運命に従ってみた
結局、何度かお金を返そうとしたけれど
渉は受け取らず

お弁当を届けた日には必ず


「真矢ちゃん、今日もおいしかったよー」


という、お昼の数分の電話があり


お弁当を届けない日には


「今、仕事終わったから帰って酒飲んで寝るわ」


なんて、どうでもいい報告の電話を
毎日してくるようになり


ほんの数分の渉からの電話を心待ちにしているような毎日になってしまっている。


けれど、そんな日々も

スーパーの外装がきれいになるにつれ

終わりが近づいているわけで…


お弁当最後の日


大人のお子さまランチのようなお弁当を作り

みんな喜んでくれた事で

何だか、感無量という言葉がピッタリのような

達成感のような感情が押し寄せている。


キッチンの片付けをしながら
お弁当を作らないのが寂しいのか
渉との接点がなくなる事が寂しいのか
自分の中で自問自答している。


そんな私を知るよしもない渉は


「真矢ちゃん、最後にこんな豪華なお弁当で
みんなこれが最後なんだって悲しんでたよ」


私も悲しいんだけどね…言えないけどさ。


「すごくお弁当作り楽しかったよ。」

「今日で現場終わりだったから、2日くらい休みなんだけどさー
この一ヶ月のお礼にごはん行こっか?
真矢ちゃん、いつなら大丈夫そう?」

「え?お礼とかほんといいよ。
お金多くもらっちゃったし…」

「お礼は口実で、ごはん行こ?」

なんというか、この人

ほんと言い方うまいよなぁ…

「日曜日か月曜日なら…」

「んじゃ、明日ね。あのスーパーんとこに
7時で大丈夫そう?」

「あ、うん?大丈夫…」

「また明日ねー」

相変わらずの数分だけの電話だけど

明日、2人でごはん…


どあぁぁぁぁヤバイ、私大丈夫なのか?
今でこんなテンション上がりすぎて緊張しまくりなのに
明日…明日…叫びながら布団に顔を埋めている私






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