EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
どうにか、他の人間が帰ってくる前に二人で昼食を終え、それぞれ仕事に戻った。
けれど、何だか、頭がクラクラして、時折、目まいのようなものが襲ってくる。
――……変な寝方したせいかな……。
あたしは、軽く頭を振ると、パソコンの画面をにらむ。
だが、集中できない。
――……あれ、コレ、何かヤバいヤツ……?
妙な耳鳴りもしてきて、あたしは顔を伏せる。
「……白山先輩?」
何だか遠くから、曽根さんの声が聞こえる。
あたしは、返事をしたくて顔を上げようとするが、意識と身体がつながらない。
そうこうしているうちに、人だかりができている気がする。
「白山くん?キミ、大丈夫?」
和田原課長の声もしている。
――ああ、早く、顔を上げなきゃ。
――……大丈夫って、言わなきゃ……。
けれど、顔を上げようとした瞬間、吐き気が襲ってきて、あたしは口元を押さえた。
ヤバい。吐きそう。
でも、身体が動かな――……。
そう思った瞬間、ふわり、と、身体が浮いた。
うっすらと目を開けると、朝日さんの横顔が視界に入る。
「休憩室行くぞ」
もう、馴染んでしまった感触に安心してしまう。
「……ぶ……ちょ……」
「いいから。吐きそうなら先にトイレに行くか?」
あたしが、軽くうなづくと、彼はざわつく部屋を出て、女子トイレまであたしを運ぶ。
「オレが入る訳にもいかないからな。……誰か呼んでこようか」
それには、首を振る。
迷惑かけたくないという思いを、視線だけで訴えると、朝日さんは渋々あたしを下ろした。
どうにか吐いてしまえば、少し楽になり、待っていた朝日さんの元へ戻った。
「……すみません……。後は自分で……」
「無理だろうが」
ばっさりと、あたしの言葉を切ると、彼は再びあたしを抱きかかえる。
そして、一階の休憩室へとエレベーターで向かった。
一階のロッカールームの前には、六畳ほどの部屋に、簡易ベッドとテーブルセットが置かれている、休憩室と呼ばれる場所がある。
要は、保健室だ。
棚には簡単な救急セットと、置き薬があり、体調不良の人間がやって来て、休んでいく。
あたしは、そこに連れて行かれ、朝日さんに問答無用で熱を測らされた。
「……三十九度」
「……そう、ですか……」
返事をするのも億劫になったが、どうにか、声を絞り出して返事をする。
「とにかく、解熱剤があっただろうから、飲めるか」
「……ハ、ハイ……」
あたしが、ゆるゆるとうなづくと、朝日さんは、救急箱から薬を取り出して、シンクに向かうと、コップに水を入れる。
そして、それをあたしに差し出した。
「ホラ」
「……じ、自分で飲みます」
あたしの返事に、彼は眉を寄せるが、渋々手渡してくれた。
錠剤を口に入れ、一気に流し込む。
「――ありがとうございました」
コップを朝日さんに手渡すと、彼は、それを持ったまま、ベッドのそばの丸椅子に座った。
「……部長?」
「――……今日は、もう、休め」
「でも」
「社長に事情を報告して、一日締め切りを伸ばしてもらうから」
「――だ、だめです!できます!」
「美里」
不意に名前を呼ばれ、あせって出入り口を見やった。
「……部長、会社です」
だが、朝日さんは、構わずに続ける。
「――心配だから、休んでいろと言っている」
「……っ……」
そう、あたしをのぞき込んで言う。
その端正な顔は、少しだけ歪んでいた。
「――……わかりました……」
あたしは、そのままベッドに横になる。
朝日さんは、そっと、布団をかけてくれた。
「帰り、迎えに来るから。……それまで、休んでおけ」
「――……でも」
そんなコトしたら、社内でウワサになるんじゃ……。
けれど、朝日さんは、真っ直ぐにあたしを見つめた。
「言いたいヤツには、言わせておけ。病人を、そのまま帰す訳にはいかないだろ」
その視線に、あたしは口をつぐむ。
――本気で心配させてしまった。
罪悪感に襲われてしまい、うなづくと、朝日さんは立ち上がった。
「じゃあ、ちゃんと寝ていろよ」
「……ハイ」
あたしは、軽くうなづくと、部屋を出て行く彼を見送り、目を閉じた。
けれど、何だか、頭がクラクラして、時折、目まいのようなものが襲ってくる。
――……変な寝方したせいかな……。
あたしは、軽く頭を振ると、パソコンの画面をにらむ。
だが、集中できない。
――……あれ、コレ、何かヤバいヤツ……?
