Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?
「終わったよ、進藤くん」

極度の緊張からのリラックス状態に陥った私を、進藤くんが振り返る。いつも通りの無表情なはずなのに、わずかにその瞳に、いらだちが見えた。

「本郷さん」

透明なはずの声音が、それを表すかのように、にごって聞こえる。

「オレはあなたの弟でもペットでもないですよ」

力の抜けた私の右手を、進藤くんがつかみあげた。手のひらに唇が寄せられて、強く吸われる。
背筋がしびれるような甘い感覚が、走った。

気づけば、そこにあるのは感情のない瞳じゃなかった。くすぶる炎が見えるような、強い眼差しが、進藤くんから向けられていた。

「優しさじゃなくて、ただ、あなたと一緒にいたかった。それだけの、下心ですよ」
「し、下心って……」

進藤くんの口から発せられた思いもよらない単語(ワード)に、頭の先からつま先まで、一気に熱くなる。

ヤバい。私、起きてると思ってたけど、実は進藤くんを待ってるうちに、寝てたっぽい。
ナニコレ、いい夢すぎる……!

ぽわんとした気分で、吸い込まれそうな綺麗な瞳を見つめていると。その瞳が半ば伏せられて、唇に熱を感じていた。
やわく触れて()まれる感触が、心地いい。吐息がこそばゆいのに、もっとと願う思いで、自分からも近づく。

「ん……好き、進藤く……」
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