運命に従ってみた
翌日、ビニール袋に4つずつお弁当を入れ
両手に1つずつ下げ12時に間に合うように
スーパーの駐車場へと向かうと

ワゴン車の横に数人座っていて
私の姿を見ると一斉に立ち上がった。

思わず


「すいません、ちょっと過ぎちゃいました?」


急いで袋から1つずつ出し、渡すと


「みんな朝から楽しみにしてたんスよ」


若い金髪の男の子がそう言いながら
ニコニコしている。


そんな姿を見ると
あぁ、頑張って作った甲斐があったなぁ
なんてしみじみしてしまうわけで…


「真矢ちゃん、大変だったんじゃない?
大丈夫だった?」


横から、ぬぅっと顔が近づき
とっさに横へカニ歩きしてしまった。


「ちょっ!そんな嫌がらなくても…
俺、地味にショックなんだけど」


「ちがっ…ビックリして…あはは…」


というか、至近距離は
なかなか…

心臓に悪いというか…

何だ、この中学生の初恋みたいな感じは…

「あ、真矢ちゃん
ほい。これ」


そう言われ手渡されたのは
茶封筒だ。


「なにこれ?」

「週2回のお弁当やさんじゃん?
だから、一ヶ月分のお給料。」

「え、いいよ。一ヶ月だし
ほら、天気悪かったりしたらお弁当いらなくなったりするわけでしょ?」

「んー、まぁ…それはそれで。
食材とかお金かかるじゃん?
みんな楽しみにしてるからお願いね」

そう言いながら、頭の上に手を置かれているけど

「すぐ頭の上に手置くよね…?」

何だか、子供扱いされてるような気分だ。


「うん?だってチビで可愛いじゃん」

「チビ!?」

「お兄さんが大きいだけだと思いますが…」

「あれ?俺の名前知らないの?」

「わたるさん…?でしたっけ…」

「渉でいいよ。んじゃ、また来週よろしくね?
仕事終わったら電話するね」

「あ、はい…?じゃあ…」

と帰宅するものの

電話…?

何か、うれしいというか…落ち着かないというか

ダメだ。私はきっとあの顔に騙されてるんだ。
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