Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?
「なので、気にしないでください。オレ達のことどうこう言える立場にないんで」

雅貴くんが口にした「オレ達」っていう単語が図らずも恋人関係にある実感をもたせるパワーワードで。
一瞬、胸がギュッて、つかまれたけど。

年の差問題はともかく。
……ま、多少はご両親のこと聞いて安心感? は、得られたけれども。

───やっぱり、好きな人の実家。それも、ご両親がそろってるお宅にお邪魔するとか……難易度高すぎる!
緊張するなってほうが無理だし、正直、昨日の夜寝られなかったから、睡眠不足で肌のコンディション最悪だし。

「どうしよう……お腹痛くなってきた……」
「大丈夫ですか? 三階だから、エレベーターすぐ着くと思いますけど」
「ありがとう、気分的なものだから、たぶんすぐに治まると───」

言いかけた時、上階から降りてきたエレベーターが開く。中から、眼鏡をかけた初老の男性が出てきて、私達を見て驚く。

「なんだ、雅貴。今日来る予定だったのか」
「うん。母さんから何も聞いてなかった?」
「聞いてないよ……舞美(まいみ)のヤツ、私だけ仲間外れか。
───失礼、こちらのお嬢さんが?」

にっこりと、眼鏡の奥の目を細めて笑う。ひょっとしなくても……雅貴くんのお祖父様?

「ほっ……本郷(ほんごう)叶絵と申します」
「こんにちは。雅貴の祖父です。雅貴がいつもお世話になっているようで」
「いえっ、私のほうがすごく雅貴くんに助けられてて……」
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