Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?
まくられた上着のすそから素肌をなぞられ、恥ずかしい声が私の口から漏れた、瞬間。

「───すみません」

すっ……と。身体をつつんだ自分以外の温もりが遠のき、我に返る。

夢なんかじゃない。その、謝罪の意味に、急激に罪の意識がこみ上げた。

コレは……あれだ。
若いコの欲望を、年上女が無理に引き出して、襲わせてしまうアレだ。

ああもうっ、私、本当に何して───。

「がっつき過ぎでした。……コンビニ行ってきて、いいですか」
「へ? コンビニ?」
「準備、してないので」

初めて見る、赤くなった進藤くんの顔。

……ああ、ええと。そうですよね、私のほうが年上で大人なのにね。
むしろ、こちらこそ、スミマセン……。

なんだかいろいろ、気恥ずかしい。
でも。

「えっと。私も一緒に行っていいかな? アイス、食べたいし」

離れがたい気持ちと、熱くなりすぎた身体を冷やしたい。あと、なんか甘い物を食べたい気分。

私の申し出に、進藤くんがやわらかく微笑む。

「はい」

私が恋に落ちた瞬間の、あの微笑み。見てるこっちがとろけそうな、優しい笑顔。

進藤くんのコートを借りて、コンビニまでの、たかだか5分程度の道のりを歩く。

寒さを忘れるほどの暖かい思いでいられたのは、私が彼に寄せる想いと、彼が私に寄せてくれる想いが、同じだったから。
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