EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
――寿和、アンタ、どういう事……?
部屋に帰れば、浮気相手が我が物顔で寿和と一緒にいて、あたしは目の前が真っ暗になった。
――この人が、彼女?
――一応な。
――ふぅん……何か、トシくんには、似合わないねー。地味なオバサンってカンジー。
あたしは、思わず、持っていた買い物バッグを後ろ手に持った。
突然の事に言葉を失ったまま。
そして、浮気相手から投げつけられた、不躾な言葉に恥ずかしくなる。
――良いんだよ、美里は最初から、こうだったし。
――何、それぇ?
――まあ、それでも最初は女に見えたけど、ここまでくると、母親だな。
そう言ってじゃれ合う二人に、あたしは、言葉を絞り出す。
――……寿和……どういう、意味……。
すると、あっさりと、浮気相手の彼女の肩を抱き寄せ、寿和は告げた。
――だから、母親みてぇなんだよ、お前。
歴代の彼氏達と同じ言葉を浴びせられ、あたしは、一瞬硬直した。
だが、唇を噛み締めて意識を強制的に戻すと、クローゼットから大き目のバッグを取り出す。
そして、それに、すぐに着られそうな服と最低限の支度、預貯金関係を詰め込んだ。
――美里?
玄関に向かって行くあたしを呼ぶ寿和に、持っていた合い鍵をたたきつけるように投げた。
――バイバイ‼
あっけにとられた二人の顔が、まだ、脳裏に焼き付いている。
――どうして、あたしは、いつもいつもこうなんだろう。
――あたしを、本当に必要としてくれて……あたしが、必要とする人には、一生逢う事は無いのかな……。
「――美里!」
「え」
肩を揺らされ、無理矢理に覚醒させられる。
目の前に現れた端正な顔に、思わず息をのんでしまった。
――……ああ……夢だった……。
大きく息を吐くと、ゆるゆると起き上がった。
「……おはようございます……朝日さん……」
「……大丈夫か……?」
「え?」
朝日さんは、あたしの背を支えて起こしながら、そう尋ねてきたので、聞き返した。
「……うなされてたが……」
「……え、あ……。……すみません……何だか、夢見が悪くて」
苦笑いで彼を見やると、納得がいかないのか、眉を寄せられた。
「大丈夫なのか?仕事は行けるのか?」
「あ、ハイ。……それは、大丈夫ですよ」
あたしは、作り笑いで返すと、彼の手から逃れるようにベッドから下り立った。
「それより、今何時ですか?朝ご飯……」
「もう、できている」
その言葉に、思わず眉を寄せる。
「……大丈夫ですから。朝ご飯くらい、作らせてくださいよ」
「オレだって、日課なんだよ」
そう言って、朝日さんは、部屋を出る。
その姿は、既にスーツ姿で、いつでも出勤できるようになっていた。
「月曜だからな、少し早目に出る。弁当は作っていないが、必要なものがあれば、勝手に使って良いから」
「あ、ハ、ハイッ……すみません……」
何だか、いろいろと甘えすぎている気がするのに、どうにも止められない。
――……もしかして、あたし、本当にダメ女になりそう……?
一瞬よぎった考えを振り切り、あたしは、慌てて玄関に向かう彼を追いかけた。
せめて、見送りくらいは――。
「――美里」
「え?」
「行ってきます」
朝日さんは、そう言ってあたしを引き寄せると、軽く唇にキスを落とす。
「……っ……!!!?」
ギョッとしたあたしをよそに、彼は、上機嫌で出勤して行った。
部屋に帰れば、浮気相手が我が物顔で寿和と一緒にいて、あたしは目の前が真っ暗になった。
――この人が、彼女?
――一応な。
――ふぅん……何か、トシくんには、似合わないねー。地味なオバサンってカンジー。
あたしは、思わず、持っていた買い物バッグを後ろ手に持った。
突然の事に言葉を失ったまま。
そして、浮気相手から投げつけられた、不躾な言葉に恥ずかしくなる。
――良いんだよ、美里は最初から、こうだったし。
――何、それぇ?
――まあ、それでも最初は女に見えたけど、ここまでくると、母親だな。
そう言ってじゃれ合う二人に、あたしは、言葉を絞り出す。
――……寿和……どういう、意味……。
すると、あっさりと、浮気相手の彼女の肩を抱き寄せ、寿和は告げた。
――だから、母親みてぇなんだよ、お前。
歴代の彼氏達と同じ言葉を浴びせられ、あたしは、一瞬硬直した。
だが、唇を噛み締めて意識を強制的に戻すと、クローゼットから大き目のバッグを取り出す。
そして、それに、すぐに着られそうな服と最低限の支度、預貯金関係を詰め込んだ。
――美里?
玄関に向かって行くあたしを呼ぶ寿和に、持っていた合い鍵をたたきつけるように投げた。
――バイバイ‼
あっけにとられた二人の顔が、まだ、脳裏に焼き付いている。
――どうして、あたしは、いつもいつもこうなんだろう。
――あたしを、本当に必要としてくれて……あたしが、必要とする人には、一生逢う事は無いのかな……。
「――美里!」
「え」
肩を揺らされ、無理矢理に覚醒させられる。
目の前に現れた端正な顔に、思わず息をのんでしまった。
――……ああ……夢だった……。
大きく息を吐くと、ゆるゆると起き上がった。
「……おはようございます……朝日さん……」
「……大丈夫か……?」
「え?」
朝日さんは、あたしの背を支えて起こしながら、そう尋ねてきたので、聞き返した。
「……うなされてたが……」
「……え、あ……。……すみません……何だか、夢見が悪くて」
苦笑いで彼を見やると、納得がいかないのか、眉を寄せられた。
「大丈夫なのか?仕事は行けるのか?」
「あ、ハイ。……それは、大丈夫ですよ」
あたしは、作り笑いで返すと、彼の手から逃れるようにベッドから下り立った。
「それより、今何時ですか?朝ご飯……」
「もう、できている」
その言葉に、思わず眉を寄せる。
「……大丈夫ですから。朝ご飯くらい、作らせてくださいよ」
「オレだって、日課なんだよ」
そう言って、朝日さんは、部屋を出る。
その姿は、既にスーツ姿で、いつでも出勤できるようになっていた。
「月曜だからな、少し早目に出る。弁当は作っていないが、必要なものがあれば、勝手に使って良いから」
「あ、ハ、ハイッ……すみません……」
何だか、いろいろと甘えすぎている気がするのに、どうにも止められない。
――……もしかして、あたし、本当にダメ女になりそう……?
一瞬よぎった考えを振り切り、あたしは、慌てて玄関に向かう彼を追いかけた。
せめて、見送りくらいは――。
「――美里」
「え?」
「行ってきます」
朝日さんは、そう言ってあたしを引き寄せると、軽く唇にキスを落とす。
「……っ……!!!?」
ギョッとしたあたしをよそに、彼は、上機嫌で出勤して行った。