運命に従ってみた

＊新生活

　「ずっと好きでした…っ」

私、神田真矢は一世一代の今日この日

３年間ずっとずっと好きだった、三坂亮に

震える声でついに告白の日を迎えた。

「彼女いるから…ごめんね」

あっけなく振られてしまったけど…

卒業式というおめでたい日に
泣きながら一人で帰路につく私は

帰ってからも泣いて泣いて…

卒業だなんてどうでもいいくらい泣きあかした。

お母さん、夜勤でいなくて良かった…

なんて思いながら、ひどい顔のまま朝を迎える頃にちょうど母親の帰宅する音が聞こえた。

それから数時間後…


私は、買ったばかりの車に最後の荷物を押し込むと運転席へと乗り込み窓を開けた。

「じゃ、行ってくるね」

「何かあったら連絡するのよ」


そう言いながら送り出す母親はどこか嬉しそうな表情を浮かべている。


「うん…、たまには連絡するね
弘志さんとケンカしないようにね」


母親が嬉しそうなのは、私が出ていくと同時に
再婚相手の弘志さんという人とここで一緒に暮らすことになっているからだ。

私がいるからと、一緒に暮らさないまま１年ほど別居婚のような事をしていたのだ。

私は一度も会った事がないからどんな人なのかも何歳なのかも分からない。
ただ、弘志さんという名前しか分からない。

何だろう、この気持ちは…
帰る場所がなくなるような感覚に襲われてしまうのは、まだ親離れができてない証拠なのかもしれない。

振られて、悲しみにくれる暇もないまま


翌日からは一人暮らしという過酷な現実である。