婚約者様、ごきげんよう。浮気相手との結婚を心より祝福します
「もし、政略結婚だったなら私が相談に乗ろう」
この話の流れでなにもしなかったら、アレックスだけが印象に残らず、ただエレトーンについてきただけの存在になってしまう。
それだけは避けたかったアレックスは、わざとらしく咳払いし、マイラインも手を貸すなら……と声をあげた。
アレックスも、マイライン同様に令嬢たちがどうなろうと構わなかった。だが、この令嬢たちが、あるいはその伴侶がいずれは使えるかもしれないと算段し、協力したのであった。もちろん、エレトーンにいいところを見せる好機だと踏んだのが一番だけど。
「あ、ありがとうございます。エレトーン様!!」
「こんな私たちのために、マイライン様やアレックス殿下にまで、手を貸していただけるなんて……」
令嬢たちは、寛大な温情に……そして思わぬ提案に感極まり声が震えてしまった。
未遂とはいえ、しかるべき処置があってもおかしくはなかったのだ。なのに、エレトーンを筆頭に公爵令嬢や第二王子まで相談に乗ってくれる。こんな強い援護があるのなら、カリンのことなどもはやどうでもよくなっていた。
「ちょっと用を済ませてから、生徒会室に行くわ」
「私も」
エレトーンが自分の教室に書類を取りに行こうとすると、マイラインとアレックスがにこやかにそう言ってきた。
勘のいいエレトーンはその笑顔に違和感を覚えたが、あえてスルーすることにした。
「ほどほどに……ね」
だが、一応忠告はしておく。
マイラインとアレックスの性格は、それなりに知っているつもりだ。用とはこの令嬢たちにだろう。
◇*◇
――エレトーンが去った後。
マイラインから令嬢たちに、軽いお咎めがあった。
「エレトーンの代わりにだなんて言い方、やめてくださる? エレトーンの名は免罪符じゃないのよ? 本人がいないところで勝手なことをして、それをまるでエレトーンも望んでいるみたいに……。あなたたちがそうすることによって、エレトーンが関与していないことまで、彼女のせいになるじゃない。エレトーンを貶めたいの?」
「「「そ、そんなつもりでは……」」」
「なら、どんなつもりなの? たまたま目撃したのが私たちだったからよかったものの、他の者だったら? その時に、エレトーンの名を少しでも出したら、あなたたちになんの意図がなくても、聞いた方はいいように解釈するのよ?」
「そ、それは」
「しかも、そのせいでエレトーンがやらせただの、やっただのと、やってもいないことまで彼女のやったこととして広まるだなんて……仮にあなたたちがよかれと思ってやっていることでも、エレトーンがそれを望んでいない以上、それはただの自己満足でしかないのよ。エレトーンの顔に泥を塗るような真似、しないでくださるわよね?」
そう公爵令嬢に有無を言わせない勢いで脅さ……注意を受けた令嬢たちは、先ほどとは打って変わり壊れた人形のようにコクコクと頭を振った。
この話の流れでなにもしなかったら、アレックスだけが印象に残らず、ただエレトーンについてきただけの存在になってしまう。
それだけは避けたかったアレックスは、わざとらしく咳払いし、マイラインも手を貸すなら……と声をあげた。
アレックスも、マイライン同様に令嬢たちがどうなろうと構わなかった。だが、この令嬢たちが、あるいはその伴侶がいずれは使えるかもしれないと算段し、協力したのであった。もちろん、エレトーンにいいところを見せる好機だと踏んだのが一番だけど。
「あ、ありがとうございます。エレトーン様!!」
「こんな私たちのために、マイライン様やアレックス殿下にまで、手を貸していただけるなんて……」
令嬢たちは、寛大な温情に……そして思わぬ提案に感極まり声が震えてしまった。
未遂とはいえ、しかるべき処置があってもおかしくはなかったのだ。なのに、エレトーンを筆頭に公爵令嬢や第二王子まで相談に乗ってくれる。こんな強い援護があるのなら、カリンのことなどもはやどうでもよくなっていた。
「ちょっと用を済ませてから、生徒会室に行くわ」
「私も」
エレトーンが自分の教室に書類を取りに行こうとすると、マイラインとアレックスがにこやかにそう言ってきた。
勘のいいエレトーンはその笑顔に違和感を覚えたが、あえてスルーすることにした。
「ほどほどに……ね」
だが、一応忠告はしておく。
マイラインとアレックスの性格は、それなりに知っているつもりだ。用とはこの令嬢たちにだろう。
◇*◇
――エレトーンが去った後。
マイラインから令嬢たちに、軽いお咎めがあった。
「エレトーンの代わりにだなんて言い方、やめてくださる? エレトーンの名は免罪符じゃないのよ? 本人がいないところで勝手なことをして、それをまるでエレトーンも望んでいるみたいに……。あなたたちがそうすることによって、エレトーンが関与していないことまで、彼女のせいになるじゃない。エレトーンを貶めたいの?」
「「「そ、そんなつもりでは……」」」
「なら、どんなつもりなの? たまたま目撃したのが私たちだったからよかったものの、他の者だったら? その時に、エレトーンの名を少しでも出したら、あなたたちになんの意図がなくても、聞いた方はいいように解釈するのよ?」
「そ、それは」
「しかも、そのせいでエレトーンがやらせただの、やっただのと、やってもいないことまで彼女のやったこととして広まるだなんて……仮にあなたたちがよかれと思ってやっていることでも、エレトーンがそれを望んでいない以上、それはただの自己満足でしかないのよ。エレトーンの顔に泥を塗るような真似、しないでくださるわよね?」
そう公爵令嬢に有無を言わせない勢いで脅さ……注意を受けた令嬢たちは、先ほどとは打って変わり壊れた人形のようにコクコクと頭を振った。