愛されることを知らない私は、御曹司様と出会い溺愛される
数日が経っても、私の現実は変わらないままのはずだった。

「深井さん、今日もこの仕事変わってくれる?」

顔を上げると、いつも私に仕事を押し付ける同僚の日野下《ひのした》さんが立っていた。

私が返事をする前に日野下さんは、私の机に仕事の資料を置いて自分の机に戻っていく。

その時、部長が部署の全員を集めた。


「今日の午後から本社の方が視察もかねて訪れて下さる。それで、誰か案内を頼みたいのだが……」


部長の言葉で、皆んな次々にコソコソと話し出す。


「本社の人って誰だろ?」

「え、でも案内係は面倒くさくない……?」


その時、日野下さんが手を上げた。

「深井さんが適任だと思います。しっかりしてるし」

「っ!?」

部長が私の方を向いて確認する。

「深井さんはどうかな?やりたい?」

「私は……」

その時、日野下さんが私に近づき、ボソッと呟いた。


「これくらいしろよ。地味で愛想もないくせに」


そして、日野下さんはすぐに笑顔で部長に向き直る。
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