婚約者様、ごきげんよう。浮気相手との結婚を心より祝福します
「意外だね」

 令嬢たちが去った後、アレックスはおもしろそうに笑った。
 マイラインが自分の言いたいことを先に言ってくれたため、アレックスは出る幕がまったくなかった。
 だが、同時に意外だなと、アレックスは思う。
 マイラインはてっきりエレトーンを敵視しているか、嫌っているか、その両方かと認識していたのだ。なのに、エレトーンを擁護している。アレックスにはそれが不思議でならない。

「君、エレトーンのことを嫌っているのかと思っていたよ」
「いったい、いつの話をしていますの?」

 確かにマイラインはエレトーンを毛嫌いしていた時期があった。
 しかし、それは大分前のこと。アレックスは学園にあまり来ない上に学年が違うため、知らなかったのだろう。

「まぁ、確かに以前は嫌いでしたので誤解されても仕方ありませんが……今はたまに意見の食い違いで言い合うくらいで、仲は良好ですわよ?」
「ふ~ん。なら、君の雰囲気が柔らかくなったのも、そのおかげか」

 以前のマイラインはツンとしていて、身分を笠に着た嫌みな雰囲気(オーラ)(まと)っていた。
 だが今はエレトーンに似て凛としている。エレトーンに対する認識が変わり、私生活も変化したのかもしれない。

「柔らかく?」

 自分ではまったく気付いていなかったのか、マイラインは頬に手を当て少し驚いていた。

「綺麗になったってことだよ」
「まぁ」

 予想だにしなかった言葉に、マイラインは顔を綻ばせた。機嫌取りばかりの上面の言葉が多い中、アレックスの言葉は本心からだとわかったからだ。

「どんな心境の変化があったか聞いても?」
「ふふっ、教えてあげましょうか?」

 アレックスが、純粋にマイラインの心境の変化を聞けば、気をよくしたマイラインはキッカケを話し始めたのであった。

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