EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
手元のビールのグラスを眺めながら、いつ帰ろうかと考えていると、
「白山さん、何か飲み物頼みますか?」
「え?」
不意に声をかけられ、顔を上げた。
「あ、いえ、大丈夫です。――元々、数合わせなんで、頃合い見計らって帰るつもりですから」
「え、あ、でも、せっかくですし……」
口ごもりながら言う高根さんは、お酒に弱いのか、もう顔が赤い。
彼のグラスを見ると、半分以上消えている。
どうやらビールのようだが――ソフトドリンクに変えた方が良いんだろう。
「それより、高根さんこそ、何か頼みますか?何なら、ジンジャーエールとかありますし」
「え?」
キョトンと返され、あたしもキョトンとする。
「ああ、大丈夫ですよ。こう見えて、僕、結構アルコール強いですから」
「でも、顔赤いですし……なら、調子良くないんじゃ……」
下手すると、急性アル中になる可能性だってあるんだから。
他の人間が盛り上がっている中、あたしと高根さんは、テーブルの隅でお互いに見合う。
「――……気にしないでください。……えっと……まあ、顔に出やすいタチなんで」
「そうですか?でも、怪しかったら、すぐに言ってくださいね」
「あ、ありがとうございます」
高根さんは、そう言いながら、グラスを傾けた。
あたしもグラスを空けて、食事を進める。
二杯目からはジンジャーエールにして、あらかた料理が消えたところで、皿を寄せたり、店員さんに声をかけて片付けてもらったりした。
「あらぁー、白山さん、ありがとぉー!気が利くわねぇ!」
男性と盛り上がっていた小坂主任に大きな声で言われ、あたしはビクリと肩を震わせた。
――ああ、もう、この酔っ払い!
半ばあきれながらも、作り笑顔を返し、徐々に帰り支度を始めていく。
お手洗いに立った流れで、そのまま帰ろう。
あたしは、隣にいた一課の子に声をかけ、代金を確認しようとしたが、鼻で笑われた。
「ヤダ、白山さん、コレ合コンよ?向こう持ちに決まってるでしょ?」
「え、で、でも……」
「良いから良いから」
にこやかに追い払われ、あたしは、渋々引き下がる。
――何だか、納得いかないけれど、仕方ない。
あたしは、立ち上がり、小坂主任のそばに行く。
「あら、白山さん、どうかした?」
「――申し訳ありませんが、所用がありますので、この辺で失礼させていただきます」
「ええー、アタシ、まだ、あなたと部長の事、聞いてないんだけどぉ」
不満げに眉を寄せる彼女に、あたしも眉を寄せてしまった。
「お話する事はありません。すみませんが、失礼します」
「あ、ちょっと待って」
すると、主任の隣に座っていた男性が、引き留めてきた。
「……あの……?」
「もう夜だし、送って行くよ」
「いえ、あの」
「おい、充ー!彼女、送って行けよー!」
「わかりましたよ、社長!」
必要無い、と、言う前に先手を取られ、しかも、社長と呼ばれた彼は、高根さんに声をかけた。
高根さんは、腰を上げると、帰り支度を始める。
「あ、あの、大丈夫ですからっ……!」
「ああ、気にしないで。アイツ、鈴原さんトコの女性と合コンだって言ったら、勢いよく食いついてきたんだよ」
「――え」
「望さん!何、言い出してっ……!」
慌てる高根さんは、社長を名前で呼び、後ろから口をふさぐ。
――え、あれ、良いの、それ?
