EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
結局、郊外のホームセンターに向かう事になり、朝日さんが車を出す事に決まった。
朝食を終え、あたしが、作ってもらった代わりに後片付けを始めようとすると、少し遠慮がちに、彼が尋ねる。
「――本当に良いのか?」
「何がですか」
あたしは、お皿を洗う手を止め、朝日さんに聞き返す。
「いや、家具屋の方が、いろいろ種類があるだろう」
そう言われ、ふい、と、視線を逸らした。
「――そこまでこだわっていません。ひとまず、寝られれば良いんですから」
「けどな」
食い下がろうとする朝日さんを、チラリと見やる。
――本当は、同棲っていうより、ルームシェアなんだし。
ベッドだって、すぐに要らなくなるかもしれないし。
そう、心の中で続ける。
朝日さんの気持ちがハッキリ伝わらないから、あたしもどう考えて良いのかわからない。
大体、会って一か月もしない相手に好きとか――一目惚れでもあるまいに。
あたしが顔を上げると、彼と目が合ってしまい、思わず視線を逸らしてしまう。
「……じゃあ、いっそ、ダブルベッドにするか」
「はぁ⁉」
思わず目を剥いて、朝日さんを見る。
何で、そんな結論になるのよ!
「――言っただろう。先を考えない女と、付き合う気は無い」
「だから……っ……」
反論しようとして、止まる。
――……え、あれ?待って、待って。
何言ってんの、この人。
――……イコール、結婚前提に付き合うって事じゃ――……。
その答えにたどり着いた瞬間、心臓が跳ね上がる。
「――……朝日さん……?」
あたしは、恐る恐る彼を見やる。
目が合うと、バツが悪そうに逸らされた。
そのまま、答えはなし崩し的に流れていき、あたしは洗い物を終わらせる。
その間にも、朝日さんは軽く掃除を終わらせていた。
――その要領の良さが、何だか、気に食わない。
……まるで、あたしの出る幕は無いって言われているみたいで。
「美里、準備できてるなら、出るぞ」
「え、あ、ハ……」
返事をしかけて、はた、と、気づいてしまう。
――……えっと、待って。
この人と、並んで歩くのに――この雑な姿は……。
あたしは、自分の着ていた服を見下ろす。
シンプルなカットソーに、デニム。
何なら、髪も後ろで一つ縛りだけで、何の飾りも無い。
一方の朝日さんは、質の良いブランドのシャツとカーゴパンツ。
意外と私服はラフなようだ。
ああ、そう言えば、初めて会った時も、年下と思うほどの姿で――確かあの時もTシャツとデニムだったな。
「美里?」
思考が逸れて黙り込んだあたしを、朝日さんがのぞき込んできた。
その距離の近さに、思わず後ずさる。
「……おい?」
「……あ、あの……やっぱり、着替えますんで」
「別に構わないだろ」
「構いますってば!」
キョトンと返され、あたしは声を荒らげる。
――この男は、本当にっ……!
何で、こう、自分の容姿に鈍感なのよ!
あたしが怒った理由がわからないのだろう、眉を寄せられた。
「……何を気にしてるのか、わからんが、そのままで充分だぞ」
「は?」
この雑な姿で、そんな訳ないでしょうが。
そう言おうとすると、朝日さんは、あたしの前髪を指でかき上げた。
「――お前、自己評価低すぎだ」
「そんな訳……」
「充分、キレイだ、と、言わなきゃわからないか?」
「――へ??」
あまりに似合い過ぎた気障なセリフに、硬直状態になってしまう。
すると、朝日さんは、ふい、と、顔を背ける。
見上げれば、耳から首から、一目でわかるほどに赤かった。
「……照れるくらいなら、言わなくても……」
「……うるさい。……お前の察しが悪いから」
「あたしのせいにしないでください」
そう言うと、あたしは、彼に背を向けて部屋に向かおうとする。
けれど、あっさりと抱き寄せられた。
「――早く、デートしたい、って言ってるんだよ」
「……っ……‼」
――何、そのセリフは!誰よ、コイツ‼
耳元で囁かれ、あたしは、真っ赤になって硬直した。
「――ホラ、時間がもったいないだろ」
朝日さんは、ニヤリと口元を上げ、あたしの手を引いた。
――ああ、また、やられてしまった。
からかい半分のそれに、頬を膨らませる。
「……わかりましたっ!」
あたしは、そのまま朝日さんに引きずられるように部屋を出た。
朝食を終え、あたしが、作ってもらった代わりに後片付けを始めようとすると、少し遠慮がちに、彼が尋ねる。
「――本当に良いのか?」
「何がですか」
あたしは、お皿を洗う手を止め、朝日さんに聞き返す。
「いや、家具屋の方が、いろいろ種類があるだろう」
そう言われ、ふい、と、視線を逸らした。
「――そこまでこだわっていません。ひとまず、寝られれば良いんですから」
「けどな」
食い下がろうとする朝日さんを、チラリと見やる。
――本当は、同棲っていうより、ルームシェアなんだし。
ベッドだって、すぐに要らなくなるかもしれないし。
そう、心の中で続ける。
朝日さんの気持ちがハッキリ伝わらないから、あたしもどう考えて良いのかわからない。
大体、会って一か月もしない相手に好きとか――一目惚れでもあるまいに。
あたしが顔を上げると、彼と目が合ってしまい、思わず視線を逸らしてしまう。
「……じゃあ、いっそ、ダブルベッドにするか」
「はぁ⁉」
思わず目を剥いて、朝日さんを見る。
何で、そんな結論になるのよ!
