バツイチの彼女

再会

 約束の日。ランチに集まったのはみんな結婚してる子達で、こうして友達に会うのはそう珍しくもないそうだ。結婚や子供を理由に仕事を辞める必要はないし、仕事をしてなくて収入がなくてもたまに友人に会う程度の金額なら気兼ねなく使える。

 一般的には普通とされてることを私は制限されていたのだと改めて気づかされた。それを強いてた姑もそれに抵抗しなかった私も普通ではなかったのかもしれない。

 久し振りに友達に会うので美容室に行って服も新調したのだが、たったそれだけのことで気持ちが上向きになるのを感じた。こんな風に少しずつ元の感覚を取り戻していけばいいんだと思う。

 夜になって店を移動し、メンバーは男性も含めて独身者がメインとなった。高校を卒業して以来会ってなかった人もいて、ちょっとした同窓会のような雰囲気だ。

「春日さん、久し振り。俺のこと覚えてる?」

 飲み会が始まって少しした頃、隣に移動してきた男性に声をかけられた。

渋谷龍一(しぶたにりゅういち)君!」

 彼とは3年の時に同じクラスだった。俳優のように整った顔にモデルのようなスタイルの良さ、優秀で生徒会長もしていた彼を忘れる人なんていないだろう。

「あはは!フルネームで覚えててくれるなんて光栄だな!」

 みんなの憧れだった渋谷君とは恐れ多くてあまり話したことがなかった。こうして会うのも卒業以来初めてだ。

「離婚‥‥したって聞いた。大変だったね。でも思ってたより元気そうで安心した」

「うん。さすがに少し落ち込んでたけど、今日は沙和ちゃんに誘ってもらって本当いい気分転換になった。渋谷君も凄く久し振りだもんね?会えて嬉しいよ!」

「俺も‥‥春日さんに会えて本当凄く嬉しい‥‥」

 貴之さん以外の男性と話すのが久し振りだからだろうか‥‥この会話に特別な意味なんてないとわかっていてもドキドキしてしまう。いや、このドキドキは渋谷君が格好良過ぎるせいかもしれない。

「春日さんて今仕事は何してるの?」

「あー‥‥実は結婚して仕事を辞めちゃってたから、今は無職なんだ。もういい年だから親のすねをかじるわけにはいかないし、早く仕事を見つけなきゃと思いつつもなかなかねえ‥‥」

「‥‥仕事、探してるならうちに来ない?総務なんだけど、去年人が辞めて手が足りてないとこにひとり産休に入ることになって丁度募集をかけようと思ってたとこなんだ」

 渋谷君の家が会社経営をしているというのは聞いたことがあった。

「いや‥‥ありがたいけど、私にはもったいないような‥‥」

「そんなことないよ!欠員で人が必要な時に久し振りにあった友達が職を探してるなんて、むしろ運命を感じない?」

 運命って‥‥そんな大袈裟な‥‥
< 6 / 30 >

この作品をシェア

pagetop