妙な耳鳴りもしてきて、あたしは顔を伏せる。
「……白山先輩?」
何だか遠くから、曽根さんの声が聞こえる。
あたしは、返事をしたくて顔を上げようとするが、意識と身体がつながらない。
そうこうしているうちに、人だかりができている気がする。
「白山くん?キミ、大丈夫?」
和田原課長の声もしている。
――ああ、早く、顔を上げなきゃ。
――……大丈夫って、言わなきゃ……。
けれど、顔を上げようとした瞬間、吐き気が襲ってきて、あたしは口元を押さえた。
ヤバい。吐きそう。
でも、身体が動かな――……。
そう思った瞬間、ふわり、と、身体が浮いた。
うっすらと目を開けると、朝日さんの横顔が視界に入る。
「休憩室行くぞ」
もう、馴染んでしまった感触に安心してしまう。
「……ぶ……ちょ……」
「いいから。吐きそうなら先にトイレに行くか?」
あたしが、軽くうなづくと、彼はざわつく部屋を出て、女子トイレまであたしを運ぶ。
「オレが入る訳にもいかないからな。……誰か呼んでこようか」
それには、首を振る。
迷惑かけたくないという思いを、視線だけで訴えると、朝日さんは渋々あたしを下ろした。
どうにか吐いてしまえば、少し楽になり、待っていた朝日さんの元へ戻った。
「……すみません……。後は自分で……」
「無理だろうが」
ばっさりと、あたしの言葉を切ると、彼は再びあたしを抱きかかえる。
そして、一階の休憩室へとエレベーターで向かった。
一階のロッカールームの前には、六畳ほどの部屋に、簡易ベッドとテーブルセットが置かれている、休憩室と呼ばれる場所がある。
要は、保健室だ。
棚には簡単な救急セットと、置き薬があり、体調不良の人間がやって来て、休んでいく。
あたしは、そこに連れて行かれ、朝日さんに問答無用で熱を測らされた。
「……三十九度」
「……そう、ですか……」
返事をするのも億劫になったが、どうにか、声を絞り出して返事をする。
「とにかく、解熱剤があっただろうから、飲めるか」
「……ハ、ハイ……」
あたしが、ゆるゆるとうなづくと、朝日さんは、救急箱から薬を取り出して、シンクに向かうと、コップに水を入れる。
そして、それをあたしに差し出した。
「ホラ」
「……じ、自分で飲みます」
あたしの返事に、彼は眉を寄せるが、渋々手渡してくれた。
錠剤を口に入れ、一気に流し込む。
「――ありがとうございました」
コップを朝日さんに手渡すと、彼は、それを持ったまま、ベッドのそばの丸椅子に座った。
「……部長?」
「――……今日は、もう、休め」
「でも」
「社長に事情を報告して、一日締め切りを伸ばしてもらうから」
「――だ、だめです!できます!」
「美里」
不意に名前を呼ばれ、あせって出入り口を見やった。
「……部長、会社です」
だが、朝日さんは、構わずに続ける。
「――心配だから、休んでいろと言っている」
「……っ……」
そう、あたしをのぞき込んで言う。
その端正な顔は、少しだけ歪んでいた。
「――……わかりました……」
あたしは、そのままベッドに横になる。
朝日さんは、そっと、布団をかけてくれた。
「帰り、迎えに来るから。……それまで、休んでおけ」
「――……でも」
そんなコトしたら、社内でウワサになるんじゃ……。
けれど、朝日さんは、真っ直ぐにあたしを見つめた。
「言いたいヤツには、言わせておけ。病人を、そのまま帰す訳にはいかないだろ」
その視線に、あたしは口をつぐむ。
――本気で心配させてしまった。
罪悪感に襲われてしまい、うなづくと、朝日さんは立ち上がった。
「じゃあ、ちゃんと寝ていろよ」
「……ハイ」
あたしは、軽くうなづくと、部屋を出て行く彼を見送り、目を閉じた。