「――言っただろう。先を考えない女と、付き合う気は無い」
「だから……っ……」
反論しようとして、止まる。
――……え、あれ?待って、待って。
何言ってんの、この人。
――……イコール、結婚前提に付き合うって事じゃ――……。
その答えにたどり着いた瞬間、心臓が跳ね上がる。
「――……朝日さん……?」
あたしは、恐る恐る彼を見やる。
目が合うと、バツが悪そうに逸らされた。
そのまま、答えはなし崩し的に流れていき、あたしは洗い物を終わらせる。
その間にも、朝日さんは軽く掃除を終わらせていた。
――その要領の良さが、何だか、気に食わない。
……まるで、あたしの出る幕は無いって言われているみたいで。
「美里、準備できてるなら、出るぞ」
「え、あ、ハ……」
返事をしかけて、はた、と、気づいてしまう。
――……えっと、待って。
この人と、並んで歩くのに――この雑な姿は……。
あたしは、自分の着ていた服を見下ろす。
シンプルなカットソーに、デニム。
何なら、髪も後ろで一つ縛りだけで、何の飾りも無い。
一方の朝日さんは、質の良いブランドのシャツとカーゴパンツ。
意外と私服はラフなようだ。
ああ、そう言えば、初めて会った時も、年下と思うほどの姿で――確かあの時もTシャツとデニムだったな。
「美里?」
思考が逸れて黙り込んだあたしを、朝日さんがのぞき込んできた。
その距離の近さに、思わず後ずさる。
「……おい?」
「……あ、あの……やっぱり、着替えますんで」
「別に構わないだろ」
「構いますってば!」
キョトンと返され、あたしは声を荒らげる。
――この男は、本当にっ……!
何で、こう、自分の容姿に鈍感なのよ!
あたしが怒った理由がわからないのだろう、眉を寄せられた。
「……何を気にしてるのか、わからんが、そのままで充分だぞ」
「は?」
この雑な姿で、そんな訳ないでしょうが。
そう言おうとすると、朝日さんは、あたしの前髪を指でかき上げた。
「――お前、自己評価低すぎだ」
「そんな訳……」
「充分、キレイだ、と、言わなきゃわからないか?」
「――へ??」
あまりに似合い過ぎた気障なセリフに、硬直状態になってしまう。
すると、朝日さんは、ふい、と、顔を背ける。
見上げれば、耳から首から、一目でわかるほどに赤かった。
「……照れるくらいなら、言わなくても……」
「……うるさい。……お前の察しが悪いから」
「あたしのせいにしないでください」
そう言うと、あたしは、彼に背を向けて部屋に向かおうとする。
けれど、あっさりと抱き寄せられた。
「――早く、デートしたい、って言ってるんだよ」
「……っ……‼」
――何、そのセリフは!誰よ、コイツ‼
耳元で囁かれ、あたしは、真っ赤になって硬直した。
「――ホラ、時間がもったいないだろ」
朝日さんは、ニヤリと口元を上げ、あたしの手を引いた。
――ああ、また、やられてしまった。
からかい半分のそれに、頬を膨らませる。
「……わかりましたっ!」
あたしは、そのまま朝日さんに引きずられるように部屋を出た。