バツイチの彼女
 適当に誤魔化そうかと一瞬迷ったが、元々仲良くしていた沙和ちゃんは遅かれ早かれ私が離婚したことを耳にするだろう。だったら私から直接聞きたかったと思うかもしれない。

「あー‥‥実は最近離婚して戻ってきたんだ」

 気まずくて苦笑いになってしまうのはしょうがないだろう。

「え?離婚?そっか‥‥大変だったね‥‥連絡くれれば愚痴くらい聞いたのに‥‥」

「うん、そうだね‥‥本当にそう。連絡すれば良かったよ‥‥」

「翠ちゃん‥‥今更かもしれないけど翠ちゃんが愚痴って少しでも楽になるならいつでも話聞くし、気晴らしがしたいなら付き合うからね?最近は会えてなかったけど私達友達じゃん!大変な時は力になりたいって本心で思うから、絶対に遠慮はなしで頼ってね?約束だよ?」

「沙和ちゃん‥‥」

「そうだ!せっかく翠ちゃんがこっちに戻ってきたんだから、久し振りにみんな誘って飲みにでも行こうよ!高校の友達、全然会ってないでしょ?翠ちゃんが来るって言ったらみんな喜ぶと思うよ!」

 結婚しても子供ができても沙和ちゃんは昔と全然変わってない。ちょっと強引だけどそれは自分本意ではなく相手を思ってのことで、自己主張が苦手で流されがちな私はいつもそんな彼女に助けられていた。

 今ここで沙和ちゃんに会えて良かった。そうじゃなければきっと私はいつまでも過去を引きずって浮上できないままだったかもしれない。

「うん。私もみんなに会いたい。‥‥でも、はなちゃんいるのに大丈夫なの?」

「私だってたまには息抜きが必要だもん。実家に預けるから全然大丈夫!」

 こんなに小さい子がいて自分の時間を持つのは簡単なわけがない。私を気遣ってそう言ってくれる沙和ちゃんが、今の私には本当にありがたかった。

「沙和ちゃん、ありがとう。話せて良かった。なんか少し元気が出たよ」

「こちらこそだよ!飲み会も楽しみだね!詳細決まったらすぐ連絡するね!」

 そう言って別れた数日後、沙和ちゃんから飲み会の日時を知らせる連絡がきた。

「翠ちゃんはレアキャラだからみんなノリノリでオッケーしてくれたよ!夜が駄目な子もいたから昼の部と夜の部に別れちゃっても大丈夫?いきなり飛ばし過ぎ?」

 当日気まずくなるのは嫌だったので、離婚のことは沙和ちゃんから事前に伝えてもらうことにした。それでも会いたいと思ってくれるみんなには感謝しかない。

 母に予定を伝えると少しホッとしたような顔をされてしまった。家に戻ってからたくさん心配させてしまったし、私も塞ぎ込みがちだったので安心したのだろう。

 私には心配してくれる家族や友人がいる。だからきっと大丈夫。気持ちを切り替えて人生をやり直すんだ。
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