あたしが目を丸くしていると、高根さんは、気まずそうにあたしを見やった。
「……き、気にしないでください。元々、望さんとは大学の先輩後輩で――社長以前の問題なんで」
そう言えば、小さなベンチャー企業だって言ってた。
どうやら、親しい人間で会社を立ち上げたようだ。
あたしは、軽くうなづくと、高根さんを見やる。
「――それじゃあ、失礼しますね」
「え、あ」
慌てる彼を作り笑顔で遮ると、メンバー全員に挨拶し、あたしは居酒屋を後にした。
「白山さん、何か飲み物頼みますか?」
「え?」
不意に声をかけられ、顔を上げた。
「あ、いえ、大丈夫です。――元々、数合わせなんで、頃合い見計らって帰るつもりですから」
「え、あ、でも、せっかくですし……」
口ごもりながら言う高根さんは、お酒に弱いのか、もう顔が赤い。
彼のグラスを見ると、半分以上消えている。
どうやらビールのようだが――ソフトドリンクに変えた方が良いんだろう。
「それより、高根さんこそ、何か頼みますか?何なら、ジンジャーエールとかありますし」
「え?」
キョトンと返され、あたしもキョトンとする。
「ああ、大丈夫ですよ。こう見えて、僕、結構アルコール強いですから」
「でも、顔赤いですし……なら、調子良くないんじゃ……」
下手すると、急性アル中になる可能性だってあるんだから。
他の人間が盛り上がっている中、あたしと高根さんは、テーブルの隅でお互いに見合う。
「――……気にしないでください。……えっと……まあ、顔に出やすいタチなんで」
「そうですか?でも、怪しかったら、すぐに言ってくださいね」
「あ、ありがとうございます」
高根さんは、そう言いながら、グラスを傾けた。
あたしもグラスを空けて、食事を進める。
二杯目からはジンジャーエールにして、あらかた料理が消えたところで、皿を寄せたり、店員さんに声をかけて片付けてもらったりした。
「あらぁー、白山さん、ありがとぉー!気が利くわねぇ!」
男性と盛り上がっていた小坂主任に大きな声で言われ、あたしはビクリと肩を震わせた。
――ああ、もう、この酔っ払い!
半ばあきれながらも、作り笑顔を返し、徐々に帰り支度を始めていく。
お手洗いに立った流れで、そのまま帰ろう。
あたしは、隣にいた一課の子に声をかけ、代金を確認しようとしたが、鼻で笑われた。
「ヤダ、白山さん、コレ合コンよ?向こう持ちに決まってるでしょ?」
「え、で、でも……」
「良いから良いから」
にこやかに追い払われ、あたしは、渋々引き下がる。
――何だか、納得いかないけれど、仕方ない。
あたしは、立ち上がり、小坂主任のそばに行く。
「あら、白山さん、どうかした?」
「――申し訳ありませんが、所用がありますので、この辺で失礼させていただきます」
「ええー、アタシ、まだ、あなたと部長の事、聞いてないんだけどぉ」
不満げに眉を寄せる彼女に、あたしも眉を寄せてしまった。
「お話する事はありません。すみませんが、失礼します」
「あ、ちょっと待って」
すると、主任の隣に座っていた男性が、引き留めてきた。
「……あの……?」
「もう夜だし、送って行くよ」
「いえ、あの」
「おい、充ー!彼女、送って行けよー!」
「わかりましたよ、社長!」
必要無い、と、言う前に先手を取られ、しかも、社長と呼ばれた彼は、高根さんに声をかけた。
高根さんは、腰を上げると、帰り支度を始める。
「あ、あの、大丈夫ですからっ……!」
「ああ、気にしないで。アイツ、鈴原さんトコの女性と合コンだって言ったら、勢いよく食いついてきたんだよ」
「――え」
「望さん!何、言い出してっ……!」
慌てる高根さんは、社長を名前で呼び、後ろから口をふさぐ。
――え、あれ、良いの、それ?
あたしが目を丸くしていると、高根さんは、気まずそうにあたしを見やった。
「……き、気にしないでください。元々、望さんとは大学の先輩後輩で――社長以前の問題なんで」
そう言えば、小さなベンチャー企業だって言ってた。
どうやら、親しい人間で会社を立ち上げたようだ。
あたしは、軽くうなづくと、高根さんを見やる。
「――それじゃあ、失礼しますね」
「え、あ」
慌てる彼を作り笑顔で遮ると、メンバー全員に挨拶し、あたしは居酒屋を後にした。