任せに腕を掴まれ、驚きで心臓が跳ね上がる。
あたしは、恐る恐る振り返り、固まった。
「――と、寿和」
「やっと捕まえた!美里、お前、いい加減に帰って来い!」
目の前の寿和は――以前よりもやつれていて、身なりもかなりヨレヨレになっていた。
初めて会った時の、上等なスーツで見目の良い姿を飾っていた、できる営業のような風体はもう、見る影もない。
……コイツ、一体、どういう生活していたのよ。
あたしが眉を寄せると、寿和は続けた。
「お前、オレを見捨てるのかよ!元は、お前のせいだろうが!」
「……は?」
「お前が、養っても良いとか言ったから、オレは仕事辞めたんだぞ!」
あんまりな筋違いの主張に、あたしは開いた口がふさがらない。
――あたしは、こんなバカなヤツと付き合っていたのか?
「……っ……あたしはっ……パワハラでつらい目に遭ってるって言ってたアンタが、ちゃんと、自分に合った仕事を見つけられるようになるまで、養うくらいできるわよ、って、そう言っただけよ!」
――あんな生活をさせるために、言った訳じゃない!
すると、寿和は吐き捨てるように言う。
「だったら、オレが仕事見つけるまで、責任持って養えよ」
「はあぁ⁉バカじゃないの⁉あの浮気相手に養ってもらえばいいでしょうが!」
「お前のせいで、ほたるちゃんには振られたんだぞ!」
「……は?」
もう、は?しか言えない。
そんなもの、あたしのせいにされてたまるか。
けれど、寿和は、すべてあたしのせいだと言わんばかりの口調で続けた。
「お前が家の事やらないから、ほたるちゃんは生活能力無いヤツとは付き合えないとか言ってよ。お前が金くれねぇから、どこにも行けねぇし」
――……ああ、もう、コレは重症だ。
まともな生活ができないから、自分がこうなった理由を、すべてをあたしに投げたんだ。
あたしは、唇を噛みしめる。
「このまま月末にアパート退去させられるなら、オレはどこに住めばいいんだよ」
「――実家に帰りなさいよ。そして、ご両親にでも泣きつけばいいじゃない」
「バカじゃねぇの!そんなコトできるかよ!」
「でも、アンタは、今、あたしに同じような事をしているわよね」
――完全に、親のように泣きつかれているあたしは、一体何なのよ。
そう言いたかったが、掴まれた腕に込められた力が強くなり、口をつぐむ。
「お前のせいだ。――お前のせいで、オレは来月にはホームレスだぞ」
「……っ……」
恨みがこもったそのワードに、あたしは、声を失った。
……あたしのせいで――コイツはホームレス……。
完全に別れたと思った男が――あたしが原因で……。
その事実に、心が揺らぐ。
それを、寿和は見逃さずに、懐柔するように畳みかけてきた。
「――……なあ、戻って来いよ。オレには、お前が必要なんだよ、美里。お前がいないと、生きていけない」
あたしは、息をのむ。
――……ダメだ。
また、同じ事の繰り返しになるのは、目に見えている。
――なのに――必要だと言われると、放っておけないって思ってしまうんだ。
あたしは、大きく息を吐くと、寿和を見やった。
「……部屋、片付けたら、帰るから――」
……それだけ。
そしたら、コイツも、少しは変わるかもしれない。
――すべてではないにしても、こうなった原因の一部は、あたしのせいなのは、事実なのだから――責任を取るだけだ。
あたしは、立ち止まっていた場所からUターンすると、上機嫌で後をついてくる寿和と、完全に出てきたと思った部屋に戻った。
あたしは、恐る恐る振り返り、固まった。
「――と、寿和」
「やっと捕まえた!美里、お前、いい加減に帰って来い!」
目の前の寿和は――以前よりもやつれていて、身なりもかなりヨレヨレになっていた。
初めて会った時の、上等なスーツで見目の良い姿を飾っていた、できる営業のような風体はもう、見る影もない。
……コイツ、一体、どういう生活していたのよ。
あたしが眉を寄せると、寿和は続けた。
「お前、オレを見捨てるのかよ!元は、お前のせいだろうが!」
「……は?」
「お前が、養っても良いとか言ったから、オレは仕事辞めたんだぞ!」
あんまりな筋違いの主張に、あたしは開いた口がふさがらない。
――あたしは、こんなバカなヤツと付き合っていたのか?
「……っ……あたしはっ……パワハラでつらい目に遭ってるって言ってたアンタが、ちゃんと、自分に合った仕事を見つけられるようになるまで、養うくらいできるわよ、って、そう言っただけよ!」
――あんな生活をさせるために、言った訳じゃない!
すると、寿和は吐き捨てるように言う。
「だったら、オレが仕事見つけるまで、責任持って養えよ」
「はあぁ⁉バカじゃないの⁉あの浮気相手に養ってもらえばいいでしょうが!」
「お前のせいで、ほたるちゃんには振られたんだぞ!」
「……は?」
もう、は?しか言えない。
そんなもの、あたしのせいにされてたまるか。
けれど、寿和は、すべてあたしのせいだと言わんばかりの口調で続けた。
「お前が家の事やらないから、ほたるちゃんは生活能力無いヤツとは付き合えないとか言ってよ。お前が金くれねぇから、どこにも行けねぇし」
――……ああ、もう、コレは重症だ。
まともな生活ができないから、自分がこうなった理由を、すべてをあたしに投げたんだ。
あたしは、唇を噛みしめる。
「このまま月末にアパート退去させられるなら、オレはどこに住めばいいんだよ」
「――実家に帰りなさいよ。そして、ご両親にでも泣きつけばいいじゃない」
「バカじゃねぇの!そんなコトできるかよ!」
「でも、アンタは、今、あたしに同じような事をしているわよね」
――完全に、親のように泣きつかれているあたしは、一体何なのよ。
そう言いたかったが、掴まれた腕に込められた力が強くなり、口をつぐむ。
「お前のせいだ。――お前のせいで、オレは来月にはホームレスだぞ」
「……っ……」
恨みがこもったそのワードに、あたしは、声を失った。
……あたしのせいで――コイツはホームレス……。
完全に別れたと思った男が――あたしが原因で……。
その事実に、心が揺らぐ。
それを、寿和は見逃さずに、懐柔するように畳みかけてきた。
「――……なあ、戻って来いよ。オレには、お前が必要なんだよ、美里。お前がいないと、生きていけない」
あたしは、息をのむ。
――……ダメだ。
また、同じ事の繰り返しになるのは、目に見えている。
――なのに――必要だと言われると、放っておけないって思ってしまうんだ。
あたしは、大きく息を吐くと、寿和を見やった。
「……部屋、片付けたら、帰るから――」
……それだけ。
そしたら、コイツも、少しは変わるかもしれない。
――すべてではないにしても、こうなった原因の一部は、あたしのせいなのは、事実なのだから――責任を取るだけだ。
あたしは、立ち止まっていた場所からUターンすると、上機嫌で後をついてくる寿和と、完全に出てきたと思った部屋に戻った。