EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「――オレが、美里の今の恋人だって、前に会った時に言ったと思うんだがな」
「うるせぇな。偉そうにしてるけど、結局、人の彼女、寝取ったって事だろうが。アンタ、上司だろ。部下に手ぇ出したって、SNSに書いてやろうか」
ひきつるように虚勢を張る寿和に、朝日さんは、淡々と返す。
「ご自由に。――ストーカー同然の元カレの言葉と、現在進行形で付き合ってるオレと、どっちが信用できると思ってる」
「誰がストーカーだよ!」
「自覚が無いなら、通報して、然るべき対処を取るが」
あたしは、段々と青くなる寿和の表情に、不安を覚える。
――ダメだ。追い詰めたら、何をするかわからない。
「――っ……と、寿っ……小田嶋さんっ……!」
そう呼ぶと、寿和は、我に返ったようにあたしを見やる。
「――……お願いです。……別れてください……」
あたしは、頭を深々と下げる。
何をどう言おうが――最後は、誠意しか無い。
そのままの姿勢でいると、隣の朝日さんも、同じように頭を下げた。
あたしは、ギョッとして、顔を上げる。
「なっ……何をっ……!」
「お前だけに、頭を下げさせる気は無いぞ」
「でも、これは、あたしの問題で……っ……」
「お前だけの問題でもないだろう」
「――ああ、もう、うぜぇな!」
不意に入ってきた怒鳴り声に、二人で体勢を直し、顔を向けた。
「わかったよ!別れれば良いんだろ!」
あたしは、ポカンとしたまま、寿和を見た。
すると、苦々しくあたしを見返してきた。
「犯罪者にさせられてたまるか。――……ったく、あのアプリ、ハズレ引かせやがって……」
「――……ごめんなさい……」
寿和は、そのまま、あたし達を振り返る事無く、駅の連絡通路をアパートのある方へ歩いて行った。
それをしばらく見送ると、そっと、手が握られた。
顔を上げれば、朝日さんが、優しく微笑んでいる。
「――……悪いな、お前にばかり頑張らせた」
あたしは、首を振る。
「……いえ。……あたしの問題ですから。……それより、朝日さんだって、わざわざ頭下げてくれて……すみません……」
そう言って謝ろうとすると、頭を軽くたたかれた。
「寂しい事言うな。――彼女のため、だろ」
「……ありがとうございます」
朝日さんは、口元を上げると、あたしの手を引いて歩き出す。
「――……帰るか」
「……ハイ……」
二人で、無言のまま、連絡通路の階段を下りて行き、マンションに入って行く。
その間、あたしは、あふれ出す感情をこらえ続けていた。
「うるせぇな。偉そうにしてるけど、結局、人の彼女、寝取ったって事だろうが。アンタ、上司だろ。部下に手ぇ出したって、SNSに書いてやろうか」
ひきつるように虚勢を張る寿和に、朝日さんは、淡々と返す。
「ご自由に。――ストーカー同然の元カレの言葉と、現在進行形で付き合ってるオレと、どっちが信用できると思ってる」
「誰がストーカーだよ!」
「自覚が無いなら、通報して、然るべき対処を取るが」
あたしは、段々と青くなる寿和の表情に、不安を覚える。
――ダメだ。追い詰めたら、何をするかわからない。
「――っ……と、寿っ……小田嶋さんっ……!」
そう呼ぶと、寿和は、我に返ったようにあたしを見やる。
「――……お願いです。……別れてください……」
あたしは、頭を深々と下げる。
何をどう言おうが――最後は、誠意しか無い。
そのままの姿勢でいると、隣の朝日さんも、同じように頭を下げた。
あたしは、ギョッとして、顔を上げる。
「なっ……何をっ……!」
「お前だけに、頭を下げさせる気は無いぞ」
「でも、これは、あたしの問題で……っ……」
「お前だけの問題でもないだろう」
「――ああ、もう、うぜぇな!」
不意に入ってきた怒鳴り声に、二人で体勢を直し、顔を向けた。
「わかったよ!別れれば良いんだろ!」
あたしは、ポカンとしたまま、寿和を見た。
すると、苦々しくあたしを見返してきた。
「犯罪者にさせられてたまるか。――……ったく、あのアプリ、ハズレ引かせやがって……」
「――……ごめんなさい……」
寿和は、そのまま、あたし達を振り返る事無く、駅の連絡通路をアパートのある方へ歩いて行った。
それをしばらく見送ると、そっと、手が握られた。
顔を上げれば、朝日さんが、優しく微笑んでいる。
「――……悪いな、お前にばかり頑張らせた」
あたしは、首を振る。
「……いえ。……あたしの問題ですから。……それより、朝日さんだって、わざわざ頭下げてくれて……すみません……」
そう言って謝ろうとすると、頭を軽くたたかれた。
「寂しい事言うな。――彼女のため、だろ」
「……ありがとうございます」
朝日さんは、口元を上げると、あたしの手を引いて歩き出す。
「――……帰るか」
「……ハイ……」
二人で、無言のまま、連絡通路の階段を下りて行き、マンションに入って行く。
その間、あたしは、あふれ出す感情をこらえ続けていた。