Keyless☆Night 一晩だけでいいから、泊めて?
やわらかい物腰のお祖父様と二人してペコペコし合っていると。雅貴くんがポツリと言った。

「じいちゃん、どこか出掛けるんじゃなかったの?」
「ああ、高橋さんに竹の子もらったから、お前の実家(トコ)に持って来て、これからシゲさんとゴルフに行く予定……だったんだけど」

残念そうな雰囲気をただよわせて、ちら、と、雅貴くんのお祖父様が私を見た。

「また今度、改めてお会いできますかね?」
「それは、もちろんっ……」
「はは、良かった。じゃあな、雅貴」
「うん。またね」

片手を上げて小さく笑う雅貴くんを見て、それからお祖父様が私に向かって会釈をし、立ち去って行く。

「なんていうか……お祖父様、すごく優しそうな方だね」
「はい。オレ、じいちゃん子だったんで」
「え、そうなんだ」
「だから、叶絵さんに会ってもらえて良かったです」

エレベーターを操作しながら、雅貴くんがやわらかく微笑む。
ああ、本当に、お祖父様のこと好きなんだなぁって、解る。

……不思議。
緊張が、少し解けたかも。
そうだよね……考えたら、この雅貴くんのご両親なんだから。

私がちょっとくらい何かやらかしたって、きっと、大丈夫、だよね……?

そう思ったら、肩の力が抜けて、気取らず普通に行けるかも! って。
私は、雅貴くんのあとを追い、三階に着いたエレベーターを降りたのだった。



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