EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
次に目が覚めれば、終業時間間際で、慌てて起き上がろうとした。
すると――
「おい、コラ、ゆっくりと起きろ」
入り口には――朝日さんが、立っていた。
「……ぶ、部長」
自分のバッグを持ち、帰り支度をしていた彼は、ベッドまで来ると、あたしの背を支えながら起こした。
「吐き気は」
「……収まりました。……たぶん、薬が効いてるんだと」
朝日さんは、ほう、と、息を吐き、あたしの額に手を当てた。
「――熱も、少し落ち着いたようだな。帰れそうか」
「……ハイ」
これ以上、ここにいても、迷惑になるだけだ。
あたしは、ゆっくりとベッドから下りると、そばの棚に置いてあった貴重品バッグを持った。
「あれ、これ……」
「ああ、曽根さんが、お前のものだから持って行った方が良いと。引き出しは開けたが、バッグの中は見ていないからな」
「平気です。一応、貴重品ですけど、財布とスマホと鍵くらいですから」
そう言って、部屋をゆっくりと出ると、目の前のロッカールームに入って、自分の荷物を抱えてくる。
その間も、朝日さんは急かす事無く待っていてくれた。
「あ、机の上にファイルと書類置いたまま……」
「それなら、脇に片付けておいた。今は、仕事のことは置いておけ」
「……ありがとうございます」
淡々と返す彼の後をついて行く。
終業時間は、とうに過ぎていて、もう、残っている社員も少なそうだ。
二人で、社員用の出入り口から駐車場へ向かう。
「歩けるか。少し遠いところに停めたんだが」
「大丈夫です」
あたしが、そう返すと、朝日さんはじっとあたしを見て、うなづいた。
「……寝たからか、顔色がさっきよりも良くなっている」
「……すみません……」
「――そう言えば、白山、自分がどういう状況だったか、覚えているか」
「……え、あ……うっすらとしか……」
不意に問いかけられ、あたしは、記憶をたどる。
ほとんど、モヤがかかったようなもので、大した映像記録は思い浮かばない。
考え込むあたしを見やると、朝日さんは、大きく息を吐いた。
「……イスから崩れ落ちたんだぞ、お前。どこか打ってないか?」
あたしは、ポカンとして、彼を見上げる。
だが、眉を寄せられ、肩をすくめた。
「……すみません……。……でも、痛めた自覚は無いんで、大丈夫かと……」
「……なら、良い」
そのまま車まで、彼の後をついて行く。
幸い、既に半分以上の人間が帰っているようで、向かう間に誰にも会う事は無かった。
そして、彼の車に乗ると、あたし達は真っ直ぐにマンションに帰ったのだった。
すると――
「おい、コラ、ゆっくりと起きろ」
入り口には――朝日さんが、立っていた。
「……ぶ、部長」
自分のバッグを持ち、帰り支度をしていた彼は、ベッドまで来ると、あたしの背を支えながら起こした。
「吐き気は」
「……収まりました。……たぶん、薬が効いてるんだと」
朝日さんは、ほう、と、息を吐き、あたしの額に手を当てた。
「――熱も、少し落ち着いたようだな。帰れそうか」
「……ハイ」
これ以上、ここにいても、迷惑になるだけだ。
あたしは、ゆっくりとベッドから下りると、そばの棚に置いてあった貴重品バッグを持った。
「あれ、これ……」
「ああ、曽根さんが、お前のものだから持って行った方が良いと。引き出しは開けたが、バッグの中は見ていないからな」
「平気です。一応、貴重品ですけど、財布とスマホと鍵くらいですから」
そう言って、部屋をゆっくりと出ると、目の前のロッカールームに入って、自分の荷物を抱えてくる。
その間も、朝日さんは急かす事無く待っていてくれた。
「あ、机の上にファイルと書類置いたまま……」
「それなら、脇に片付けておいた。今は、仕事のことは置いておけ」
「……ありがとうございます」
淡々と返す彼の後をついて行く。
終業時間は、とうに過ぎていて、もう、残っている社員も少なそうだ。
二人で、社員用の出入り口から駐車場へ向かう。
「歩けるか。少し遠いところに停めたんだが」
「大丈夫です」
あたしが、そう返すと、朝日さんはじっとあたしを見て、うなづいた。
「……寝たからか、顔色がさっきよりも良くなっている」
「……すみません……」
「――そう言えば、白山、自分がどういう状況だったか、覚えているか」
「……え、あ……うっすらとしか……」
不意に問いかけられ、あたしは、記憶をたどる。
ほとんど、モヤがかかったようなもので、大した映像記録は思い浮かばない。
考え込むあたしを見やると、朝日さんは、大きく息を吐いた。
「……イスから崩れ落ちたんだぞ、お前。どこか打ってないか?」
あたしは、ポカンとして、彼を見上げる。
だが、眉を寄せられ、肩をすくめた。
「……すみません……。……でも、痛めた自覚は無いんで、大丈夫かと……」
「……なら、良い」
そのまま車まで、彼の後をついて行く。
幸い、既に半分以上の人間が帰っているようで、向かう間に誰にも会う事は無かった。
そして、彼の車に乗ると、あたし達は真っ直ぐにマンションに帰ったのだった。