EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
総務部の部屋に入り、軽い挨拶を交わすと、あたしは、自分の机の上にあった書類の山に目を丸くした。
さっとめくれば、先週、あたしが朝日さんに提出したものが、戻って来ているようだ。
……何か、不備でもあったんだろうか。
「――白山」
「……ハイ」
朝日さんに呼ばれ、あたしは、不機嫌さをどうにか隠しながら、彼の元に向かった。
「……おはようございます。あの書類は、一体、どういう事でしょうか」
「おはよう。上からの指示だ。申し訳ないが、明後日までに、先週出した企画を詳しく詰めたものと、ライフプレジャー社と年間での予定を計画して、提出してくれ」
「え?」
意味がわからない。
朝日さんに渡した時点で、あたしの手を離れた仕事ではないのか。
すると、苦笑いで返された。
「社長が、気に入ったらしい」
「は?」
「目新しいものに目が無いから、ウチの社長。さっそく、提出したヤツ読んだようなんだ。それで、ぜひ、年間通して数回、そういうイベントを開催してくれ、だそうだ」
「……は……??」
キョトンとしているあたしに、朝日さんは続けた。
「――お前に、全面的に任せる。先方との打ち合わせは、先に電話で話をつけているからな」
あたしは、放心状態だ。
――え、何、それ。どういう事?
理解が追い付いていないあたしに、朝日さんは続けた。
「白山、オレの言ってる事がわかるか?」
「え、いえ、あの、何であたしが……」
「――お前が、先方と企画したものが認められた。だから、これから、お前が窓口になってくれ、と言っている」
「……し……承知しました……」
動揺を隠せないまま、あたしは席に戻った。
すると、和田原課長から声がかかる。
「白山さん、今持ってる仕事って、後は入寮申請だけ?人間ドックの方は終わった?」
「え、あ、ハイ。返事待ちですが、一応は」
「じゃあ、それ、どっちも曽根さんに渡して。白山さんは、そっち専門でしばらくお願い」
「――ハ、ハイ……」
あたしは、腑に落ちないままうなづくと、隣の曽根さんを見やった。
入社二年目で、最初から総務部配属の彼女は、今は担当の仕事は無く、他の人のサポートとともに、仕事を覚えている最中だ。
その彼女は、待ち構えていたかのように、うなづいた。
「後は、任せてください、白山先輩!」
「……お、お願いします……」
元々、体育会系だったのか、彼女は、こちらがたじろぐほどに、勢いよく身を乗り出してきた。
「じ、じゃあ、今やってる仕事の引き継ぎだけ……」
「ハイ‼」
曽根さんは、さっそく、あたしの隣にイスを引きずって来て、手元を見た。
「――ええっと、難しい事でもないです。……メールで来ている、各所の寮の空きの確認と、現在の入寮者の確認。退去予定などは一覧になっているので、それと合わせて、可能かどうかの判断と、入居予定者への説明などだけ、です」
あたしは、自分のパソコン画面を見せながら、彼女にそう告げる。
それだけの事だが、一生懸命にメモを取っている姿には、口元が上がった。
――これだけ素直なら、可愛げもあるんだろうな……。
「以上ですか、白山先輩?」
「え、あ、ハイ。人間ドックの方は、返事が来た時に、また説明するので……。……じゃあ、よろしくお願いします」
「ハイ!お任せください!担当変更のアナウンスしておきますので」
そう言って、彼女は自分の席に戻って行った。
あたしは、それを見やると、手元の書類に視線を落とす。
――……まさか、こんな事になるなんて。
これからの事を思うと、少し――いや、かなり、気が滅入った。
さっとめくれば、先週、あたしが朝日さんに提出したものが、戻って来ているようだ。
……何か、不備でもあったんだろうか。
「――白山」
「……ハイ」
朝日さんに呼ばれ、あたしは、不機嫌さをどうにか隠しながら、彼の元に向かった。
「……おはようございます。あの書類は、一体、どういう事でしょうか」
「おはよう。上からの指示だ。申し訳ないが、明後日までに、先週出した企画を詳しく詰めたものと、ライフプレジャー社と年間での予定を計画して、提出してくれ」
「え?」
意味がわからない。
朝日さんに渡した時点で、あたしの手を離れた仕事ではないのか。
すると、苦笑いで返された。
「社長が、気に入ったらしい」
「は?」
「目新しいものに目が無いから、ウチの社長。さっそく、提出したヤツ読んだようなんだ。それで、ぜひ、年間通して数回、そういうイベントを開催してくれ、だそうだ」
「……は……??」
キョトンとしているあたしに、朝日さんは続けた。
「――お前に、全面的に任せる。先方との打ち合わせは、先に電話で話をつけているからな」
あたしは、放心状態だ。
――え、何、それ。どういう事?
理解が追い付いていないあたしに、朝日さんは続けた。
「白山、オレの言ってる事がわかるか?」
「え、いえ、あの、何であたしが……」
「――お前が、先方と企画したものが認められた。だから、これから、お前が窓口になってくれ、と言っている」
「……し……承知しました……」
動揺を隠せないまま、あたしは席に戻った。
すると、和田原課長から声がかかる。
「白山さん、今持ってる仕事って、後は入寮申請だけ?人間ドックの方は終わった?」
「え、あ、ハイ。返事待ちですが、一応は」
「じゃあ、それ、どっちも曽根さんに渡して。白山さんは、そっち専門でしばらくお願い」
「――ハ、ハイ……」
あたしは、腑に落ちないままうなづくと、隣の曽根さんを見やった。
入社二年目で、最初から総務部配属の彼女は、今は担当の仕事は無く、他の人のサポートとともに、仕事を覚えている最中だ。
その彼女は、待ち構えていたかのように、うなづいた。
「後は、任せてください、白山先輩!」
「……お、お願いします……」
元々、体育会系だったのか、彼女は、こちらがたじろぐほどに、勢いよく身を乗り出してきた。
「じ、じゃあ、今やってる仕事の引き継ぎだけ……」
「ハイ‼」
曽根さんは、さっそく、あたしの隣にイスを引きずって来て、手元を見た。
「――ええっと、難しい事でもないです。……メールで来ている、各所の寮の空きの確認と、現在の入寮者の確認。退去予定などは一覧になっているので、それと合わせて、可能かどうかの判断と、入居予定者への説明などだけ、です」
あたしは、自分のパソコン画面を見せながら、彼女にそう告げる。
それだけの事だが、一生懸命にメモを取っている姿には、口元が上がった。
――これだけ素直なら、可愛げもあるんだろうな……。
「以上ですか、白山先輩?」
「え、あ、ハイ。人間ドックの方は、返事が来た時に、また説明するので……。……じゃあ、よろしくお願いします」
「ハイ!お任せください!担当変更のアナウンスしておきますので」
そう言って、彼女は自分の席に戻って行った。
あたしは、それを見やると、手元の書類に視線を落とす。
――……まさか、こんな事になるなんて。
これからの事を思うと、少し――いや、かなり、気が滅入った。