運命に従ってみた
「ここに決めます」

「え?あ、内覧とかしなくて大丈夫ですか?」


勢いよくここに決めますなんて言ったけれど
たしかに、写真でしか見ていないわけで

案内してくれているお姉さんもビックリしている。


「そうですよね…お願いします」


少し笑いながらそう言うと


「今から見に行かれますか?ご案内しますよ」


「お願いします」


不動産屋さんの車に乗り、案内されたアパートへと向かいながら


私の頭の中は、こんなに親切に案内してくれてるけど

そもそも無職だし、保証人とかいないけど

アパートの契約ってできるんだろうか。


せめてもの救いは、亮と暮らす前まで
何の趣味もなく貯金ができてた事だ。


まぁ、亮と暮らし始めてからは
全然貯金なんてできなかったけど…


契約金は何とかなるけど

契約ができるかどうかだ…


「こちらの物件になります。
裏手が駐輪場になっておりまして…」


車を降り、アパート周辺の説明をしてもらいながら歩いていると

「こんにちわ」


アパートの前の落ち葉を拾い集めている中年の女性が、ニッコリと頭を下げてきた。
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