Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?
☆プロローグ☆

馬鹿みたいに、恋に落ちた。

❖❖❖❖❖

「近頃の若いコって、どうしてこう覇気がないっていうかヤル気がないのかねぇ?」
「はぁ。どうしてでしょうねぇ」
「いらっしゃいませ、ってさ。言えばいいってもんじゃないでしょう?」

いや、言ってるならいいじゃん。愛想ないだけだよね?
挨拶(あいさつ)も礼儀もキチンとしてるけどな、彼。

進藤くんの悪口を延々と話すパートの赤木(あかぎ)さんに、表面上は相づちをうちながらも心の中で反論をする。

……解ってる。接客で無愛想なのは致命的だって。そのせいでクレームも時々入るって。

「学生さんだからってフォローするの当たり前って、ないと思うんだよね」
「……えっと。明日のシフト、替わりましょうか?」
「あ、そうしてくれる?」

不満たらたら述べてた赤木さんの顔がパアッと輝く。ええ、替わりますとも、喜んで。

「それじゃ、お疲れ様ねー」
「お疲れ様でーす」

お客様が来ないのをいいことに、愚痴話に花を咲かせていた彼女を見送りホッと一息。
さて。そろそろソフトクリーム側のレジ締めよ。

私の勤める洋菓子店は、コの字型の造りをしている。
ショッピングセンター内の通路に面して、生菓子、焼菓子、ソフトクリームと三方向に展開していた。

物販店の営業は、夜8時まで。
衛生管理上の清掃のため、その約一時間前にはレジを締めてしまうのだ。
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