Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?
思いきり頭を下げた。それで私がやらかした数々の非常識がなかったことになる訳がないけれど。

「なんか、進藤くんの優しさにつけ込んで、図々しくお世話になっちゃって。
あの、おわびに髪、乾かさせて!」
「はい?」
「あっ、おわびじゃなくて、ご褒美になっちゃう? いや、髪触りたいとかじゃなくて、その、遠慮なく髪乾かして欲しいというか!」

もう、何言ってんだ、私。
言葉を重ねれば重ねるほどアホ丸出しで、馬鹿みたいだ。

しどろもどろの私を見下ろした進藤くんが、ひとつ、息をつく。

「……分かりました。お願いします」
「へ? いいの?」

無造作にドライヤーを私に渡すと、コタツのある部屋に座りこむ進藤くん。
好きにしてくれという、どこか投げやりにも、あきれたようにも見える、その後ろ姿。

なんか……なんか、もう、こんな女が好きになってゴメンね! と、心のなかで謝った。

けれども。言い出しておいてなんだけど。
……緊張、するっ……!

濡れた黒髪に、こわごわと指を伸ばす。
ドライヤーの熱を極力あてないよう、温風を下から吹かせる。

想像より硬い髪質と、指先からスルリと逃げるように落ちていく毛先。時折触れてしまう進藤くんの耳に、ビクッとして身体が震えてしまう。

スイッチをOFFに戻したとたん、どっと疲れが出て、思わずその場にへたりこんでしまうくらいだった。
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