あやかし猫社長は契約花嫁を逃さない
【4】

二人は幼なじみ

「まだたくさんありますからね。おかわりもどうぞ、お好きなだけ」

 昆布出汁で炊いたつやつやのご飯、青菜と根菜の味噌汁。副菜は蒸したごぼうと水菜のサラダ、車麩の揚げ物。秋刀魚の丸焼きには大根おろし付。
 どれもこれも、目にも鮮やかな趣ある器に盛り付けられている。
 猫宮家の食堂に、ずらりと並んだ旅館並に豪勢な朝食。

「いただきます」

 龍子は手を合わせて拝んでから、花モチーフの箸置きにセットされた箸を持ち、まずは味噌汁をひとくち。出汁が美味しい。
 スーツにエプロン姿の犬島へと顔を向け、目を輝かせて尋ねる。

「これって、ものすごいきちんと出汁を……」
「いえいえ、顆粒出汁を使っています。時短です。それで十分、美味しいですから。他の料理も手間はかかっていません。今朝この屋敷に来てから用意しました。秋刀魚なんか焼いただけです」

 犬島はにこにこと上機嫌な様子で答える。
 その笑顔に圧を感じたのか、龍子の隣に座った猫宮がふっと息を吐き出した。シャツにジーンズで、いかにもプライベートな装いのせいかいつもより二、三歳若く見える。
 猫宮は、犬島に対して微笑みかけると、鷹揚な態度で話しかけた。

「いつもありがとう、柚希(ゆずき)。柚希がいてくれるから俺の生活は安泰だな」
「お褒め頂いて恐縮ですが、お互い良い大人で、いつまでも公私べったりというわけにはいかないです。颯司(そうじ)さんもそのへんはおわかりでしょう。俺が家庭を持ったらどうするつもりですか。当然いまと勤務スタイルは変わりますよ。だめとは言えないでしょう?」

 デレ瞬殺。

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